見出し画像

相手の機嫌を損ねないコミュニケーションルール3つ―『論語』

「忖度」「空気を読む」社会で失敗しないために

「忖度(そんたく)」という言葉が、一時流行りました。
「空気を読む」を裏返した「空気が読めない」KYも、コミュニケーションスキル、意思決定の問題として、しばらくフィーチャーされたことがありました。
 日本のビジネス社会で、うまくやっていくには、いまでもアタマにいれておいたほうがいいテーマです。

  目上の人や権力者の胸の内を推し量るのは、なかなかに難しいものです。まして初対面となると、推し量るときに、自分のフィルターや思惑が入ってしまい、判断を間違えかねません。

 先回りしてうまく立ち回る高等技術を備えていれば別ですが、目上の人や権力者とのコミュニケーションにおいては、むしろ、その人に関する情報が少ない、つきあいが短い、といったケースのほうが多いでしょう。
 相手の機嫌を損ねることなく、適切な受け答えを心がける。それができれば、合格点といえるのではないでしょうか。

 では、大切な相手や目上の人に接するときに、なにを心がければいいのか?
 
ある意味で、人間関係の達人であった孔子。君主や貴族たちとのやりとりを数多く経験した孔子らしく、実践的なアドバイスをしています。2500年以上も前、戦乱時代にあった古代中国での話ですが、いまの時代に読んでも参考になります。

 孔子が挙げた3つのポイントをみてみましょう。

 目上の人や責任者に接するときには、次の3つことに気をつけなさい。

 まだ言うべきでないタイミングなのに、言ってしまう。
 これを「躁(そう)」…「がさつ」(あるいは「さしでがましい」)といいます。

 問われていることに対して、肝心なことを答えない(要領をえていない)。
 これを「隠(いん)」…「隠し立てをする」(あるいは「へだてがましい」)といいます。

 相手の顔色を見ないで、(自分のアタマにあることを)報告する。
 これを「瞽(こ)」…「相手が見えていない」(あるいは「みさかいがない」)といいます。

                     *神田が意訳しています

 3つのポイント、どれも思い当たることがあります。
 昔から、権力者の機嫌を損ねずに、モノゴトを推し進めていくのに、あれこれと知恵を絞っていたことがわかります。日本のような空気を読む社会でなく、権力闘争の激しい中国の政治、権力社会を生き抜いていくには、不可欠なスキルだったことでしょう。

「がさつ」「隠し立て」「みさかいがない」

 それにしても、相手の心情や思惑を推し量るのが、いかに難しいことか。同じことを伝えるにも、いい方ひとつで、話をするタイミングで、相手の受け止め方が違ってくることを、肝に銘じたい。

  • 躁 「がさつ」(あるいは「さしでがましい」)

  • 隠 「隠し立てをする」(あるいは「へだてがましい」)

  • 瞽 「相手が見えていない」(あるいは「みさかいがない」)

 漢字のままだと覚えにくいようなら、自分なりの言葉で置き換えて、「コミュニケーション心得帖」にするのもいいかもしれません。

最後に読み下し文を。

君子(くんし)に侍(じ)するに、三愆(さんけん)あり。
言(げん)未(いま)だこれに及(およ)ばずして言う、これを躁(そう)と謂(い)う。
言(げん)これに及(およ)びて言(い)わざる、これを隠(いん)と謂(い)う。
未(いま)だ顔色(がんしょく)を見(み)ずして言(い)う、これを瞽(こ)と謂(い)う。

『論語』季氏篇


この記事が参加している募集

#仕事について話そう

110,008件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?