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Vol.10 UNKから本気で自由とは何かを考える@フランス

フランス滞在記。
今となっては笑い話ですが、今日は私のフランス生活の中で一番苦労したこと…というより日本に引き続き、闘い続けたあることを書きたいと思います。

それは…
UNK。

某テレビ局の名前ではありません。UNKです。
お食事中の方、ごめんなさい(汗)。


フランス滞在中、SNSに日々アップされる写真を見て「綺麗!」「フランスいいなぁ〜」という感想をいただくことが多かったのですが、しかし。
私のSNS投稿を見てくださった方はお気づきでしょうか。そのほとんどが、空やら建物など上にあるものばかりで、足元に目を向けた写真がないという事実に(笑)。

でも、きちんと私はいつもいつも、足元へは細心の注意を払っておりました。
さもなくば、道路のそこここへ無尽蔵に落とされているUNKをぶちゃっと踏み、しっかりと靴の裏の模様を刻んでしまうからです…!

UNKとは、そう、ワンちゃんのもの(と思いたい)と思しき排泄物のこと。


日本みたく、景観の形を大きく変える地震や台風などのイベントが少なく、歴史ある建物がそのまま残っているフランスの街並み。
どこもかしこも美しく、さらに湿気がなくはっきりとしたグラデーションを見せてくれる空がその美しさをより一層引き立てます。

「あぁ、なんて綺麗なのでしょう」


しかしだ。

思わずうっとり見とれていると・・グシャ。
うっかりUNKを踏んでしまうのです。
さらに、娘と二人街を歩いていると彼女が本当に元気よく踏んでくれるので、私はひとりピリピリと神経を尖らせていた。

その頃の私といえば、もう間も無くおむつを卒業するか、という段階で渡仏した娘のトイレのことで頭がいっぱい。明け方になると「まま、おしっこいく‥」という幻聴まで聞こえる始末(今思うと相当きてる笑)。

だからどこへ行くにも、私はトイレを探していた。

しかしながら、フランスの街中には中々トイレがなくて(日本だったら大体どこにでもあるので、コンビニやスーパーに駆け込んでました)街中で「ママーおしっこ〜出る〜」と言われてカフェに入って、用を足すために特に身体が欲しないコーヒーを飲んだりしていた。かくして、トイレがあるカフェを中心に、私と娘の散歩動線は組まれて行ったのでした。

カフェの時間は不慣れな土地で子育てに奮闘する私にとって束の間のリラックスタイム、オアシスであった。

カフェの中には当然UNKは落ちていないので(笑)、娘の動きをいちいち気にしなくても良い。豪快にUNKを踏んだ靴にうんざりすることもないし、UNKが付着して半泣きで持って来られるボールを拭き拭きすることからも逃れられる(嬉)。

だけど、私はある時ハッとしたのです。

カフェから出て公園に行くと、「そんなことを気にしているのは私だけじゃない」とふと思ったのだった。
「よぼれちゃった〜」と泣きついてくる娘の手やら、ボールを拭き拭きして悩んでいるのは私だけで、他のお母さんたちはみんなおおらかだった。
異国の地バイアスもかかっていたのもあって、私の目にフランスの母たちはとっても自由な姿に映ったのかもしれない。


子供が砂場で遊んでいるのを横目で見ながら新聞を広げていたり、テイクアウトのコーヒーカップ片手に井戸端会議していたり、面倒くさそうにスマホをボーッと見ていたり、本を読んでいたり。

子供とガチでサッカーしていたり、ふてくされて膝の上で寝ている子供を適当によしよししながらワイン片手にカヌレをムシャムシャと食べていたり、とびっきりの笑顔で子供と一緒に滑り台すべっていたり、子供そっちのけでアスレチックに夢中になっていたり。

子供の一挙手一投足を逃すまいと言わんばかりにスマホ撮影に必死になっていたり、ベンチに座って子供とボーッと遠くを眺めながらまるで恵方巻のように二人でバゲッドをひたすら食べていたり。


いろんなお母さんがいて、それぞれ干渉せずに、思い思いに過ごしていた。
自分が拘っていたあらゆることは、本当はどっちだっていいんだなと思ったら肩の力がふっと抜けて行った。


あくる日、今度は私もコーヒー片手に公園を訪れて、ノートを開いて落書きをしてみた。

すると、子供と鳩がワラワラと集まってきて、やんややんや色々と質問をしてきた。
娘は「ダメー!!これはわたしのママなのー!!」と思いっきり日本語で訴えるも、マシンガンのように迫ってくるちびっ子たちのフランス語にさすがの彼女もタジタジで(笑)。
最終的には砂場に誘われてギャーギャーピーピー言いながらも一緒に遊んでいた。子供はたくましい。

フランス人は、寛ぐのが上手だなと思った。

良くも悪くも無理をしない。やりたくないことはやらない。
そんなところが当時のわたしには眩しく、フランスでの暮らしがとても好きだった。


だけど。

やっぱり道路に落ちているUNKに関しては、「飼い主は責任を持ってお持ち帰りください」でいいと思うんだけどなぁ・・と思ってしまうのはわたしが日本人だからなのだろうか。

確かに、朝になると一気に道路を掃除する車がきて、シャボシャボの泡と共に一気にガーッと勢いよく洗浄されるので最終的には綺麗になるのだけれど。
フランスのこういう合理的なところはすごく好きなのだけれど。

道路に堂々と鎮座するUNKに関してはどうしても受け入れられない。

自由とは何か。


不自由や束縛から逃れて開放的になること、各々好きなことを選べるのも自由。
だけど、一見不自由とも思われる制限を受け入れること、その制限を、枠を自分で選択できることもまた自由ではないだろうか。

娘の靴を拭き拭きしながら、そう思ったのでした。

自由の考察はまだまだ続く。



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