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「現地に体を入れることの大切さ」に気づいた|山本尽日さん(東京・京都 / 30代)

LIVE DESIGN School の23年度メンバー同士が、根掘り葉掘りするインタビュー企画! 各地で活動するメンバーたちが日々考えていること、そして、LDSの参加を経て見えてきた展望とは...?

プロフィール
 1985年京都生まれ。印刷を学びながらデザイン事務所の代表を経て、現在は都内で週4日会社員。また、東京から公共交通機関で最も遠いと言われる京丹後でも活動中。仲間と共に「京丹後市未来チャレンジ交流センターroots」やシェアハウスの運営、「地域づくり協同組合」の運営など幅広く活動する。LIVE DESIGN Schoolでは公式フィールドワークに全参加し、「Mr.LDS」と呼ばれ出している。参加者であり撮影班。

━━ 尽日さんは普段はどんな活動をしていますか?

2022年5月から、東京で週4日会社員をしています。主な仕事内容は、インハウスデザインチームの立ち上げ、企業のブランディングと各部署に所属しているデザイナーがお互いに困ったことを相談できる仕組みづくりです。

また、京丹後でも友人らと事業を行っています。2020年に立ち上げた「有限責任事業組合まちの人事企画室」では、「その人自身でいられること、主体的であること」をテーマに、高校生と地域の人達の居場所「京丹後市未来チャレンジ交流センターroots」を運営しています。私は3人の共同代表のうちの1人で、デザインと経営企画部門の担当です。

京丹後市未来チャレンジ交流センターroots

他にも、「株式会社フーフー・フー」ではシェアハウス合居間(あいまい)の運営や、移住希望者と地域の事業者をつなぐ「京丹後地域づくり協同組合」の運営なども行っています。

あとLDS生にはおなじみですが、京都市内でスナックを経営しています。ぜひお店に遊びにきてくださいね。(スナック 京呑

━━ 尽日さんの活動範囲の広さに改めてびっくりしました。そんな尽日さんがLDSへの参加を決めたきっかけは?

2022年に「京丹後市未来チャレンジ交流センターroots」がグッドデザイン賞を受賞させていただいたのですが、リードデザイナーの坂本大祐さんが手がけるまほうのだがしや チロル堂も同じタイミングで大賞を受賞されました。受賞のことをインスタに投稿したら、坂本さんがメッセージをくれたんです。そこから坂本さんのSNSを見るようになって、LDSの開校を知ってエントリーしました。

━━ そんなきっかけがあったんですね。LDSに参加してみて、変わったことがあれば教えてください!

生活が一変しました!もともとフィールドワーク(以下、FW)の参加は定員の都合で1地域だけと聞いていたのですが、ある理由で私だけ全FWに参加することになったんです。

昨年の夏、鯖江のFWに参加した1ヶ月後に、温泉津FWにもキャンセル待ちで参加することになりました。そのときに、LDSの参加者でもあり、無印良品の「気持ちいいのはなぜだろう。」を手がけた日本デザインセンターの村木諭さんに、「LDSの取り組みをちゃんと動画に残したい」と相談したら、「やった方がいい」と背中を押してもらって。

温泉津FWがおわってから、運営局(出雲路本制作所)の中井きいこさんに「すべてのFWに参加して動画を撮りたい」と伝えました。参加者としていたかったので、運営側ではなく他の受講生と同じようにFWに参加して、動画を撮ることに。

鯖江FWにて。撮影した動画をインスタに投稿!
温泉津FWにて。作業風景も動画に収めます。

FWに行くようになって、新しいルーティンができあがりました。月火木金の日中は会社員、平日夜と水曜はまちの人事企画室の仕事。土日は大体朝3時起きでFWに行く。番外編のFWも含めると、ほぼ毎週どこかに出かけていましたね。私の特技は平均16時間働けることです(笑)。遊びながら働いているので、常に楽しんでいる自信があります。

━━ 尽日さんの体力がどこから出てくるのか気になります(笑)全国各地のフィールドワークに参加し、「Mr.LIVE DESIGN」と呼ばれている尽日さんですが、特に印象に残っている地域はありますか?

FWの様子をリアルタイムで発信する尽日さん

いろんな方から聞かれる質問ですが、どの地域もよかったので正直絞りきれないんです。それぞれのFWをざっと振り返りますね。

鯖江FW(新山直広さん):眼鏡、刃物、漆器、和紙などのものづくりをたくさん見せていただきながら、森ハウスでお話を聞いたりしました。10月のRENEWにも参加させていただきまち全体が盛り上がっていて、デザインリテラシーがとても高い印象を受けました。動き続ける新山さんは、本当に不夜城みたいな人だなと思いました。

温泉津FW(小林新也さん):小林さんが「デザイナーは全員包丁をとげるようにならなければならない」とおっしゃっていたのが印象的でした。里山に入らせていただき、デザイナーが山に柵を張るって!?と衝撃を受け、「やりながら考える」ということを学びました。時津風のサウナも最高でした。

九州FW(福田まやさん、佐藤かつあきさん):福田さんの拠点の大分では、川に飛び込んだり茶畑にいったりおしゃれな空間でご飯を食べたりと自然と人の接点を感じ、刺激をいただきました。熊本では黒川温泉熊本地震震災ミュージアムKIOKU​​を案内していただき、かつあきさんの震災復興への覚悟とFW中もSNS発信をし続ける精度に感銘を受けました。

東北FW(佐藤哲也さん、吉野敏充さん):郡山では、経済合理性の上でバランスをとりながら行っている、決して派手ではないけれどとても大事な生活のデザインを佐藤さんから学びました。山形の吉野さんは本当にやさしい方で、わら細工​​を体験したり、kitokitoMARCHEで吉野さんが地域の方と一緒に活動する姿を見させていただいたりしました。

奈良FW(坂本大祐さん):スーパー公務員の福野博昭さんのお話を聞いたり、坂本さんのお父さんやお母さんに会わせていただいたり、東吉野ファミリーを紹介いただいたのがうれしかったです。合同会社オフィスキャンプは組織に依存しない人たちの集まりで、私にとって理想的な会社の形でした。

新潟FW(迫一成さん):これぞFWの集大成。まちを巡りながら制作をしました。瓢湖で4000羽を超える白鳥を見たことや、ずっと行きたかった上古町の百年長屋SANに行けたのがいい思い出です。最終日のみんなの制作発表が良すぎて、新潟に足跡でなく爪痕が残せたのではないかと感じました。迫さん含め皆さんが感極まって涙していたのも印象的でした。

他にも参加者の自発的なFWなどにも参加させていただきましたが、公式FWは以上です。

━━ 尽日さんすごすぎます。すべてのFWに参加された感想を聞きたいです。

全FWに行ってみて、FWには価格以上の価値があると実感しました。その土地に行かないとわからないことが本当にたくさんあって、でも一度行けば全部がわかるわけじゃない。FWに行って、0%だったものが20%になったイメージです。佐藤哲也さんのおっしゃっている「見つける」のきっかけ作りになるのかなと。何度も現地を訪れて、20%を30%に、30%を50%にしたいです。

リードデザイナーの皆さんからも、「LDSメンバーだからこの人を紹介するし、踏み込んだことも話す」というコミュニティの信頼関係ができていることが伝わってきました。

リードデザイナーごとに手法は違うけれど、固定観念に対して本当にそうなのか?と問い直して分解して再構築されている点は共通していると思いました。迫さんの「日常を楽しむ」という言葉は、「日常って見つめ直したらもっと楽しいものなのかもしれない」、「今はまだ楽しさを見つけられていないんじゃないか」と日々の生活を問い直すきっかけになっています。

あとは、「現地に体を入れることの大切さ」と「デザインに近道はない」ことに改めて気づきました。LDSは心理的安全性が高くて気づきが多い場所です。なにかに取り組みながら考え続けている人が多いので、自分だけじゃないんだと気づいて、お互いに刺激しあいながら受講できていました。1年間やりながら考え続けたからこそ、自分のやるべきことが見つかったと思っています。これこそが「広義のデザイン」の学びなのではないでしょうか。

━━ 「デザイン」の新たな定義を見つけたのですね。尽日さんはティザー動画の撮影・編集を担当されていましたが、撮影されていかがでしたか?

超楽しかったし超大変でした。動画を9000本くらい撮って、50秒にまとめました。いろいろな場所で流していただき反響をもらえたり、リードデザイナーから「LDSっぽいね」と言っていただけてとても嬉しかったです。撮影にご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

━━ 私も動画を見ました!9000本も撮られていたことが衝撃です。

そうなんです。羽田さんのインタビューと、九州FWで川に飛び込むシーン以外はすべて私が撮影しています。動画監修は日本デザインセンターの村木さんにお願いしました。実はBGMはLDSのみんなで演奏したものに、運営局(出雲路本制作所)の田渕さんが現地で録音した音をリミックスしてくれているんです。最後のクレジットにもぜひ注目いただけると。

━━ 東北FW後にみんなで演奏したときの音ですね!ちなみに、尽日さんは来年度もLDSに参加されますか?

言うまでもなく。「参加」というよりLDSが生活の一部になっちゃいましたね。再来年度にはLDSのリードデザイナーになるような気持ちで、京丹後でもっと活動していきたいです。

━━  これからチャレンジしたいことがあれば教えていただきたいです!

やりたいことが多すぎるので、やりたいことの箱を1つでも多く開けられるようにがんばりたいです。何個できるかチャレンジしたいし、泥臭く地道に丁寧にやっていきたいです。これからもリードデザイナーや参加者の皆さんともなにか一緒にできると面白いなと思っています。京丹後以外での活動も増えそうで、今から楽しみです。

(聞き手:ふるかわともか)


地域で必要とされる「広義のデザイン」について、各地のデザイナー陣と参加者どうしが学び合う場として始まったLIVE DESIGN School。現在、24年度のエントリーを受付中です!デザイナー(志望)はもちろん、イラストレーター / 大学生 / 行政職員 / 地域おこし協力隊 / 販売員 / 製紙業 / 百姓!などなど多様な肩書きの方にエントリーいただいています。詳細はこちらから!



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