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私のティアキンは絶望の旅だった。【『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』プレイ記】

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』が1周年を迎えましたね! 円井零です。

 待望のサントラ、そして書籍『マスターワークス』の発売も決まりまして、いやはやめでたい。サントラはきっちり初回限定盤を予約しましたよ。
 まさかのマスターソードも発売ということで……さすがに買えなかったけど一度持ってみたいな……。

 さて、『ティアキン』を私、もちろんプレイしていまして。ただその旅は”絶望の旅”と言えるものでした。
 そんな旅を一年経った今、振り返ってみようと思います。

 なお、この記事は『ティアキン』の重要なネタバレ、『ブレス オブ ザ ワイルド』および『ゼルダの伝説』過去シリーズの一部ネタバレを含みますので、未プレイの方は注意してください。

自由度が高すぎるゆえに起きた悲劇

『ティアキン』は『ブレワイ』に引き続き、オープンワールド系のゲームで非常に自由度が高いのが特徴です。(任天堂的な名称は『オープンエアー』。)
 その自由度の高さはストーリー進行も同様で、クリアに決まった順番はありません。
 とはいえ、ざっくりとした想定ルートはあると思われます。おそらく、「四地方の異変調査」→「五人目の賢者」→「マスターソードの手掛かり」→「ガノンドロフ討伐」といったところでしょうか。
「龍の泪」も並行するので、正規ルート、と呼べるものは結局ないと思いますが、多くの方が上のような順番でクリアしたのではないでしょうか。

 さて、では私はどの順番でクリアしたのか、というと、最初に行ったのはリトの村でした。
 ここを最初に選んだのは、『ブレワイ』でクリアした順番を逆に巡ってみようかと思ったから。『ブレワイ』では最後に訪れたのがリトの村だったため、今回は最初に行こうと。
 ゲーム内でもなんとなくリトの村に誘導がある気がするので、最初がリトの村だった方は多いのでは。
 そう、ここまでは順調だったのです。しかし次に盟約を結んだ賢者、それはミネルでした。

勇者、早々にラストダンジョンに突っこむ

 チューリの次にミネルと盟約を結ぶことになる私ですが、実はその前にハイラル城の地下に行っていました。
 プレイした方はおわかりだと思いますが、ハイラル城地下はラストダンジョンです。が、私はそうとは知らずに進んでいました。
『ブレワイ』時はラスボスの厄災ガノンがわかりやすくハイラル城を占拠していたので、ラストダンジョンであることが明確でした。ですが『ティアキン』では、ラスボスのガノンドロフがどこにいるのかわからないことになっているので、どこがラストダンジョンなのかハッキリしていませんでした。

 ……まぁやってりゃ勘付くだろと言われればそれまでなんですが……。
 専用のBGMが流れるし、ライネルやファントムガノンが中ボスのように待機してるし。そもそもオープニングでガノンドロフが地底深くに落ちてってるし。
 それでも私はガンガン進んでました。その理由は、オープニングでゼルダと見た壁画の続きが見たかったから。
 単純に「今ならバクダンあるから見れるんじゃね?」というだけ。それだけで序盤にラストダンジョンを進む勇者リンク。

 そして壁画の間に到着。案の定、後半の壁画を覆っていた岩はバクダンで破壊できました。
 そこにあった壁画……これだけでも相当なネタバレというか、ストーリーの核心に触れているものなんですが、私が読み取れたのは「誰かが最後、龍になった」ということだけでした。
 この時点で「龍の泪」のムービーで龍化の法は知っていたので、人が龍に変化した、とは読み取ったものの、誰か、は特定できませんでした。
 そもそも、この時点では白竜の存在を知らないため、てっきりネルドラ、オルドラ、フロドラのどれかになった瞬間だと思ってました。
 またなぜ龍になる必要があったのかもわからず、この時は歴史の本を眺めてるようなもので、「ふーん」というくらいの感想でした。(額のマスターソードに気づいていなかった。)
 わりと壁画を”見る”ことが目的だったので、この時はあまり深く考えていませんでした。もしこの時、気づいていたら……絶望の旅はここから始まっていたかもしれません。
 この時はそれよりも、その先でラスボス前哨戦のムービーが流れちゃった方が慌てました。
 チューリに「ひとりで乗り込むなんて水くさいよ!」と言われてさすがにここが今来ちゃダメだった場所と確信。そこで電源落としちゃったんですが、今思うとそのあとのムービーがどんなだったか気になる。

 さて、ラストダンジョンから帰ってきて次に向かった場所は、そう、竜頭島でした。

勇者、今度は雷雲に囲まれた空島に突っこむ

 いやホント、なんでそこに行くの、ってところをピンポイントで行ってますが。
『ティアキン』での私のプレイスタイルは結構シンプルで、ひたすらに「気になったところに行こう」でした。
 そのため、今度はフィローネの樹海の上に渦巻く雷雲が気になってしまい……。竜頭島に突っこんでいました。
 これ、『ティアキン』プレイしていた友人に言われたんですが、「その段階でそこ行けるの?」……行けました。自由度が高すぎるよ『ティアキン』。
 もし私が雷鳴の島の方に着陸していたら、その視界の悪さと雷鳴で進むのを諦めていたかもしれません。しかし私が降り立ったのは偶然にも竜頭島。祠センサーを頼りに進めてしまいました。
 そして始まるミネルの導き。これが絶望の旅の序章でした。

「ゼルダは元に戻れない」

 ミネルの導きの元、ゴーレムを完成させ、魂の神殿へ。そこでボスを撃破。
 その後……『ティアキン』ストーリー上、最大の真実がミネルの口から語られました。
 ゼルダはマスターソードを復活させるため、龍となった。
 衝撃でした。そりゃそうです。「龍の泪」をどこまで見ていたか忘れましたが、まだそんなに見ていなかったはず。本来まだ”序盤”なのです。
 ここでようやく、あの壁画を理解しました。龍になったのはゼルダ……。

 この瞬間から、私の中の"希望"は吹けば飛ぶレベルにまでなっていました。
 この旅は、消えたゼルダを探すために始めたものでした。
 ですがそのゼルダの居場所、現在が唐突にわかってしまった。ゼルダは龍になってしまった。
「ゼルダは元に戻れないのでは?」
 ゼルダの居場所がわからない時は、探し続ければ見つけられるという希望がありました。
 また、『ブレワイ』の時は、ゼルダがガノンを抑えていました。そのため、ガノンを倒せばゼルダは解放される。ゲームのクリアとゼルダの救出がセットになっていました。
 でも、今回は違う。ゲームのクリアはガノンドロフの討伐。ゼルダはガノンドロフと関係ないところで龍となったため、ガノンドロフを倒しても人に戻れるわけではありません。
 また、私の中で、『ゼルダの伝説』シリーズの”続編”は切ないとか、むなしい終わり方をするイメージがありました。
「ゼルダは元に戻れないのでは?」
 この思いがさらに強くなったのは、マスターソード入手時のムービーを見てからでした。
 ゼルダの思い……ゼルダがマスターソードとリンクに託した願い。そこに自分が元に戻りたい、という思いは微塵もありませんでした。
「私を探して」と言ったのは、リンクにマスターソードを渡すため。それだけでした。
「ゼルダは元に戻れないかもしれない」
 私はこの絶望を抱えながら、この先の旅を続けなければならなくなったのです。

今度こそ……デクの樹サマを救え

 そんな絶望に襲われる中、少しだけ救われたのは、マスターソード入手前に訪れたコログの森でのイベントでした。
 地上から侵入できなくなってしまったコログの森。地下から回ってようやくたどり着いたと思えば、コログたちは皆なにもしゃべらず、フリーズ状態というちょっとホラーな展開。
 そこで唯一しゃべったデクの樹サマも調子がおかしい様子。ここで思い出されたのは『時のオカリナ』でした。

『時オカ』にもデクの樹サマが登場します(違う人物?ですが)。デクの樹サマは主人公たちの親代わりのような大事な存在。ですが、ガノンドロフ(こちらもおそらく別の人物)に呪いをかけられてしまい、主人公にそれを解くよう頼みます。
 そうして主人公はデクの樹サマの中へ……『時オカ』ではなんとデクの樹サマはダンジョンになっているのです。
 ダンジョンを攻略し、ボスを倒して呪いも解けますが、すでに時遅く。デクの樹サマは死んでしまいます。

 今回の『ティアキン』もこれにすごく似た状況。「デクの樹サマが死んじゃう」という思いがよぎります。
 しかし、デクの樹サマに巣食ったファントムガノンを倒すと、コログの森は元通り。デクの樹サマも元気を取り戻しました。
『時オカ』をプレイしていた私としては、「今度は救えた……」という思いでいっぱいでした。

 ですがその思いもつかの間。マスターソードを手にし、「ゼルダは元に戻れないかもしれない」という思いを強くしてしまうのですが。

「ハイラルの勇者」

 マスターソードを手にしてから、少しだけ『ティアキン』が手につかなかった記憶があります。
 プレイしていても気が重く。何を目指して旅を続ければいいのか、わからなくなっていたと思います。
 ゼルダを助けられないなら、何のために。その思いが足取りを重くしました。
 ですが実際のところ、私はただ怖かっただけかもしれません。ゼルダが元に戻れるか、戻れないか、結局それは最後までやらないとわからないわけです。私はただ、戻れないという結末を見るのを恐れていたのです。

 それでも私が旅を続けたのは、絶望にあらがって進んだのは、”勇気”でした。
 絶望しても、恐怖しても、前に進むには勇気を持つしかない。
 リンクは勇者です。勇者と定められたから勇者なのではありません。リンクは『ブレワイ』で勇気をもってハイラルを救ったから、ゼルダに「勇者」と呼び与えられたのです。
 リンクはすなわちプレイヤー。だから私も勇気を持って進まなければならないのです。
 こうして私の絶望の旅は、同時に勇気を試される旅になりました。
 何度も足が止まったけれど、その度奮い立たせて前へ進みました。たとえゼルダが元に戻れないとしても。それでも前へ。ゼルダの願いは何か、しっかりと握りしめて。

 そうして残る3地方を巡り、すべての賢者と盟約を結びました。
最後の「龍の泪」を見た時は、震えそうになったけれど、ゼルダの思いを受け止めました。
 そして再び、今度こそ終わらせるためにハイラル城地下へ行き……そのあとはプレイした皆さんなら知るところです。

終わりに。

『ブレワイ』『ティアキン』で直接そのワードが出てくることはありませんが、『ゼルダの伝説』といえばトライフォース。
 トライフォースとは、力、知恵、そして勇気の3つから成っています。
 それぞれふさわしき人に宿るトライフォース。勇気のトライフォースはいつも主人公、プレイヤーに宿ります。
『ゼルダの伝説』は謎解きや戦闘が印象的ですが、やはり何より勇気を試されているのだと、今回は特に感じる旅でした。

 誰かを救うには、前に進むには、勇気が必要なのです。

 私の旅は一度終わりましたが、そろそろまた旅してみたくなりました。すべてをわかった上で、もう少し気ままにハイラルを見て回りたい。そんな風に思っています。
 サントラも存分に楽しみたいし! ……9枚組のな!
『ブレワイ』は5枚組だったのになんでそんなに増えたの……。


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