放課後はランプ

放課後は渡り廊下が暗すぎる。それでランプを持って歩く様になった。西の階段の下に2つ、東の階段の下にも2つ、ランプ台があった。コンクリート打ちっぱなしの普通の高校なのにそこだけどうしたの?ってなったけど。
ランプは計よっつなのでなるべくならひとりで渡らない様にと暗黙のルールがある。ゆらゆら揺れる炎を頼りに薄暗い廊下を歩いていくと向こう側からもゆらゆらと赤いものが近づいてくる。本当に間近になるまで誰が通るのかわからないので少しの間黙ってしまう。
ここをひとりで渡り切れると恋が叶うとジンクスがある。
向こうから来た人が片思いの相手ならとか、誰にも会わずに願い事を最後まで運ぶとか。
6月になったばかりの雨の日、地震が起きた。とてつもない土砂降りでそれだけでも廊下を渡るのは怖かった。
放課後ランプはその日が最後の灯りになった。事故が起きたとかは聞いていない。停電したのでランプは役に立ったのらしい。じゃあなんでやめちゃったんだろう。
何年か後にランプの道は本当にあったけれどそこは高校なんかなかったと、ただ建物の棟は地震で損失したんだと教えてくれた。
どうやらあの時私は持っていたランプを次の人に渡してクラックへ落下した。

あの時の願い事、今の世界が今より幸せになってずっと続くこと。当然自分もその中で生きていると思っていたはずなんだが。
懐かしいランプの道へまた学校のみんなと訪れたいと言ったらあなたは今生きているのよ、と頭上の蛍光灯が消えたのだ。

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