短編小説7

木にもたれかかってる男の子がいた。
怪我まみれで空腹のようだった。
住んでいる場所を聞くと、西の方を指差したので男の子をおんぶしてそっちの方へ向かった。
男の子の街に着いたらしいが、人気がなく、何か爆発でも起きたようなあとがあった。
許せない、何もかもあの憎き戦争のせいだ。
男の子はこの町で行きたいところがあるらしく、ここでさよならを告げた。男の子は笑顔だった。
私は決心した。このくだらない戦争を終わらせて、この不条理で残酷な世界から子供達を守ってみせる。
近くに大きな町があるらしく、徒歩でそこに向かった。
この町の状況も悲惨だった。
あらゆる建物が破壊され、住めるような家などひとつもなかった。あらゆるところに死体が転がっていた。
私は本当に許せなくなった。
私は義勇兵に志願し、戦争の最前線に行った。戦場は、凍てついた冬の夜のように静まり返っていた。濃い霧が光を遮り、闇が暗い影を生み出す。
別に死ぬのは怖くない。私が死んでも、戦争は終わるし、生きてても、戦争が終わる。
しかし、戦争の残酷さは想像を大きく上回っていた。
砲弾は空を裂き、まるで稲妻のように地面を揺るがす。その轟音は、大地の叫び声のように耳に響き渡る。戦場は、巨大な悪夢の中に取り残されたような感覚を与え、生存者たちはただ怯え、傷つき、生き延びることに必死であった。
私は恐怖を感じてしまった。
思い出したのは男の子の笑顔だった。
枯れた草原に一筋の生命の雫が垂れる。
あの男の子のおかげで傷ついた心でも勇気が湧いてくる。

それからのことは記憶にない。
なんとか生きて戻って来れた。やがて、戦争は終わり、国は徐々に復興していった。

男の子は亡くなっていた。


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