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会社で働く人の人口構成比を、街の人口構成比と同じにしたい 福岡県北九州市・MOJiOJi(後編)

福岡県北九州市、門司港のレトロな商店街「栄町銀店街」にオープンしたMOJiOJi(もじおじ)。おじさんの顔型で焼いたお菓子を販売するという新しい取り組みです。仕掛け人である合同会社ポルトCEOの井上夏樹さん、菊池勇太さんのお二人にローカルツーリズム代表の糀屋総一朗が取材しました。3本掲載の最終回は、今後のMOJiOJiの展開、そして地域で事業をすることへの考え方についてです。

「おじ焼き」をフランチャイズにしたい

糀屋総一朗(以下、糀屋):今後の展開で考えていることはあったりしますか?

井上夏樹(以下、井上):このお店でおじ焼きだけではなく、日持ちするお菓子も売っていきたいなと思っています。現実的に進めているのは、ようかんやモナカなどの開発ですね。生っぽいようかんをモナカの皮で挟むとか、モナカの皮をおじさんの型で焼くとか……まだ何になるかは決まっていませんが、種類は増やしていきたいですね。

菊池勇太(以下、菊池)「門司港の新しい和菓子屋さん」というカテゴリで始めたので、取り扱うお菓子の種類は増やしていきたいですね。おじ焼きはこのお店だけで売って、持ち帰りができるものは門司港側(レトロ地区)のお土産屋さんにも置いてもらう、などの展開を考えています。あとは、フランチャイズ展開もできるんじゃないかなと思っています。

全国のいろんなおじさんを焼いていけないかな? と考え中です

糀屋:ローカルツーリズムでガッツリと関わらせてもらっている福岡県宗像市の大島にも、「塩じい」という名物おじさんがいるんですよ。大島で塩じいの型を作って、週末だけ働きたい主婦の方などが塩じいを焼いて売ったら面白いと思います。これは現実的に考えていきたいですね。

菊池各地の名物おじさんを焼く、という形で展開できそうですよね。「〇〇おじ」のフランチャイズはぜひやりたいです。

地域の人が関わることで、付加価値の上がる仕事を

糀屋:地域に根ざした会社として、ポルトの今後の展開も教えてください。

菊池:ポルトのスタンスとしては、「高齢者の人でもできる仕事」「地域の人ができる仕事」しか作らない、と決めているんです。地域にいる人が携わることのほうが付加価値が上がるものを仕事として作り出していきたい。

おばちゃんがおじさんを焼いて、若い子が買う、いわばアートプロジェクトみたいな感じですよね。自分の中ではポルトの仕事はアート性が高いものだと思っています。「みんながなんの違和感もなくおじさんを食べてたら面白いな」とか。でも今回、「おじさんを焼く」とか相当変なこと始めたなって考えてたんですけど、思った以上に普通に受け入れられてて「あれっ?」って思いますけど(笑)。

糀屋:たしかにお客さんも「何これ!」みたいな感じではなく、普通にスルッと買っていかれますよね。

菊池:そうなんです(笑)。

オープンの週末は次々とお客さんが来て、完売に(写真提供・合同会社ポルト)

すでに高齢化した街で、どう事業を続けていくか

菊池:「高齢化はよくない」と悪者にされがちなんですが、それを言ったとしてもすでに門司港は街の半分が高齢者なんですよ。高齢者とどう融和していくか、ということをもっと考えていかないといけないと思ってます。

栄町銀天街では、MOJiOJiの他に「てるちゃんのバナナジュース」というお店をやっていますが、これはうちの母がメインでお店に立ってやっています。いま72歳ですけど、Twitterもやってますよ。みんな教えてあげたらできるんですよ。ゲストハウスPORTOのスタッフにも、76歳のトヨさんという方が働いていて、iPadを使ってお金の管理もしてましたし。トヨさんは76歳になって体力が続かないからと引退されましたが、みんなやる気があればできるんだよというのを言いたいですね。

ポルトのアルバイトでは、どんな人でも一律時給1,000円をお支払いしています。若者だから、高齢者だからと分けないようにしたいなと。不平不満があれば変えようとは思ってますが、今のところそれもないですね。高齢者の方は体調不良や急な通院などでシフトの融通がきかないと働けないという人が多いんですが、そこを若い社員が融通をきかせてあげたりして。それも将来の地域の姿なんだと思います。

ここからメニューを増やしていきたいです

目標として、ポルトで働く人の年齢構成比を、門司港の街の人口構成比と同じにしたいんですよ。井上さんには、変な会社を経営させちゃってるから大変だろうなとは思います(笑)。でもこういう会社やお店がもっと増えてくれたら面白いですよね。社会貢献の一環かもしれないけど、「社会にいいことしてます」とはわざわざ言わないっていう。

糀屋:すごくいいですよね。本来ビジネスって「ちゃんと稼げる」ことをまず考えて、それが結果的に社会をよくしていく、みたいなことなのかなとも思います。

街の人に恩返ししていきたい

糀屋:ちなみに、門司港レトロ側にはお店を出したりはしないんですか。

菊池:僕はこっち側(もともとの市街地)でしか出さないと決めてます。地域活性化、活性化といいますけど「活性」と言っても無理があるところもある。でも若い人が路地裏とかでお店をある程度成功させている事例もありますし、こちら側に出店すると地域の人は喜んでくれるんですよね。

井上:ここも「なんのお店になるの?」とたびたび聞かれました。オープンの時まで「おじ焼き」とは明かしたくなかったので、「たい焼きみたいな……? お店です」とは言ってました(笑)。街の人の大きな関心ごとだし、一大行事のようになっていて、そういうのも大事だなと感じました。

可能性を感じるお店でした。井上さん、菊池さん、ありがとうございました!

菊池:商売だけで考えたらレトロ側がいいんでしょうけどね。商店街にはそれこそしがらみなどもいろいろありますが、ここでやる意義、というのをしっかり持ってやっていきたいなと思います。ここでしっかり商売をすることによって、例えばアーケードの補修工事など大掛かりなことをやることになった時に「こうしませんか?」と言えるようになると思うんです。

井上:「商店街に観光客向けのお店を開けても難しいよ」と地元の人にも言われました。でもそうじゃないよ、ということを頑張って証明していきたいなと思います。

(構成・執筆・撮影 藤井みさ)

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