見出し画像

陸上自衛隊で受けた操縦教育③

2011年、新年を迎えた私たちの操縦教育はいよいよ加速していきます。
私が教育入校した当時の「幹部航空操縦課程」のカリキュラムはざっくりと以下の通りでした。

○ 学科教育  (約2ヶ月) 霞ヶ浦駐屯地
○ 基本操縦訓練(約6ヶ月)   ↓
○ 計器飛行訓練(約3ヶ月) 明野駐屯地
○ 仕上げ訓練 (約2ヶ月)   ↓
○ 技能審査など(約1ヶ月)   ↓

霞ヶ浦では、飛行場の場周経路を使用して通常離着陸、最大出力離陸、高角低速着陸、滑走離着陸、オートローテーション着陸など様々な離着陸技法を学びました。
この段階の訓練は、もともと“操縦技量ゼロ”だったところに新たな技術を身につけていく段階だったので、上手くいかないことも沢山あるものの、日々自分の技量が向上していくことが知覚でき充実感を感じながら過ごせていました。

しかし、「航法」の科目が始まった頃から状況は一変します。
航法とは端的に言うと「飛行場からある目的地を経由し、再び飛行場に戻ってくる」訓練のことです。
この字面だけ見ると「何が難しいの?」と思うでしょうけど、私たちが訓練で使用していた機体はOH-6Dという機体(民間でいうMD 500、↑写真の機体です。)で、自動操縦装置もなければカーナビのような地図機能もありません。このため航空図や国土地理院の地勢図に鉛筆で経路を引き、飛行中は自身の目で自己位置を標定しながら飛行します。

しかも航法訓練を行う場所は人工密集地が無限に広がる関東平野・・・・
土地勘もない関東の上空で現在地の標定が出来ず、“空で迷子になる”という信じられない経験をし・・・
不思議なことに不安感は如実に航空機の挙動に表れるもので、教官からも「どこに向かっているんだ?自分がどこにいるかもわからないのか!?」と怒鳴られ、打ちひしがれて過ごす日々が霞ヶ浦での最後の思い出になりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?