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第84回 全国都市問題会議 報告

<開催の概要>

 令和4年10月13(木)~14(金)、長崎県長崎市「出島メッセ」において第84回全国都市問題会議が行われました。3年ぶりの都市問題階位の開催です。テーマは「個性を生かして『選ばれる』まちづくり~何度も訪れたい場所になるために~」。主催及び協賛は、全国市長会、後藤・安田記念東京都市研究所、日本都市センター、長崎市(以上主催)、全国市長会館(協賛)。以下、講演及び主報告・一般報告、パネルでジスカッション等の概要を示します。(※当日配布の報告
資料も参考にしました)

<テーマ>
個性を生かして「選ばれる」まちづくり~何度も訪れたい場所になるために~


1日目10月13(木)

<基調講演> 民間主導の地域創世の重要性
講演者:株式会社ジャパネットホールディングス代表取締役社長兼CEO  高田旭人氏

 ジャパネットは36年前に長崎のカメラ店としてスタートした。地域創生に関しては2017年より長崎のプロサッカーチーム「V・ファーレン長崎」の運営を開始。現在、通信販売事業に並ぶ事業の柱として、スポーツ・地域創世事業を掲げている。

 サッカーチームの運営を通じて、スポーツやまちづくりでも、通信販売事業における従来の事業方針、「見つける」「磨く」「伝える」を生かすことを考えるようになった。誰も気づいていない地域の資源を見つけ、それを徹底的に磨き上げ、全国に伝えることで、長崎の活性化に貢献できる。

 長崎を盛り上げるという目指すべきゴールは民間企業の行政も同じだ。行政の役割は皆が公平に恩恵を受けることができる環境づくりを目指すことだ。だが公平性の追求は批判を避けることはできるかもしれないが、本当になすべきことは何かが、ぼやけてしまう可能性にもなる。

 一方、民間企業の役割は「幸福の最大化」である。社会全体における幸せの総量を増やすことがその役割である。また良いと思ったものには自らリスクをとり、最短の意思決定で取り組むことができるのも民間企業の大きな特徴である。公平性に左右されない民間だからこそ、行政にはできない思い切った取組みをする必要がると考える。

 現在、長崎市内に長崎スタジアムシティプロジェクトを推進している。長崎での地域創世の成功モデルを横展開して日本全国の発展へ貢献できることを目指しているが、そこには民間と行政の連携が不可欠である。「公平性」と「幸福の最大化」の両立を図り「地域を活性化させる」という同じゴールを民間と行政とさらには地域住民との連携により長崎をはじめ地域全体の幸福の総量を増やしていきたい。

<主報告> 長崎市の魅力あるまちづくり
報告者:長崎県長崎市長 田上富久 氏

 長崎市は約450年前の開港方国内外の様々な文化を取り入れ、個性的な都市として発展してきた。そして、戦後は核兵器の廃絶と世界恒久平和を訴える国際平和文化都市として様々な交流を受入れ発展してきた。しかし時代が進む中で、観光だけでなくインバウンドやMICE、スポーツや文化、ビジネスなど、長崎を訪れる人々の目的が多様化している。

その様な中で、今一度、まちの価値を見直すことで、人を引き付ける魅力と新しい時代の多様な都市の在り方が見えてくる。①「価値を見つける」、②「価値に気づく」、③「価値を磨く」、④「価値を生み出す」といった視点に基づいてまちづくりの取組みを報告する。

 ①「価値を見つける」と言う視点は、身近にある特別な価値を見る角度を変えることで新たな価値を見出すことである。軍艦島は生活していた人にとっては日常生活の一部だが産業革命の遺産として見直すことで世界遺産となった。

 ②「価値に気づく」では「長崎さるく」が挙げられる。これは旅行のスタイルが団体から個人に移行してきたことに対する対応で、全国の街歩き観光の先駆けとなったものだ。「さるく」とは「ぶらぶら歩く」というという意味であり、まちに散らばる魅力見つけながら歩くもの。住んでいる市民が気づかない地域資源の価値を市民参加による企画やガイドを進めることで、価値があったことに気づき、愛着がわき、シビックプライドの醸成につながっている。

 ③「価値を磨く」取組みとしては景観専門監制度の導入が挙げられる。一般社団法人地域力創造デザインセンターの高尾忠志氏が着任し、職員の景観に対する意識の醸成と公共デザインの指導と管理に携わっている。地域の「部分」と「全体」の関係性の配慮や、場所の歴史を踏まえた考え方、市民との協働等職員だけでは気づきにくい視点からまちづくりを進めている。

 ④「価値を生み出す」では(株)ジャパネットホールディングスとの「長崎スタジアムシティプロジェクト官民一体となった取り組みにより交流人口の増加や雇用を生み出すことで市の課題解決にもつながる。地域の課題を発想の転換で資源としてとらえ直した事例として「さかのうえん」がある。斜面地の老朽空き家跡地を農園として活用する取組みであり、若者を中心に多世代の交流が生まれ地域の活性化につながっている。

 地域にある価値に気づくためには「交流」が欠かせない。よそから訪れる人、若い人である「風の人」が感じることが、とその土地に暮らす「土の人」との交流の中で価値が見つかり、価値が磨かれ持続可能な地域社会の構築につながっていく。

<一般報告> 地域との新しいかかわり方・関係人口
報告者:鳥取大学地域政策学部准教授 田中輝美氏

 関係人口とは、短期間の交流や観光という関わり方ではなく、また長期間暮らし続ける定住という関わり方でもない。その間にある新しい地域との関わり方であり、この新しいかかわり方は、若い世代との相性も良い。

 若い世代が関係人口を生み出している。その取り組みの一例として鳥取市用瀬町の体験型民泊施設とコミュニティスペース「体験と民泊 もちがせ週末住人の家」がある。週末住民は、週末だけその地域で暮らすライフスタイルで関係人口の在り方の一つである。イベントへの参加、手書きマップ作りなど地元の住民との活動が行われている。さらには空き家を活用し総務省が進める「ふるさとワーキングホリデー」の受け入れも始まっている。そこでは、地元住民に交じって地域・集落の年中行事などに参加する仕組みだけではなく、希望に合わせて地域の一員として得意な事や好きなことを活かしたイベントを企画実施している。

 こうした取り組み成功させるには①名前が覚えられる規模で実施、②お客様ではなく準備から片づけ、打ち上げまで一緒に行う、③地域の変化と住民の思いと若い世代の変化を背景にストーリーを創り新しい潮流を生み出す、といったことが重要だ。移住者や定住者の奪い合い合戦ではなく、旅と移住の間ぐらいが丁度よく、そのための多様なかかわり方ができる仕組みをつくることが結果的に「選ばれるまち」につながる。

<一般報告> ビジョンを生かしたまちづくり~「選ばれる山形市」を目指して~
報告者:山形県山形市長 佐藤孝弘氏

 山形市は選ばれる都市として、「健康医療先進都市」と「文化創造都市」の2つのビジョンを掲げ積極的に施策展開を行っている。ビジョンと具体的施策のリンクに徹底的にこだわっている。

 市内には総合病院が多く、人口一人当たりの診療所数も多い。また次世代型重粒子線がん治療も山形大学で行われており、「医療」と「健康」に強みをもっている。また、食事(S)、運動(U)、休養(K)、社会(S)、禁煙・受動喫煙防止(K)に留意する「SUKSK(スクスク)生活」を推進している。

 その中で、山形市は「ウォーカブルなまちづくり」に力を入れており、令和2年3月に「ウォーカブル推進都市」に加わった。居心地がよく歩きたくなる街づくりをすれば健康増進に加えて街の賑わいにつながる。脱・クルマ社会を実現し日常の運動機会を増やすことが重要だ。この取り組みを後押しするのが「健康ポイント事業SUKSK」だ。スマートフォンアプリを活用し、歩数によって「健康ポイントがたまり」抽選で山形県の特産品が当たる仕組みを構築した。

 また、脱・クルマ社会を進めるには公共交通の再生も重要な課題である。歩くことを補完する公共交通の充実をまちづくりの中心に据えていくことも重要だ。誰もが快適に移動できる環境の実現を目指し、公共交通ネットワークの構築や乗換場所となる結節点の整備に取り組んでいる。

 もう一つのビジョンである「文化創造都市」に関して、山形国際ドキュメンタリー映画祭は30年以上前に市民の手づくりによる映画祭として誕生し、ドキュメンタリー映画祭のなかでは世界で確固たる地位を築き上げている。この「文化創造都市」の概念を広く市民と供するために「山形文化創造都市推進条例」を制定し令和4年4月から施行している。さらには令和4年9月1日には文化創造都市の拠点として「たまがたクリエイティブシティーセンターQ1(キューイチ)」がオープンした。これは、山形市立第一小学校の旧校舎をリノベーションし再活用するもの。

 まちづくりの共通言語としてビジョンを掲げ具体化する事業を展開していくことで市民と企業がその方向性に合致した取り組みを始め、全体としての街の個性がより濃くなる。市長と市の幹部が30地区に分かれ市民との市政懇談会、経済団体会議を行っている。また職員自身がしっかり政策を認識することも重要であり延1500人の研修を年に4回に分けて行っている。引き続き2大ビジョンに基づいた発信を行い「選ばれるまち」としてブランド力の向上と持続可能なまちづくりを進めていく。

<一般報告> 「交流の産業化」を支える景観のまちづくり~長崎市景観専門監の取組み~
報告者:一般社団法人地域力創造センター代表理事 高尾忠志氏

 長崎市は全国でもトップクラスの勢いで人口減少が進んでいる。その中で「100年に一度のまちづくり」と呼ばれる大規模な事業により、まちを大きく更新する時期を迎えている。一つ一つの事業の質とこれを高める一つ一つの協議、そこにかかわる一人一人の働きが丁寧に積み重なっていくようコーディネートすることが景観専門監の役割である。

 景観専門監のミッションは「①長崎市が行う公共事業のデザインと管理」「②長崎市職員の育成」であり各事業の現場におけるOJTによりミッションを進める。

 現代において地域の価値を高める取り組みや社会的な支持を得るためには、住む人や訪れる人一人一人の「高次の欲求」を満たすことが重要であり、一つ一つの事業や取組においてユーザーの目線に徹したパブリックデザインが必要なのである。

 景観専門監として9年間、100を超える事業を監修してきた中で「地域の価値創造を目指す行政組織」が乗り越えるべき課題は次の3点だ。

 一つ目は、事業の「縦割り」に関すること。担当者や関係者は与えられた範囲内において目的達成のために力を尽くすが、「個々の事業目的」の最大化や最適化が積み重なっても全体としてよいまちにならない。街を相対的に意識して個々の事業を検討するアプローチが求められており、そのための「デザイン監修」や「事業調整」を行う主体が「事業の現場」に必要である。

 二つ目は、「時間」に関すること。事業の検討は段階が進むにつれて担当部署も代わっていく。また担当者も人事異動によって替わる。事業のビジョン作成から各事業の現場施工におけるデザインの調整まで一貫して関わっているのは景観専門監だけである。同じ事業予算によってエリアの価値を最大限にするため非常に重要な点であり、ビジョンを念頭に置いて現場での微調整を重ねる「地道なデザイン調整」が全体としての質の向上に大きく貢献する。

 三つめは、「人材」に関することである。職員一人一人の日々の仕事の積み重ねがまちの未来を変えていく。しかしながら、一方で職員は、限られた予算、補助金による縛り、議会や庁内に対する説明責任など統制力の高い環境にあり往々にして価値を想像し、創造する意識が欠如している。景観専門監はこうした状況に対して、職員の日々の業務に伴奏する「家庭教師」のような存在である。各事業の検討プロセスにおいて定期的に環境専門監協議会を開催し、担当者の検討案に対して景観専門監が「問い」を投げかけ、担当職員がより良い解を見つけ出すプロセスを生み出す「デザインディレクション」を行っている。

 「小さな目的」の達成を積み重ねても「大きな目的」が達成されない時代であり。個々に作って合わせたものはビジョンではない。縦割りに中で分野の境界を乗り越え、ビジョンをもって仕事に取組み人材が必要とされており、自治体職員はそのハブを担う重要な存在であり、これからの自治体組織の要となる。職員養成という「人的資本」人のつながりという「社会関係資本」に投資する自治体戦略としても「環境専門監」は非常に意義深い仕組みであると感じている。

※参考資料 長崎市HPより
景観専門監レポート

2日目10月14(金)

<パネルディスカッション>

①「選ばれる」まちづくりに向けた都市自治体のアプローチ
コーディネーター 東京都立大学法学部教授 大杉覚氏

 まちづくりとは「それぞれの地域で醸成されてきた、根っこにある地域価値を再確認しつつ、そこを起点にして、これからの未来図を地域で思い描き、その実現を試みようとする価値実現のプロセス」と定式化して考えることができる。「選ばれる」まちづくりを考える際に、この「根っこにある地域価値」は、そこに暮らす人々の日常を支え、暮らしに欠かせない大切なもの」を支える価値のことである。地域価値は根っこにあるのだが、その地域の暮らしぶりや地域資源のありようと相互に影響し合ってきた関係にある。

 選ばれるまちづくりのへのアプローチとしては、「A観光立地型アプローチ(観光資源を目玉に不特定多数の観光客を集客することに狙いをおいて発展してきた型)」、「B観光政策型アプローチ(観光ビジネスを中心とした活性化や雇用機会の創出など経済的な発展を期待し選ばれるための政策的意図を明確にして戦略を打ち出そうとする型)」、「Cプラスワン拠点型アプローチ(観光とは切り離された日常的な地域で営まれる暮らしに着目して選ばれるありかたを重視した型)」、「D移住・定住型アプローチ(移住・定住して当地の地域の住民として定着する型)」「E価値実現型アプローチ(住民以外の主体がリピーター的に関わりをもったり、若者が主体となるまちづくりの型)」などに整理することができる。

 一回限りの「選ばれる」まちであろうとするだけならばA~Eのいずれかのアプローチに専念すればよいが「選び続けられる」まちづくりはEの「価値実現型」を規定に据えつつ、A~Dを巧みに組み合わせてきたミックスド・ポリシー(混合戦略)を展開する地域である。

②人が人を磨き、輝く人が人を呼ぶ~「雲仙人プロジェクト」の試み~
ゆとり研究所所長 野口智子氏

 地域の活性化を目的に3年間雲仙の人びとと関わる中で、交流人口、関係人口という前に住んで言うる人同士が深く知り合って、お互いを尊重することが大事だ。現在、人は妙に分断されている。年齢職業、性別、商工会、自治会等同じメンバーではない、既存の団体などとは関係なく、人が集まり語る場を創ろうという思いで「雲仙人」プロジェクトを立ち上げた。その土地に住む人の人財育成が大切である。サロンを開催し身近な人が先生となって、ゆるく楽しく運営をしている。今では市外の人も参加している。さらにはオンラインでも繋がりが育つことができている。

③ワーケーションの意味の拡張と変異
山梨大学生命環境学部地域社会システム学科教授 田中敦氏

 ワーケーションはとは仕事(work)と休暇(vacation)の造語であり、テレワークの活用などにより、リゾート地や地方など、普段の職場とは異なる場で働きながら休暇取得を行うものである。しかしながら企業のワーケーションの導入に関しては制度を取り入れた場合の効果やメリットが明確でないということで経営層の理解が進ず実際には普及していない。

 観光庁により、ワーケーションは現在、休暇型(福利厚生型)と業務型に分類される。休暇型は有給休暇を利用してリゾートや観光地などでテレワークを行うもの。そして業務型(福利厚生型)は①地域との交流を通じて地域課題の解決策を考える「地域課題解決型」、②普段と場所を変え職場のメンバーとの議論を行う「合宿型」、③サテライトオフィスやシェアハウスでの勤務である「サテライトオフィス型」に分かれる。

 当初、ワーケーションの目的は「旅行需要の平準化と新たな旅のスタイルの促進」であったが、「企業の問題の解決」「地方創生への貢献」などと、より明確化された。ワーケーションの意味が変異してきた中で、どのワーケーションを行政が対象とするか、そして活用できる補助金も含め、ワーケーションの利点を上手に育てていくことが大切になる。

④人は人に会いに行く!~「まち歩き」で見つけた゛まちのつくり方゛~
NPO法人長崎コンプラドール 桐野耕一氏

 2003年長崎市と市民による長崎観光復活をかけたワーキングチームが発足し準備期間を経て2006年に日本初となるまちあるき博覧会「長崎さるく博‘06」が開催された。期間中観光客や市民723万人が「まち歩き」に参加した。低予算で大きな経済効果を生み出したため「長崎さるく博」は日本のまち歩きの手本となった。

 まちを歩くことで自分たちのまちを振り返ることになった。長崎は気づきを与えるまちとなった。そして「まち歩き」は「まちづくり」になった。

⑤人口減少先進地の挑戦~ファンと共に取り組むまちづくり~
岐阜県飛騨市長 都竹淳也氏

 我々は人口減少を不可避な現実として受け止め、それを前提に地域づくりを考えなければならない。そう考えると頼りになるのは、地域外の方々だ。移住はしなくとも、心を寄せ、力を貸してくれる方と交流を深めることが地域の力となる。そうした考えから2007年に「飛騨市ファンクラブ」が成立した。会員数は2022年7月現在で9900人を突破しており、海外在住の方もいる。「飛騨市ファンの集い」は会員の多い東京、大阪、岐阜で開催された。こうした中で会員の中から自主的に飛騨市に来て、ボランティア活動を手伝う者もあらわれた。関係人口の存在に気付いた。そして関係案内所「ヒダスケ」(「飛騨市を助ける」=ヒダスケ)をスタートさせた。ヒダスケでは、手伝ってもらいたい地域の課題をプログラム化してWEB上に掲載し、参加者を募る。

 関係人口は移住しない人が圧倒的に多いこと、きっかけとなる滞在が一度でもあることが重要であること、楽しい自己有用感が感じられる、といった経験が地域に対する愛着度を高めてくれる。人口減少時代のまちづくりのキーワードは「楽しい、うれしい、面白い」だ。

⑥清酒発祥の地・伊丹~酒と文化が薫るまち~
兵庫県伊丹市長 藤原保幸氏

 兵庫県は全国最多の9件の日本遺産が認定されているが、なかでも伊丹市は「清酒発祥の地」として認定されている。2022年4月には市立博物館5施設を統合して「市立伊丹ミュージアム」としてリニューアルオープンした。「酒と文化の薫るまち」を基本テーマとする歴史・文化・芸術の新たな発信拠点である。また11月には隈研吾氏の設計による酒蔵をイメージした市役所新庁舎が開庁する。市民サービスにおけるデジタル化を進め、未来志向の市民サービスを心がける。有村架純さんや田辺聖子さん南野陽子さんなどに伊丹市の大使に就任していただいている。

<所感>

 人口減少が確実に進む中で地域は疲弊しており、各自治体はあらゆる市民サービスに追われるなかで、定住化の促進や交流人口の最大化など資する施策の展開が行われている。しかしそれは地域間競争を不可避なものにしており、だとするならば、今後、各分野において必要とされる広域連携と矛盾する取組みに最終的にはならないだろうか。そう考えると今回のキーワードの一つである「関係人口」という概念とその活用は「選ばれるまち」に必要不可欠なもので、人口減に向かう基礎自治体が求める解決策の一助になると考える。

 「選ばれるまち」は魅力ある街である。関係人口の確保には、まちの魅力が欠かせない。地元の住民が気付かないまちの魅力を「よそ者」が発見し、その魅力は地元住民と地元以外の市民である「よそ者」の協働により磨かれる、というプロセスを確立するためには、地元の市民も、さらには職員、議員も広い視野と寛大さが必要だろう。広い視野を獲得するには経験と絶え間ない研鑽が必要であるが、その蓄積となると、はなかなか難しい。そう考えると景観専門監制度を設けた長崎市の取組みは大変素晴らしいものと言える。

 トータルなまちづくりが行われない結果、ちぐはぐなまちとなっている例は全国に多くあると感じる。長く市民が魅力を感じ、市外の人びとにも選ばれるまちづくりにつながるよう、今回の都市問題会議で新たに学んだ概念や制度を参考に研究を重ね、今後の政策提案に活かしていきたい。


当日配布の報告資料

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