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アナログからデジタルへ FMチューナー 過渡期って面白い その1 ~当たり前過ぎて意識しなくなっていること

 過渡期って、多様性の極み。とても興味深い時間です。

 ソニーさんのFMチューナーの例を楽しんでみたいと思います。

 あまり知られていないかも知れませんが、ソニーさんでは高周波技術·無線技術の開発は連綿と続いています。1955年に日本初のトランジスタラジオ TR-55 を発売されて以来現在まで。

 海外をターゲットされた特徴的製品が1969年に発売されています。ST-5000F。98,000円。(大卒初任給34,100円) とても高価でした。FM多局化が進んだ北米で、強電界局に近い周波数の弱電界局を綺麗に受信でき、高い評価を得た製品です。

 小学生だった私は、銀座のソニービルに展示されていた本機の美しいデザインに、子供なからにこれが「垂涎ものの逸品」なのかと背伸びして感動していました。因みに、定年になってから、大枚な金額を払ってこの銘機を入手しました。(笑)

 このアナログ銘機の最終型が、1976年に発売されたST-5950。84,800円。(大卒初任給94,300円)だいぶ手頃になったのでしょうか。FETやICは使われましたが、全てアナログでした。

 そして、過渡期の銘機に繋がります。1977年に発売されたST-A7B。158,000円。(大卒初任給101,000円) 

また、手が届きにくい価格帯に。前出のST-5950の煮詰められたアナログ回路を更に進化させた上に、デジタル時計でも使われる水晶振動子の正確な発振を利用したクリスタルロックシステムを採用し、一部デジタル化して同調ズレを極限まで無くしました。デザイン的にも、アナログ時代のデザインをベースに0.1MHzおきにデジタル表示するという、アナログとデジタルをクロスオーバーさせていました。
 ちなみに、当時高校生だった私は、お小遣いや昼食代として貰ったお金を3年間節約して、高校3年生でやっと本機を手に入れました。レコードプレーヤを買ってレコードを買う代わりに、経済的なエアチェック(FM放送を録音すること)で音楽を楽しみました。

 これでアナログ時代は終わりました。1978年に発売された ST-J88。160,000円 (大卒初任給105,500円)クリスタルロック方式をさらに発展させたDigital Frequency Synthesizer(周波数剛性)方式を採用した完全デジタル。シンセサイザーチューナーなのでオートチューニングや放送局をメモリーできる等、現在のチューナーの原型となる銘機が生まれたのです。

 こよのうに、ST-A7Bは、まさにアナログ時代とデジタル時代の過渡期に生まれたとても興味深い製品でした。

 この過渡期の銘機、ST-A7の写真を表紙につけましたので、ご鑑賞頂ければ幸いです。



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