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郡山での実践。学び、考え、飛び込み、実行できる人になるために|和田静希さん(山形 / 20代)・内田雄太郎さん(京都 / 20代)

LIVE DESIGN School の23年度メンバー同士が、根掘り葉掘りするインタビュー企画! 各地で活動するメンバーたちが日々考えていること、そして、LDSの参加を経て見えてきた展望とは...?

和田静希さん(山形 / 20代)
 
新潟県出身。山形県の東北芸術工科大学 プロダクトデザイン科に所属。2024年春に卒業予定。在学中に民藝の考えに衝撃を受け、地域に根差すものづくりに興味を持つ。ものだけでなく、その周りにある地域の文化や歴史を含めたデザインを少しずつ実践中。旅先で郷土玩具を買い集めることが好き。

内田雄太郎さん(京都 / 20代)
 宮城県仙台市出身。6人きょうだいの4番目。東北芸術工科大学  デザイン工学部プロダクトデザイン学科に進学し、カーデザイナーを志すも、モノを見せるための展示空間の重要性に気づき、空間デザインに興味を持つ。現在は大学を休学し、京都の南丹市美山で大工修行中。最近は廃屋に興味があり、人が関わっていた痕跡に潜む輝きを見つけるとワクワクする。つくり手の顔が見える産品が大好き。

 和田さん内田さんともに、福井県の鯖江(RENEW / 産地の合説)に行ったことがきっかけでLDSを知る。学内での関わりがメインだった大学3年間を経て、4年生からはもう少し範囲を広げて交流したいという思いで、LDSに参加した。

━━ お二人はいま、horomonoというユニット活動をされていると聞きました。普段はどんなことをされてるんですか?

和田:horomonoは2023年8月からスタートしたユニットで、具体的な活動をしていくのはこれからなんですが、土地固有のものづくりや手仕事をテーマにした移動式産地ミュージアムのプロジェクトの企画をしたり、福島県の郡山市にある張り子の集落「デコ屋敷」で、張り子のお面とひょっとこ踊りを使った「郡山からっぽ祭り」というお祭りの企画運営をしたりしています。

━━ ミュージアムの企画から伝統文化に着目したお祭りの運営まで幅広いですね!ちなみに、ユニット名にはどんな意味が込められてるんですか?

内田:「放浪者」って言葉があるじゃないですか。あてもなくさまよう人。自分たちもその放浪者みたいに、決まった一つの場所にとどまるんじゃなくて、いろんな場所でいろんな活動をして、彷徨うように日本全国を歩きたいっていう気持ちが強くて、放浪者の「者」を「もの」と読んで「horomono」にしました。

━━ 彷徨うように日本全国を歩きたい。とても素敵な由来ですね!

内田:実は結構悩んだんです(笑)。放浪ってあまりプラスの意味として捉えられないからどうしよう・・・って。でも、短期間で転々とするイメージでは全然なくて、いろんな地域に行って住んでみてわかることもいっぱいあると思ってるから、その地域その地域特有のおもしろい場所を見つけるために放浪という手段があるというか。そういった理由もあって、ローマ字にして少しやわらかく聞こえるような名前にしました。

━━ 放浪という言葉が持つパワーをすごく感じました。そのようなビジョンを持たれている中で、LDSで印象に残っているシーンやプログラムはありますか?

和田:リードデザイナーの小林新也さんが活動されている、島根県温泉津でのフィールドワークが印象に残っています。温泉津は観光バスが通るような観光名所じゃないけれど、伝統芸能の石見神楽が毎週催されてたり、熱々の源泉の温泉があったり。そこにしかない伝統や文化が、今もなお人々の生活に根付いてるのがすごい不思議で面白くて。

帰り道に飛行機の都合で大阪の梅田に寄ったんですけど、看板とかポスターとか、人の目を引こうとするキャッチコピーとか、情報量の多さにとにかくびっくりしました(笑)。ここまで住む環境が違うのかと思ったし、人間って何が必要なんだろうって。

温泉津の生活は本能として生き生きするというか、里山に入って木工作業で体動かして汗かいて、温泉に入って汗流して、みたいな。あの生きながら仕事している感覚と、リフレッシュする気持ちよさはほんとに新鮮でした。

━━ 内田さんはどうですか?

内田:自分も島根のフィールドワークが印象に残ってて、新也さんすげえってなりました(笑)。島根は自分が行ける範囲内で一番遠いところに行こうと思って選んだんですけど、新也さんが、伝統とか職人さんたちの未来のために山を買って里山再生している姿に衝撃を受けて。

正直、島根のフィールドワークに参加するまでは就職しないで「horomono」の活動を続けようと思ってたんですけど、新也さんの話を聞いたら、人生変えたいって思っちゃって。今は新也さんに相談して紹介してもらった京都の伝統建築の大工の元で修行をしてます。

━━ お二人とも転機となったフィールドワークだったんですね!先ほどお話に出た「郡山からっぽ祭り」も、リードデザイナーとの関わりの中で生まれたとお聞きしました。

和田:もともと、東北の手仕事をまとめたZINEを作りたいっていう話をhoromonoでしていて。そのことを、山形を拠点に活動されているリードデザイナーの吉野敏充さんに相談させてもらったら、「ZINEだけにこだわらなくてもいいんじゃない?」とアドバイスをいただいて、先ほどの移動式産地ミュージアムの企画が生まれました。

「郡山からっぽ祭り」は、その後も吉野さんとやりとりを続けさせてもらう中で、「いま自分、張り子職人さんと一緒に張り子をリデザインするプロジェクトを進めてるんだけど、今度打ち合わせに参加してみない?」と声をかけてもらったのが最初です。
それでその後、実際に打ち合わせに参加させてもらう中で、雄太郎(内田)がポロッと「お面を使った仮面舞踏会みたいなイベントをやったら面白いかも」って発言をしたら、吉野さんから「じゃあその企画、きみたちよろしくね」って返ってきて。それから、今年の3月23日(土)に開催する「郡山からっぽ祭り」の企画を進めて、いま絶賛ドタバタ準備中という感じです(笑)。

━━ すごいスピード感・・・!郡山からっぽ祭りについてもう少し詳しく伺ってもいいですか?

和田:郡山からっぽ祭りは、張り子の集落デコ屋敷に伝わる「ひょっとこお面」をかぶって踊ることで頭とか心を一回まっさらにして、新しい気持ちで日常を迎えようとする文化に注目したお祭りで。みんな今、いろんな嫌なこととか辛いこととかたくさんあると思うから、新年度を迎える前に普段とは離れた場所で一旦自分をリセットして、良い4月を迎えてほしいというメッセージを込めてつくっています。

━━ お面を使ったお祭り。おもしろそう!

内田:お面ってすごい面白くて。以前デコ屋敷に行ったときに、橋本広司さんっていう張り子職人でもあり、ひょっとこ踊りの名人でもある方がいらっしゃって。その方から聞いた話なんですけど、「お面は、かぶると上から踊りが降ってきて、勝手に体が動き出す。お面は、先祖と繋がっていて、常に新しい気づきをくれる。だから、毎日踊って空っぽになって、というのを繰り返して、その一瞬一瞬を生きてるんだよ。」って。

それを聞いて、お面に秘められた可能性をすごく感じたし、今の時代の人たちにとって必要なことなんじゃないかなって思って。むしろ、お面をかぶってるのは実は「普段の自分」で、どこかみんな自分を取り繕ったりしていて。でも、だからこそ、実物のお面をかぶることで、本来の自分を出したり、全身を空っぽにして、自分自身と対話することができるっていうのがひょっとこ踊りの魅力だって気がつきました。

━━ 自己対話や自己解放のためのお面。興味深いお話でした。3/23のお祭りも楽しみにしています!では、最後のご質問です。LDSに参加してみて、どうでしたか?

和田:地域の課題やデザイナーさんたちがやっている仕事の解像度がグッと上がってとても面白かったです。本を読んだりとか教科書を見たりとか、勉強すればわかる部分もたくさんあると思うんですけど、実際に地域にフィールドワークに行くと、それ以上に見える部分が大きくて。

4月の開校式のときに、「地域に何が本当に求められているのか、そのために何をしたらいいのか、学びながらたくさん考えて飛び込んで実行できる人になりたい」って目標を掲げてたんですけど、実行できるようになるための素材をいっぱい集められたし、実際に始めることもできたから、とても良い一年でした。

他にも、プログラムの中でアクションシェア(参加者の方が進めている具体的なプロジェクトについて、リードデザイナーに投げかけ、フィードバックをもらったり、議論したりできる回)があったり、地域の最前線で活動してるデザイナーの方々からアドバイスをもらえるので、一歩踏み出したい人とか勇気を出したい人とか、何かプロジェクトをやってみたい人にはすごいおすすめです。

━━ ありがとうございます!内田さんはどうでしたか?

内田:人生がめちゃめちゃになりましたね(笑)、もちろんいい意味なんですけど。もうほんとに想定してなかった事案があまりにもたくさん起きすぎて。

リードデザイナーの方々やLDSメンバーは、自分がやりたいことを「こういうことやりたいんですよね。」って話したら、みんな真剣に相談に乗ってくれるし、「めっちゃいいじゃん」って言ってすごい背中を押してくれるんですよね。

なので、和田の言ってた一歩踏み出したい人たちにもすごいおすすめだし、全然デザイナーじゃない人とか、中学生・高校生とかにも参加してもらいたいですね。早いうちにこういう世界もあるんだって知ったり、自分の地元だったり、いろんな地域や場所に目を向けられるような意識を持っていたら、ほんとに面白い人生になると思います。

(聞き手|中野裕人


地域で必要とされる「広義のデザイン」について、各地のデザイナー陣と参加者どうしが学び合う場として始まったLIVE DESIGN School。現在、24年度のエントリーを受付中です!デザイナー(志望)はもちろん、イラストレーター / 大学生 / 行政職員 / 地域おこし協力隊 / 販売員 / 製紙業 / 百姓!などなど多様な肩書きの方にエントリーいただいています。詳細はこちらから!

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