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Vol.5 フランスの洗礼?着いた瞬間水浸し

フランスに着いた瞬間に大雪により交通が麻痺。
それでも、助け合いと温かいサポートにより何とか、目的地グルノーブルまでの電車に乗ることができた私たち。
私は夫と再会したことによって、安堵ともに旅の疲れが押し寄せ、
車窓から眺める美しい景色が走馬灯のようで心地よく、深い眠りについた。
目が覚めたときにはもうすっかり日が暮れ、グルノーブルへ到着していた。

「グルノーブルについたよ。ご飯、どうしようか」
夫が言う。

そうか、これからここは日常生活の場なのか。

急に会話が普段使いのニュアンスとなって、まだまだトリップハイが抜けない私の頭はついていかない。
身体を飛行機に置いてきてしまったのか、お腹が減っているのかどうかもよくわからない。

レストランをリサーチしてくれる夫の言葉に、相槌を打ちながらも、心は上の空。


この時の私の希望はただ一つ。


とにかく、寝かせて欲しい…。
頼むから、寝かせて欲しい…。


しかし、ここで寝たら時差に苦しむからと、あの手この手で何とか私たちを起こそうと夫は頑張ってくれた。
トラムに乗って、家に向かったことは覚えている。そして、トラムの中にトートバッグを置いてきてしまって夫が慌てていたことも何となく覚えている。
でも、それから、どこでご飯を食べたのでしょう、最寄りの駅からはどうやってうちにたどり着いたのでしょう。その後のことは全く覚えていない。


とりあえず、怖い思いもせず娘をここへ連れて来れたことにホッとした感覚だけが今でも残っている。


私は気づいたらリビングのソファーで眠っていた。
夜遅くに目が覚め、重たい体を引きずって、ベットまで到着するとその日は泥のように眠った。



翌日、夫の提案で近くのマルシェに行ってみた。
憧れのフランス生活初日の朝!なのに、心ここにあらず。
不思議と嗅覚だけが冴えていて「洗剤なのか香水なのか、わからないけれど、フランスの街って匂いがキツイな」と思いながら歩いていたのを思い出す。

もう朝から眠くて眠くて仕方がなかったけれど、何とか昼寝時まで堪え、
近所のブラッセリーでランチを済ませるとベッドへ直行してまた泥のように眠った。


しかし。
その心地よい眠りの時間は、思いがけないアラームにより終わりを迎えることとなる。




「セントラルヒーティングが爆発した!!!」


キッチンから夫の叫び声が聞こえたのだ。


「え!?何よ爆発って…!!」


驚いてベッドから飛び起きてキッチンへ向かうと…

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こ、これは…
一体、どういうことなんだ!?
私はまだ夢の中にいるのか!!?

フランスやヨーロッパの家庭の暖房は、セントラルヒーティングシステムと言って、大きな給湯器で作られた温水がパイプによって各部屋に張り巡らされ、室内を温める。

どうやら、このセントラルヒーティングに何かしらの不具合が起こって、漏水し、家中が海のようになってしまったようである。

もう、ポカーン、である。
しかし、呆気にとられていても仕方がない。
水は後から後から溢れてくるので、家中のタオルをかき集めて水の動線を塞ぎとりあえず応急処置をしながら、ちりとりでひたすら水をすくっては捨てる。
(今思うと何と原始的な…)

そうこうしている間にも、水は止め処なくどんどん溢れてくる。

セントラルヒーティングシステムを覗き込みながら、必死に対処していると、
玄関のドアのベルが鳴った。


一瞬ドキッとして手が止まるも、水をひたすらすくう作業に没頭しながら心に湧いてくる焦りを何とか誤魔化していた。


…つづく




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