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2050年、役所のアルゴリズム

2050年、便利な時代になった。

人は考える必要がなくなった。

使わない知識や言葉は忘れていくが、特に問題はない。

各組織の複雑な思考回路を人工知能が学び、最適なアルゴリズムを構築し、すべてのモノ、システムを日々発展させてくれるのだ。

研究開発は急速に進んだ。調理ロボットが家にいて、自動車は宙に浮く。

ところが、役所だけは30年前と何も変わっていなかった。

ふと、エヌ氏は不思議に思った

「なんで役所だけは書類と印鑑が必要なんだろう?まぁいいけど」

先日、各組織のアルゴリズムの詳細情報が一般に公開されることになった。

エヌ氏はなんとなく調べてみた。

ほとんどの組織のアルゴリズムは随時アップデートされ、最新のものになっていた。

ところが、役所だけは30年前と何も変わっていなかった。アルゴリズムの中身を見たが、エヌ氏には何のことだかさっぱりわからなかった。


「このアルゴリズムの意味、わからないな、まぁいいけど」

わからなかったのも、無理はない。

そこには、エヌ氏にわかるはずがない、4文字が書かれていたからだ。



















「 前 年 踏 襲 」








                                完

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