神田久幸/講師

講師。人間力育成、中国古典と組織の盛衰などをテーマに、企業・飲食店などを対象に研修を行…

神田久幸/講師

講師。人間力育成、中国古典と組織の盛衰などをテーマに、企業・飲食店などを対象に研修を行う。古典を題材にした著述活動も本格的に開始。 雑誌PRESIDENTおよびdancyuの元編集長。現在はメディアと関係なく、食事を楽しむ生活。

最近の記事

答えをすべて教えない。自ら考えることで人は育つ。孔子の人材育成法―『論語』

「挙一反三」の教えとは 「啓発」という言葉の由来になった、孔子の人材育成に関する話の続きです。 と述べた孔子の学ぶ姿勢への激烈な思いは、さらに続きます。 その意味は、 一つの隅を示しただけで、他の三つの隅にも鋭く類推を働かせるようでなかったら、それ以上の指導は差し控える(教えない)。 ということです。  一隅を挙げて三隅を以って反すは、次の四字熟語で知られています。  「挙一反三(きょいちはんさん)」 または 「一挙三反(いっきょさんはん)」  また、「挙隅(きょぐ

    • 奥に秘めたやる気を引き出す、人材育成の名人の言葉―『論語』

      「性相近し、習い相遠し」  社会人として、人をどう育てていくのか。 自分で気づく。 自分で考える。 それが行動を変える、考え方を変えることにつながっていく。  中国古典の言葉をもとに、人としてのあり方、仕事の進め方などを考えてもらう。それが、私が行っている人間力育成の基本方針です。  何かの気づきを得てもらえばいいし、これまでの人生や考え方を見直すきっかけとなればいい。そこから、なにかしらの指針や考える軸を見い出してもらえたら、研修の成果としては最高です。  さて。

      • 一生懸命の落とし穴。「自己中」と言われないための教え「絶四」―『論語』

        「自分ファースト」にならないために 「自分らしく生きたい」。  それがともすれば、「自分ファースト」に置き換わっていることがありませんか。  自分の思うように物事が運んでほしい、という気持ちが膨らんできて、我を張った生き方をしていることがありませんか。 たとえば、次の4つのことはどうでしょう? 「主観(思惑)で憶測する」  「道理を無視して押し通す」 「一つの考えに固執する」 「自分の都合を最優先する」   私はどれにも当てはまらない。  自己中心的な人間じゃない、と

        • 「虎に翼」の時代も、孔子の時代も女性蔑視だった⁉―『論語』女子は養い難し。 

          良妻賢母か職業婦人か 連続テレビ小説「虎に翼」。興味深く、毎回観ています。日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだの女性の実話に基づくオリジナルストーリー。 モデルとなっているのは、日本で女性として初めて弁護士・判事・裁判所所長になった三淵(旧姓武藤)嘉子(みぶち・よしこ)さん。 戦前、日本社会が女性にも門戸を開放する動きが広がりるなかで、三淵さんは女学校卒業後、1932(昭和7)年、第4期生として明治大学専門部女子部法科に入学しています。  旧制一高や東大に進み、台湾

        答えをすべて教えない。自ら考えることで人は育つ。孔子の人材育成法―『論語』

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その5―有効なのは「徳」か「法」か

          古代中国の主な思想家の人間観 まとめ なぜ人は不正をしてしまうのか。 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。 企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。 古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。最終回。 孔子の「仁(徳)」。 孟子の「性善説」。 荀子の「性悪説」。 韓非子の「人間不信」。 4回

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その5―有効なのは「徳」か「法」か

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その4―「韓非子」の人間不信

          なぜ人は不正をしてしまうのか。 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。 企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。   古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。第4回。 「性悪説」を発展させた『韓非子』「法家」の思想  荀子の唱えた「性悪説」がどういうものか。  このシリーズの第3回で紹介しまし

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その4―「韓非子」の人間不信

          人の見分け方で失敗しないために。天才軍師・諸葛孔明の人物鑑定法―『諸葛亮集』

          人を見分けるよりもむずかしいことはない  三国志の時代に活躍し、天才軍師と謳われた諸葛孔明も、人の見分け方ほどむずしいことはない、と嘆いていたそうです。その教訓として、7つのポンントを『諸葛亮(しょかつりょう集』で挙げています。諸葛亮とは諸葛孔明のことです。   彼が遺した、人の見分け方をみていきましょう。  なにがむずかしいといって、人を見分けるよりもむずかしいことはない。  善人がかならずしも善人らしい容貌をしているとはかぎらない。  悪人がかならずしも悪人ら

          人の見分け方で失敗しないために。天才軍師・諸葛孔明の人物鑑定法―『諸葛亮集』

          「切磋琢磨」。スキルや知識だけなく、「心を磨く」ことに真意あり―『論語』

          「継続は力なり」につながる言葉  新人が職場に配属されるこの時期に、「継続は力なり」ということをスタッフに訴えたい。それにふさわしい『論語』の言葉を、研修でとりあげてもらえませんか。  企業のオーナーからのそんなリクエストに応じて、候補の言葉をいくつか挙げたところ、オーナーが選んできたのは、「切磋琢磨(せっさたくま)」でした。  現在では、互いに競い合って、技能やスキルなど高める意味で使われていますが、もともとは、学問や道徳、技芸などを磨き上げる「自己研鑽」を意味していま

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          お金やモノがなくても、人に喜びを与えることができる―禅「無財の七施」

          「無財の七施(むざいのななせ)」 法要のときにお寺さんに包む志、「お布施(ふせ)」と書かれた封筒に入れて、お渡しします。 「布施」。 ふだんはあまり使うことのない言葉ですが、「分け隔てなく施す」という意味で使われる仏教用語で、大きく分けて次の3つがある、とされています。 財施(ざいせ)……お金や衣食などの物資を必要とする人に与えること 法施(ほうせ)……相手の心に安らぎを与えること、精神面で尽くすこと 無畏施(むいせ)……恐怖や不安などを取り除いて、安心させること つい

          お金やモノがなくても、人に喜びを与えることができる―禅「無財の七施」

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その3―荀子の「性悪説」

          人の本性は「悪」である  なぜ人は不正をしてしまうのか。  それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。  企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。    古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。第3回。 孟子の「性善説」vs荀子の「性悪説」  これまで、孔子の唱えた最高の徳「仁」と、その思想を発

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その3―荀子の「性悪説」

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その2ー孟子の「性善説」

          なぜ人は不正をしてしまうのか。 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。 企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。   古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。 第2回 孔子の教えと孟子の「性善説」との関係について 孔子の「仁」の思想については第1回でふれました。 それを発展させて、「性善説」

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その2ー孟子の「性善説」

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その1ー孔子の「仁」

          なぜ人は良心に反して不正をしてしまうか なぜ人は不正をしてしまうのか。 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。 企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。 人は過ちやミスをするし、判断も間違えます。無意識にルールを破ってしまうこともあります。 一方で、ミスや誤りを修正し、間違いを犯さない方策を考えることができます。ルールを守るべく自己コントロールする能力も備えてい

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。その1ー孔子の「仁」

          息子、最愛の弟子の逝去…孔子を襲った晩年の悲劇と「従心」の境地―『論語』

          心の欲する所に従いて、矩を踰えず  自分の人生をどう振り返るのか。  20代、30代の道なかばだとしたら。  人生の勝負がついたかどうかというくらい、第3コーナーにさしかったところだとしたら。  第一線から身を退いき、次のステップへ移ったところだとしたら。  74歳で亡くなった孔子が、70歳の心境について語ったことばを、人生をどう振り返るのかの参考にしてみたい。  70歳になったときの境地はどうかって?   自分の思うままに行動しても、社会の規範から外れることがなくなっ

          息子、最愛の弟子の逝去…孔子を襲った晩年の悲劇と「従心」の境地―『論語』

          自分をどう磨けば、人間的に成長できるのか―禅「瓦を磨いて鏡となす」

          禅問答「瓦を磨いて鏡となす」。「南岳磨甎」とは  古典や人生哲学を読んで、人の生き方をアタマで理解しているときは、立派な人間になったように錯覚してしまうのですが、いざ自分を磨くとなると難しいです。 そんなことをある経営者の方と話をしていたら、そういうときには、自己修練とはどうあるべきなのか、ある禅問答を思い浮かべて、自分なりに答えが出るのを待つようにしている、とのことでした。 教えてもらったのが、瓦を磨いて鏡となす。「南岳磨甎(なんがくません)」として知られている

          自分をどう磨けば、人間的に成長できるのか―禅「瓦を磨いて鏡となす」

          他人のせいにしても、何も解決しない。自分の内なる声に素直に従う―『呻吟語』

          書が下手なのは、筆のせいでも、紙のせいでもない  失敗したときやモノゴトがうまくいかないとき、ついつい他人のせいにしてしまいます。政治や世の中がよくないからだ、と不満をぶちまけて、やり過ごすこともあります。  そこに一面の真理はあるにしても、正義をふりかざしたからといって、ましてや世の中のことをいくら憤っていても、問題は解決しません。  かえって、あの人はいつも正義漢ぶっているけど、不満をぶつけているだけで、やっていることは「自己中」だよねと、周りの目には写ってしまい、

          他人のせいにしても、何も解決しない。自分の内なる声に素直に従う―『呻吟語』

          「可もなく不可もなし」。不条理な世の中を生き抜く孔子のヒント―『論語』

          「可もなく不可もなく」の元々の意味 「特によくもないけど、悪くもないね」。 「普通だね、平凡だね」。  そういうニュアンスのときに、何気なくこういう言い方をしています。 「可もなく不可もなし」。  元々の意味は、現代のそれとはちょっと違っていました。  ルーツは『論語』です。  古代中国において、自分の意志を貫いて生きた人の生き方について、孔子が語った言葉から来ています。  世の中のもろもろのことが不条理なのは、いまも昔もかわりません。  古代の中国でも、現世に見切りを

          「可もなく不可もなし」。不条理な世の中を生き抜く孔子のヒント―『論語』