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学会遠征編ショート版 第29話

巨大施設

 午後の観光は自分たちのホテルから遠くないところで行けそうなところということで、アイコンサイアムに行くことにした。空港で出会った男性に教えてもらったところの一つだ。歩いて向かったのだが、道中にも様々な寺院が存在していた。2人ともタイ語も仏教も歴史にも詳しくないのでありがたみがよくわからないが、金ぴかで何か凄そうということだけはひしひしと伝わってきたので、お参りしてみたくなってしまった。中に他の観光客がいたので大丈夫だとは思うが、本当に入っていいのかわからなかったので近くを通る人に聞いてみたら問題ないと言われた。実際に入ってみるとお供え物の裏からねこが現れた。ここに来たことを祝福してくれたかのような喜びだ。しばらくこのねこを追いかけ、余すことなく写真に収めることができたので、お参りした意味は十分にあると言えるだろう。ここの他にもいろいろ寺院に寄ってみた。時折オレンジ色の服を着た修行僧もいたので、本気度の違いを見せつけられた。
 こうしてアイコンサイアムに着いた。大きく「UNIQLO」と掲げられた看板の場所を指していたので、本当にここで合っているのか、これは果たして観光地なのかと気になったが、それはそれで楽しそうなので入ってみることにした。入口は2Fにもあるようだが、さっさと涼みたいので一番近い入り口から入った。中はお土産販売店や衣類の店などがぎっちぎちに詰まった、巨大なショッピングモールだった。その大きさと言えば日本でよく見るイオンモールの2~3倍はあるとみてよいだろう。田舎者にとっては近くにそういう施設しか享楽が無かったのでこういうところの楽しみ方はよくわかる。高い階でソファを見つけてまったりと下を見下ろすのがいちばんの楽しみ方だ。とはいえ元気のあるうちは買い物をしてもいい。1階には特にお土産用の物が多く売られていたが、ドライフルーツ屋さんが目に入った。いろいろな種類を手に取って見ていると、店員さんが、
「コレハチョットスッパイデス」
と日本語で説明してくれた。観光客慣れしているということだろうか。少しは日本語が話せるらしい。僕を日本人だと認識できるようだ。隣にいるのは生粋のアフリカ人だが、そこは店員にとって疑問に感じるところではないのだろう。調子に乗ってベラベラ日本語でまくしたてると応対できず言語マウントのようになってしまうかもしれないと思い、無理のない英語で話すことにした。ちなみに、すっぱいと言われたものはマンゴーだったが、同じマンゴーでも味付けが複数種類あるようだった。味見もさせてくれた。まるで京都の漬物屋に来ているかのようなぜいたくだ。味見だけで一食賄えるかもしれない。そんなに多くを頬張ることはせず、自分の買いたいものを決めた。バイト先用のお土産としては王道のドライマンゴーがいいだろう。それと、研究室にぶちまける用のものも必要である。僕とCRAZYから2袋買うことにした。それも、皆で分けやすいよう個包装のものがいい。僕からは甘いマンゴーのキャンディ、CRAZYからは謎の飴を買うことにした。この飴は味見をしていないのでどんな味かわからないが、袋の裏を見ても説明が一切なかったので何者かわからないままだった。こういうドキドキ味のお菓子は海外土産の定番と言えるだろう。他にもパインやバナナなど南国系のフルーツが悉く水分を抜かれ乾ききっていた。店を離れる際は日本語でありがとうと店員さんに伝えた。他にも酒屋があったりしたが、どれだけ珍しいものがあっても持って帰るのが大変なので買わないと最初に決めておいたので見るだけにした。

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