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【音楽コラム】本気の失恋から癒されるための5曲【ラブソングじゃない】

割引あり

音楽って、素晴らしいものですよね。
(金曜ロードショー風)

ラブソングって、本当に星の数ほどあります。
「幸せな恋」の歌ばかりじゃなく、「愛が壊れた時」を歌う楽曲も、それこそ数えきれないくらいです。
(むしろ、そちらの方が多いでしょうか)

誰かと別れ、独りぼっちになった時。
あんなに素晴らしい瞬間は、もう二度と訪れないと思える時。
そういう時でも、音楽だけはいつもそばにあったし、いずれまた生き直してみよう、と思える時まで、離れずにいてくれた。
私にもたくさん、そんな憶えがあります。

ここでピックアップした5曲は、いわゆる「ラブソング」っぽくないものばかりになりました。
なぜだろう?と考えてみたのですが…
本当に真剣だった愛や恋が終わってしまった時に、その相手のことを賛美したり、逆にけなしたり、過去を懐かしがったり、逆に過剰に忘れようとしたり…ということは、もはや全部無効だからじゃないか?という気がしました。
そこに残っているのは、「空っぽになった自分の心」だけです。
そういった心の状態そのものを見つめ、うつろな空間に反響し、やがて静かに埋めてくれるような5曲を選びました。
それではどうぞ!👇


①「Wake Me Up When September Ends」 Green Day

90年代後半から、史上最大のパンクバンドとして君臨し続けてきたGreen Day。
彼らがただの「元気なお兄ちゃんたち」で終わらなかったのは、その卓越したソングライティング能力のゆえに他なりません。

スリーピースのパンクロック、という極めて限定されたフォーマットながら、彼らはその「歌ごころ」と呼んでもいいリリシズムで、幾多の名曲を残してきました。

私は、デビュー作の『Dookie』が発売された時のレビューも見た記憶がありますが、別に合評でもなく、さらっと流されていて、のちの大アーティスト誕生の瞬間とはとても思えませんでした。

やがて『American Idiot』で政治的なスタンスも明らかにした彼らは、今一つ煮え切らない他のアーティストたちを先導する形で、一躍時代の代弁者となってゆきます。

「Wake Me Up When September Ends」は、その7thアルバム『American Idiot』からカットされたシングルです。

As my memory rests/
 (思い出は残っているけれど)
But never forgets what I lost/
 (失ったものは決して忘れない)
 Wake me up when September ends
 (9月が過ぎたら俺を起こしてくれ)

Here comes the rain again/
 (また雨が降ってくる)
Falling from the stars/
 (星々の間から)
Drenched in my pain again/
 (苦しみの中でずぶ濡れになって)
Becoming who we are/
 (自分が誰だか思い出させる)

実はビリー・ジョーが亡くなった父のことを歌ったというこの曲。
ただ👆のようにMVでは、戦争によって引き裂かれる男女の姿が描かれています。

Like my father's come to pass/
 (父が逝ってしまったように)
Twenty years has gone so fast/
 (20年間はあっという間に過ぎていった)
Wake me up when September ends/
 (9月が終わったら俺を起こしてくれ)

②「Lost Cause」 Beck

カート・コバーンの死と入れ替わるように登場したBeck。
まるで若年ホームレスのようなたたずまいと、インタビュー中に無言で電話を放り投げるなどといった奇行で、「ジェネレーションX」の象徴的な存在として扱われました。

ところが、実はアーティストの両親から生まれ、前衛芸術集団フルクサスのメンバーである祖父のもとで育つという、モダン・アートのサラブレッドと言ってよい生い立ちでした。

ファースト・アルバム『Mellow Gold』からのシングル「Loser」により、すさまじい異物感とともにシーンへ躍り出た彼は、セカンド・アルバムの『Odelay』により、一躍オルタナティヴ・ポップ・スターの仲間入りを果たします。

フォーク、ブルースをベースに、ヒップホップやノイズ、ディスコまで飲み込んだその音楽性は、まさに新時代を感じさせる、レトロモダンな世界観でした。

「Lost Cause」は、そんな彼の8枚目のアルバム『Sea Change』に収録されたアコースティックな小品です。

Your sorry eyes, they cut through the bones/
 (君の謝る瞳が 骨まで切り刻む)
Make it hard to leave you alone/
 (一人で置いていくのを 難しくさせる)
Leave you here wearing your wounds/
 (傷を負った君を ここに残していくのが)
Waving your guns at somebody new/
 (新しい誰かに向かって 銃を振ってみせながら)
Baby, you're lost/ (ベイビー、君は負けたんだ)
Baby, you're lost/ (君は失われた)
Baby, you're a lost cause/ (君は失われた理由)

👆のMVは、空から落下していくBeckの人形が次々に爆発し、最後は欠片もなくなってしまうという、あまりに痛々しいものです。

There's no one laughing at your back now/
 (今はもう誰も 君を陰で笑いはしない)
No one standing at your door/
 (君の戸口に立つ人は誰もいない)
Is that what you thought love was for?/
 (愛はそんなことのためだと 思っていたのかい)

この時期、Beckは9年間もつきあっていたガールフレンドに浮気され、破局を迎えていたころでした。
その痛みがダイレクトに表れたこの曲は、今でも失われた愛の前で茫然と立ち尽くす私たちに、そっと寄り添ってくれます。

I'm tired of fightin'/ (戦うのに疲れた)
I'm tired of fightin'/ (疲れ切ってしまったんだ)
fightin' for a lost cause/
 (失われた理由のために戦うのが)

➂「Bizzare Love Triangle」 Frente!

Frente!(フレンテ!)は、90年代初頭に突如現れた、オーストラリア出身の四人組です。
あっけらかんとしたバンドサウンド、意外に幅広い音楽性も魅力ですが、何と言っても一番の特長は、女性ヴォーカルのアンジーの声でしょう。
(👇はすごい顔になってますが…)

甘さ、けなげさ、強さ、無邪気さ、けだるさ、賢さ、セクシーさまで。
実に様々な表現をこなし、くるくると表情を変える、舌足らずなウィスパー・ヴォイス。
もっと世界的なスターになっても不思議ではなかった、それだけのポテンシャルはあった、という気がしてなりません。

「Bizzare Love Triangle」は、後述するポスト・パンクの雄、New Orderのカヴァーです。

原曲はバリバリのシンセサイザー・サウンドですが、こちらは何とアコギ一本と歌だけの、極限まで削ぎ落とされたヴァージョン。
まるで練習用のデモテープみたいです。

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