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物議だけは醸したトランスジェンダー否定本の原書や著者について書いておきたいこと

なんだかんだで騒がれて、結局その話題性でアマゾン1位になったらしい、あの本。リンク貼るのも、メンションするのもイヤなんで、「〜になりたい少女たち」とだけ。

その本について、原書の出所についてだけ書いておくと。

Regneryって版元の名前聞いただけで「あ゛〜」って声しか出ないわ。この出版社は首都ワシントンにある、規模としては中堅出版社って感じのとこ。ちなみに大手のトップ出版社はみんなニューヨークにあるんで。確か去年くらいに、テキサス州(テキサスに出版社なんてあるんかい?ってなレベルだけどな)のセーラム・メディアグループからスカイホース出版に身売りされて、既刊タイトルもそっちに移った。

なんでワシントンDCに会社があるかっていうと、ここから本を出している人のほとんどが保守ウヨの政治家だから。日本人が聞いてわかる著者としては、真冬のテキサス大停電の際に家族とカリブ海に逃げたテキサスの上院議員のテッド・クルーズとか、たかがヤボ眼医者の癖にいつまでも前感染研究所の所長(NAIAD)で免疫学の権威であるアンソニー・ファウチを投獄しろとかほざいてる上院議員のランド・ポールとか、そうそう最近では元副大統領のマイク・ペンスのメモワールも出してたな。売れなかったけど。ドナルド・トランプの本もあるけど、あいつは本なんて読まないし、ましてや書けないので、ゴーストライターの作品。クリントンやオバマあたりがメモワール書くと、数千万部は売れるんだけどね。つまり、レグネリー社を日本で例えれば、最近はテレビで見かけなくなったソーラーパネ瑠璃ちゃんや、ギスギス水脈とか、ハゲ100田あたりを著者として抱える日本懐疑出版社、みたいなもん?

政治的に保守寄りなのはいいけど、レグネリーの本はどれも「これは著者の意見なので〜」でなんでも片付けちゃって、ファクトチェッキングが甘いんだよな。到底、医学的にきちんと検証を行った本など出せるわけもなく。日本でも「〜〜を食べるとガンが治る」とか、「体温を何度上げれば長生きできる」とか、マユツバ医学系の本が訴訟も起こされずに書店に並んでるけど、アメリカではそういかんしね。実際、原書は2020年の刊行当初、ターゲットが「うちでは売りません」ってなったはず。

で、件の「〜〜少女たち」では、Rapid Onset Gender Disphoria (ROGD)なるものを唱えてるんだけど、これって医学的に証明されてないタダの仮説なんだよね。要するに、ティーンエイジャーは、周りの子がそうだから、とかソーシャルで聞き齧った見聞で、自分がトランスジェンダーって思い込みがち、っての。

トランプ後のアメリカウヨ界隈では、ただの差別的偏見を、そういう学説があるから〜みたいなこじつけで、本当はどう言う意味なのかを紛らわせるために、こうやって英語3文字ぐらいで、流行らそう、植え付けようという動きがあってだな。GRT(Great Replacement Theory、ディープステートがどんどん移民を増やして白人を入れ替えようとしている説)とか、DEI(Diversity Equity Inclusion)のせいで、才能のある白人がマイノリティーに役職を奪われているとか、Wokismのせいでアメリカ人がリベラル化されているとか、みんな被害妄想から出た陰謀論なんだけどね。

原初でも、結局科学的な裏打ちのある話はなくて、ほとんどがトランスジェンダーの子どもを持つ親の一方的な証言で、うちの子がトランスジェンダーになったのは、余計なセラピーのせいだ、って言ってるだけだわな。当の子どもによる証言は載ってないし、そりゃ、こんな毒親がいたら取材されたくないだろうしね。

でも、こういう科学的根拠のない仮説を、世間一般が信じるようになっちゃって、原因とされたモノが否定されて、返って社会に悪影響が出ちゃった、ってのがあるじゃないですか。

ワクチンと自閉症のことね。結局、医学的に証明されてないのに、子供の頃に受けるMMR(混合3種)ワクチンに水銀が入っていて(最近はもう入っていない)、そのせいで自閉症になるって説、元々はイギリスのアンドリュー・ウェークフィールドって医者が言い出したせいで、世界中に広まっちゃったよね。そのせいで、今頃アメリカで麻疹が流行ったりして、ほんと、日本のSNSでもコロナワクチンまでこう言う陰謀脳の人たちが湧いて出ちゃって困ってるでしょ。

このROGD説も同じ。つか、原書の著者の自作もBAD THERAPY: Why the Kids aren't Growing upってタイトルで、これからもわかる通り、この著者、ただの社会学者で一貫して単なるアンチセラピーなわけだ。「〜〜少女たち」も原題はIRREVERSIBLE DAMAGE: The Transgender Craze Seducing Our Daughtersってんだけど、要するに自分がトランスジェンダーかも、と悩む思春期の少女たちに向き合おうとするからそう思い込んじゃう、って主張してるわけで。因果関係が証明されていない。「コロナワクチン打った後に人が何人も死にました」っていってる人と同じ。

著者が自説を唱えるために出ているポッドキャストがチャーリー・カーク(モテない僻みを拗らせちゃったインセル君で、黒人パイロットの飛行機には乗りたくないとか、最近はガザ擁護に見せかけたユダヤ人差別とか、フェミのこき下ろしとかがオハコ)とか、ジョー・ローガン(コロナ陰謀説が酷かったけど、ユダヤ人差別も移民差別も相当ひどい)の番組だもんね。で、自分の説が間違ってますよ、と指摘されると、私に対するバッシングがひどい!って怒ってる。

その程度の本です。



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