神田久幸/講師

講師。人間力育成、中国古典と組織の盛衰などをテーマに、企業・飲食店などを対象に研修を行…

神田久幸/講師

講師。人間力育成、中国古典と組織の盛衰などをテーマに、企業・飲食店などを対象に研修を行う。古典を題材にした著述活動も本格的に開始。 雑誌PRESIDENTおよびdancyuの元編集長。現在はメディアと関係なく、食事を楽しむ生活。

記事一覧

秀才型の新人リーダーに孔子が授けたマネジメントの極意とは―『論語』

新人マネジャーの心得とは  誰でも初めて責任ある職位に就いたときには、どう人をマネジメントするか、どう組織やチームを率いるか、経験がないだけに、戸惑うものです。…

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孔子の時代の女性差別が、「虎に翼」の時代にまで及んだ黒歴史をたどる。 

『大戴礼記』にみる女性に課された礼の定め   孔子の「女子と小人とは養い難し」の話の続きです。 「女性蔑視は世界的なものですよね。なぜ男性は女性蔑視をしたのでし…

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知らないことは、知りませんといえる。そういう人こそ信頼される―『論語』

受け売りではなく、自分の言葉で話そう  知ったかぶりはしないほうがいい。  けれど、 立場上、あるいはビジネスを進めるときに、「そのことは知りません」といえない…

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過ぎてしまったことは、とがめても仕方がない。最善の解決策を探る―『論語』

成事(せいじ)は説かず、遂事(すいじ)は諫めず  スタッフが、アドバイスしたことに耳を傾けずに、自分の考えでやってしまい、結果うまくいかなかった。  あるいは、…

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「自分が正しい」と考えて突き進む。それの何がいけないのか―『呻吟語』

人の一生の大なる罪過は、「自是自私」の四字に在り  これまでの人生、いろいろと失敗や間違いをし、それなりに反省をしてきた。そのつもりでいました。  しかし、まだ…

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答えをすべて教えない。自ら考えることで人は育つ。孔子の人材育成法―『論語』

「挙一反三」の教えとは 「啓発」という言葉の由来になった、孔子の人材育成に関する話の続きです。 と述べた孔子の学ぶ姿勢への激烈な思いは、さらに続きます。 その意…

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「啓発」。その人が行き詰ってから障害を取り除いてやる。手助けする―『論語』

「性相近し、習い相遠し」  社会人として、人をどう育てていくのか。 自分で気づく。 自分で考える。 それが行動を変える、考え方を変えることにつながっていく。  中…

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一生懸命の落とし穴。「自己中」と言われないための教え「絶四」―『論語』

「自分ファースト」にならないために 「自分らしく生きたい」。  それがともすれば、「自分ファースト」に置き換わっていることがありませんか。  自分の思うように物事…

24

「虎に翼」の時代も、孔子の時代も女性蔑視だった⁉―『論語』女子は養い難し。 

良妻賢母か職業婦人か 連続テレビ小説「虎に翼」。興味深く、毎回観ています。日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだの女性の実話に基づくオリジナルストーリー。 モデ…

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人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その5―有効なのは「徳」か「法」か

古代中国の主な思想家の人間観 まとめ なぜ人は不正をしてしまうのか。 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。 企業において、弱い立場にある社員が、…

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人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その4―「韓非子」の人間不信

なぜ人は不正をしてしまうのか。 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。 企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反し…

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人の見分け方で失敗しないために。天才軍師・諸葛孔明の人物鑑定法―『諸葛亮集』

人を見分けるよりもむずかしいことはない  三国志の時代に活躍し、天才軍師と謳われた諸葛孔明も、人の見分け方ほどむずしいことはない、と嘆いていたそうです。その教…

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「切磋琢磨」。スキルや知識だけなく、「心を磨く」ことに真意あり―『論語』

「継続は力なり」につながる言葉  新人が職場に配属されるこの時期に、「継続は力なり」ということをスタッフに訴えたい。それにふさわしい『論語』の言葉を、研修でとり…

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お金やモノがなくても、人に喜びを与えることができる―禅「無財の七施」

「無財の七施(むざいのななせ)」 法要のときにお寺さんに包む志、「お布施(ふせ)」と書かれた封筒に入れて、お渡しします。 「布施」。 ふだんはあまり使うことのない…

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人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その3―荀子の「性悪説」

人の本性は「悪」である  なぜ人は不正をしてしまうのか。  それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。  企業において、弱い立場にある社員が、組織的な…

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人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その2ー孟子の「性善説」

なぜ人は不正をしてしまうのか。 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。 企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反し…

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秀才型の新人リーダーに孔子が授けたマネジメントの極意とは―『論語』

秀才型の新人リーダーに孔子が授けたマネジメントの極意とは―『論語』

新人マネジャーの心得とは

 誰でも初めて責任ある職位に就いたときには、どう人をマネジメントするか、どう組織やチームを率いるか、経験がないだけに、戸惑うものです。
 もちろん、マネジャー向けのテキストなどが刊行されていますし、企業においては新人管理職研修なども行われているので、予備知識を仕入れて、それなりに心構えもできるかもしれません。

 ただ、いざ実践となると、座学で得た知識のようにはいきませ

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孔子の時代の女性差別が、「虎に翼」の時代にまで及んだ黒歴史をたどる。 

孔子の時代の女性差別が、「虎に翼」の時代にまで及んだ黒歴史をたどる。 

『大戴礼記』にみる女性に課された礼の定め 

 孔子の「女子と小人とは養い難し」の話の続きです。

「女性蔑視は世界的なものですよね。なぜ男性は女性蔑視をしたのでしょうね」。
というコメントをいただき、多少やりとりをしましたが、それに対する適切な答えは、いまだにみつかっていません。

 ここでは、孔子が生きた2500年以上前の古代中国、春秋時代において、女性の社会的地位はどうだったのか。
当時のこ

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知らないことは、知りませんといえる。そういう人こそ信頼される―『論語』

知らないことは、知りませんといえる。そういう人こそ信頼される―『論語』

受け売りではなく、自分の言葉で話そう

 知ったかぶりはしないほうがいい。
 けれど、 立場上、あるいはビジネスを進めるときに、「そのことは知りません」といえないときもあります。
 年下や部下からそんなことも知らないんだ、と見下されたくない、という心理が働くときもそうかもしれません。

 ネットで検索すれば、おおよその情報や知識は瞬時に手に入る時代。一方で、日々流れていく情報をおいかけてもおいかけ

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過ぎてしまったことは、とがめても仕方がない。最善の解決策を探る―『論語』

過ぎてしまったことは、とがめても仕方がない。最善の解決策を探る―『論語』

成事(せいじ)は説かず、遂事(すいじ)は諫めず

 スタッフが、アドバイスしたことに耳を傾けずに、自分の考えでやってしまい、結果うまくいかなかった。
 あるいは、事前に相談もなく、独断でやってしまい、相手先とトラブルを起こしてしまった。
 あなたにとっても無傷ではありません、損害や信用にかかわる状況となったときに、当事者にどう対応しますか?

 そうした「困ったちゃん」に、孔子がアタマを悩ませてい

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「自分が正しい」と考えて突き進む。それの何がいけないのか―『呻吟語』

「自分が正しい」と考えて突き進む。それの何がいけないのか―『呻吟語』

人の一生の大なる罪過は、「自是自私」の四字に在り

 これまでの人生、いろいろと失敗や間違いをし、それなりに反省をしてきた。そのつもりでいました。
 しかし、まだまだ思慮も経験も浅い。そう思わされたのが、中国・明代の呂 坤(呂 新吾)『呻吟語(しんぎんご)』の言葉に触れたときです。
「自是自私」(じぜじし)。
 耳慣れない言葉ということと、常にこの過ちを犯す可能性があるということで、とても身につま

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答えをすべて教えない。自ら考えることで人は育つ。孔子の人材育成法―『論語』

答えをすべて教えない。自ら考えることで人は育つ。孔子の人材育成法―『論語』

「挙一反三」の教えとは

「啓発」という言葉の由来になった、孔子の人材育成に関する話の続きです。

と述べた孔子の学ぶ姿勢への激烈な思いは、さらに続きます。

その意味は、
一つの隅を示しただけで、他の三つの隅にも鋭く類推を働かせるようでなかったら、それ以上の指導は差し控える(教えない)。
ということです。

 一隅を挙げて三隅を以って反すは、次の四字熟語で知られています。 
「挙一反三(きょいち

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「啓発」。その人が行き詰ってから障害を取り除いてやる。手助けする―『論語』

「啓発」。その人が行き詰ってから障害を取り除いてやる。手助けする―『論語』

「性相近し、習い相遠し」

 社会人として、人をどう育てていくのか。

自分で気づく。
自分で考える。
それが行動を変える、考え方を変えることにつながっていく。

 中国古典の言葉をもとに、人としてのあり方、仕事の進め方などを考えてもらう。それが、私が行っている人間力育成の基本方針です。
 何かの気づきを得てもらえばいいし、これまでの人生や考え方を見直すきっかけとなればいい。そこから、なにかしらの

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一生懸命の落とし穴。「自己中」と言われないための教え「絶四」―『論語』

一生懸命の落とし穴。「自己中」と言われないための教え「絶四」―『論語』

「自分ファースト」にならないために

「自分らしく生きたい」。
 それがともすれば、「自分ファースト」に置き換わっていることがありませんか。
 自分の思うように物事が運んでほしい、という気持ちが膨らんできて、我を張った生き方をしていることがありませんか。

たとえば、次の4つのことはどうでしょう?

「主観(思惑)で憶測する」 
「道理を無視して押し通す」
「一つの考えに固執する」
「自分の都合を

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「虎に翼」の時代も、孔子の時代も女性蔑視だった⁉―『論語』女子は養い難し。 

「虎に翼」の時代も、孔子の時代も女性蔑視だった⁉―『論語』女子は養い難し。 

良妻賢母か職業婦人か

連続テレビ小説「虎に翼」。興味深く、毎回観ています。日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだの女性の実話に基づくオリジナルストーリー。
モデルとなっているのは、日本で女性として初めて弁護士・判事・裁判所所長になった三淵(旧姓武藤)嘉子(みぶち・よしこ)さん。

戦前、日本社会が女性にも門戸を開放する動きが広がりるなかで、三淵さんは女学校卒業後、1932(昭和7)年、第4期

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人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その5―有効なのは「徳」か「法」か

人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その5―有効なのは「徳」か「法」か

古代中国の主な思想家の人間観 まとめ

なぜ人は不正をしてしまうのか。
それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。

企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。

古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。最終回。

孔子の「仁

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人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その4―「韓非子」の人間不信

人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その4―「韓非子」の人間不信

なぜ人は不正をしてしまうのか。
それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。

企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。
 
古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。第4回。

「性悪説」を発展させた『韓非子』「法家」の思想

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人の見分け方で失敗しないために。天才軍師・諸葛孔明の人物鑑定法―『諸葛亮集』

人の見分け方で失敗しないために。天才軍師・諸葛孔明の人物鑑定法―『諸葛亮集』

人を見分けるよりもむずかしいことはない

 三国志の時代に活躍し、天才軍師と謳われた諸葛孔明も、人の見分け方ほどむずしいことはない、と嘆いていたそうです。その教訓として、7つのポンントを『諸葛亮(しょかつりょう集』で挙げています。諸葛亮とは諸葛孔明のことです。 

 彼が遺した、人の見分け方をみていきましょう。

 なにがむずかしいといって、人を見分けるよりもむずかしいことはない。

 善人が

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「切磋琢磨」。スキルや知識だけなく、「心を磨く」ことに真意あり―『論語』

「切磋琢磨」。スキルや知識だけなく、「心を磨く」ことに真意あり―『論語』

「継続は力なり」につながる言葉

 新人が職場に配属されるこの時期に、「継続は力なり」ということをスタッフに訴えたい。それにふさわしい『論語』の言葉を、研修でとりあげてもらえませんか。
 企業のオーナーからのそんなリクエストに応じて、候補の言葉をいくつか挙げたところ、オーナーが選んできたのは、「切磋琢磨(せっさたくま)」でした。

 現在では、互いに競い合って、技能やスキルなど高める意味で使われて

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お金やモノがなくても、人に喜びを与えることができる―禅「無財の七施」

お金やモノがなくても、人に喜びを与えることができる―禅「無財の七施」

「無財の七施(むざいのななせ)」

法要のときにお寺さんに包む志、「お布施(ふせ)」と書かれた封筒に入れて、お渡しします。
「布施」。
ふだんはあまり使うことのない言葉ですが、「分け隔てなく施す」という意味で使われる仏教用語で、大きく分けて次の3つがある、とされています。

財施(ざいせ)……お金や衣食などの物資を必要とする人に与えること
法施(ほうせ)……相手の心に安らぎを与えること、精神面で尽

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人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その3―荀子の「性悪説」

人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その3―荀子の「性悪説」

人の本性は「悪」である

 なぜ人は不正をしてしまうのか。
 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。

 企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。
 
 古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。第3回。

孟子の「性善説

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人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その2ー孟子の「性善説」

人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その2ー孟子の「性善説」

なぜ人は不正をしてしまうのか。
それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。

企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。
 
古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。

第2回

孔子の教えと孟子の「性善説」との関係について

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