富士山が毎日見られることは当たり前?Jリーグが気づかせてくれた地元の魅力
「あなたが住んでいる地域の魅力は何ですか?」
そう問われた時、あなたはどう答えるでしょうか。
私は今まで、この問いに答えられませんでした。
日常生活を送っている中で「この地域に住んでいて良かったなあ」と思えることがなかったからです。
山梨県に住んでいる中で起きることが、私にとっては何もかもが当たり前のことで「他の地域も同じなのだろうか?」と考えることすらしなかったのです。
毎日自宅近くから富士山が見えること。
水道の蛇口から南アルプスのミネラルウォーターが出ること。
高額なシャインマスカットを知り合いからもらって、おやつのように軽い気持ちで食べること。
これらもすべて当たり前のことだったのです。
それどころか私は「海のある県は豊かで羨ましい」「山梨なんて何もない、田舎の貧乏県だ」と思い込んでおり、山梨県には何の魅力もないと思っていました。
できれば海が見える県にいずれ移り住みたいと思っていた時期もあったほどです。
しかしヴァンフォーレ甲府サポーターになり、私は山梨県が大好きになりました。
Jリーグを通して、私は今まで気づかなかった地元の魅力を再発見し、他クラブのサポーターに紹介するためにもっともっと山梨の魅力を知りたいと思うようになったのです。
Jリーグサポーターになると、地元の魅力に気づくことができます。
「いやいや、私の地元には本当に何もないから」
そう思っている方もいらっしゃると思います。私もそう信じ込んでいました。
しかし何の魅力もない地域なんてありません。
自分では当たり前だと思っていたことも、他の地域の人から見ればかけがえのない魅力として映るのです。
山梨県には何もないと思っていた私が、なぜ山梨を大好きになったのか。
地元の魅力を再発見する旅へお連れします。
ユニフォームは地域代表の証
山に囲まれている。
特産品はぶどう、桃などのフルーツ。あとはワイン。
観光地は昇仙峡や富士五湖周辺。
山梨の魅力を知る前、私は山梨をこの程度にしか認識していませんでした。
どのガイドブックにも書いてあるようなことで、おそらく山梨県民なら誰でもこの程度は答えられるでしょう。
私は甲府サポーターになるまで、山梨県民であることを意識して生活したことはありませんでした。
住んでいるところが山梨県というだけで、他県にはない山梨の魅力など考えたこともなかったのです。
しかしヴァンフォーレ甲府サポーターになったことで、少しずつ意識が変わり始めます。
まず、私はもともとアニメオタクなので、自分がのめり込んだものをアピールしたい意識が強くあります。
甲府にのめり込んだからには、所持品や日用品に甲府の青赤を取り入れたり、試合日には甲府のユニフォームを着て街を闊歩したりします。
「私は甲府サポーターだ!」ということをアピールしたくなるのです。
そしてアウェイゲームで県外に出ると、その意識はより強くなります。
青と赤というカラーリングで、胸に大きく「はくばく」と書かれたインパクトのあるユニフォームは、高速道路のサービスエリアなどで周囲の注目を集めます。
普段は周囲の視線を気にしがちな私ですが、ユニフォームを着た時だけはその視線を心地良く感じてしまうのです。
サービスエリアにはさまざまな地域から人が集まります。そこで山梨県のサッカークラブであるヴァンフォーレ甲府のユニフォームを着て歩くことにより、甲府サポーターのアピールのみならず、私が山梨県民であることもアピールしているような気分になります。
もしかしたら周囲からは「何あの奇抜な色のユニフォーム」とか「はくばくって何だよ」などと思われているかもしれません。私が山梨県民であることすら気づかれていないかもしれませんし、そもそもサービスエリアのいち利用者に興味を持つ人は決して多くはないでしょう。
それでも私は自意識過剰にも、自慢げにユニフォームを着て県外を歩きます。
そうしているうちに、私の中には「私は甲府サポーターだ」という意識とともに「私は山梨県民だ」「私は山梨を背負っているんだ」という意識が芽生えました。
「背負っている」という表現は、おこがましく思えるかもしれません。
しかし私はユニフォームを着て県外に出ると、自然と背筋が伸びて「クラブや山梨県のイメージのために、滅多なことはできないな」と思うことがあります。
ヴァンフォーレ甲府を象徴する濃いめの青とワインレッドを使ったユニフォームの柄、クラブエンブレム。
胸や左袖、背中にあしらわれた県内企業のロゴマーク。
そして右袖のJリーグエンブレムの下で存在感を放つ「山梨」の文字(今シーズンからは「YAMANASHI」表記)。
そのどれもが山梨県を象徴していて、日本代表ユニフォームが日本という国を象徴するものであるように、ヴァンフォーレ甲府をはじめJリーグのユニフォームは地域代表ユニフォームであると気づいたのです。
ヴァンフォーレ甲府のユニフォームを着た人は山梨県の代表であり、私もまた山梨県代表の一人です。
これは決して大げさなことではありません。
サポーターがたった一人でも悪いことをすれば、そのクラブのサポーター全体がイコールで見られるように、一人ひとりの行動がクラブ、そして地域のイメージを左右します。
私が良いことをすればヴァンフォーレ甲府や山梨県のイメージは良くなるでしょうし、マナー違反やルール違反をすれば「山梨県民は民度が低い」と思われることでしょう。
ヴァンフォーレ甲府のユニフォームを着た人は山梨県の代表。
そう考えた時、私はふと思いました。
「山梨県の代表が山梨の魅力を語れないのは、恥ずかしくないだろうか?」
他クラブのサポーターと話して気づいた地元の魅力
私は山梨の魅力について考えるようになりました。
しかし山梨県内にいるだけではすべてのことが当たり前で、何が山梨ならではの魅力なのかもよくわかりません。
それどころか対戦したクラブを通じて他県の魅力について触れることで、山梨県以外の地域が羨ましくなり、ますます山梨の魅力がわからなくなってしまいました。
しかし他クラブのサポーターとの交流で、私の意識、認識が劇的に変わります。
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