66号線

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諸事情により更新ペースをセーブしています。 2022年から在英ジャーナリストになりました。朝日新聞や関連WEBサイトの取材記者、編集者としての勤務を経て独立しました。たまに小説も書きます。ポートフォリオ用Twitterアカウント→66号線(@The_Route66)

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  • ポップミュージック マガジン🎸🎶

    ポップミュージックを食べて大きくなった66号線が愛する音楽、特にロックンロールについて語り尽くします。

  • 66号線のイギリス記録文書🇬🇧

    イギリス(主にマンチェスター)での体験談や、そこで得たさまざまな気づきについて記録したいと思います🇬🇧

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    自由なテーマで書きました。 有益な情報または重大な秘密が含まれるため設定価格をやや高めにしています。

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    好きな本や影響を受けた本について書きました。 ©️2022 Peanuts Worldwide LLC

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ブルーローズの花言葉 第一章

プロローグ 世界中の人々が憧れるロックスターなのに、ステージの上ではいくつになっても少年に見える。不思議な人だ。鳶色の瞳、茶色い髪の毛、くるくると変わる表情。彼の長い睫毛が揺れるたび、私の心も跳ね上がりそうになる。  あなたはこんなに素敵なのに、どうして、私なんかを好きになってくれたんだろう。    これは、彼と彼の親友がポップミュージックで世界を変えようとした、始まりのストーリー。 ビートルズと雨の日青いバラ一本目 イワンの話 一  ブルーローズ。  それは自然に咲く

    • ブルーローズの花言葉 第七章

      青いバラ七十三本目 ジョシュの話 二十二 「サリー。もう一度会えたら、今度こそきちんと伝えたかったんだ。俺と結婚してくれ。ずっと一緒にいよう」  その言葉を聞ける日が来ることを、心のどこかで俺はずっと待ってた気がするんだ。 復活の時青いバラ七十四本目 ジョシュの話 二十三  俺たちが魔法のバラの種でやろうとした「ローゼズ作戦」は、それまでよく知られてなかった時空やパラレルワールド、世界線の存在が世間に認知される先駆的な事例として世界的なニュースとなり、「ブルーローゼ

      • ブルーローズの花言葉 第六章

        元ブルーローゼズのイワン、バラを売る青いバラ六十六本目 イワンの話 二十一  ブルーローゼズが事実上の解散を迎えて、もう数年が経つという頃だった。  大切な親友も、大好きだった恋人も一緒くたに失って、俺はもうほとんど生きる希望をなくしてた。人前に出る気力もすっかりなかったよ。俺はサリーと暮らしていたアパートを引き払い、両親の住む実家に戻った。マンチェスター郊外にあるこの一軒家は、俺が「ブルーローゼズ」の印税で両親と妹のオフィーリアにプレゼントしたものだ。まぁ、ここに俺も身

        • ブルーローズの花言葉 第五章

          青いバラ五十六本目 サリーの話 六  雨の中でイワンに抱きしめられながら、私は、ずっとこうなったらいいなって思ってたことに気がついた。さっきまでマシューと喧嘩してて、裏切られたことについてあんなに傷ついてたのに、私の心はもうイワンを求めていた。 「もう大丈夫だよ」  ってイワンが言えば、本当にそうだと思える。きっと何もかもがうまくいく。幸福な予感で心が満たされた。  彼の腕の中でずっと生きられたら、どんなに素敵なことだろう。今でもふと、そう思うわ。 ブルーローゼズ、散る

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        ブルーローズの花言葉 第一章

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          ブルーローズの花言葉 第四章

          黄金期の始まり青いバラ四十四本目 マックスの話 一  ガークが慌てて俺のところにやってきて、 「マックス、大変だよ、イワンが来てる! 僕たちやられちゃうよ!!」  と叫ぶから、なんだろうと思った。俺とイワンはスクーターボーイズによるアパート襲撃以来、過去を綺麗さっぱり水に流せて仲良しだったからね。俺は読んでたガイドブックから目を離して考えた。殴られる理由なんか、あいつの家でパーティーした時に、酔った勢いで俺のベースで壁に穴を開けたくらいしか思いつかなかった。 「今すぐ逃げ

          ブルーローズの花言葉 第四章

          ブルーローズの花言葉 第三章

          それぞれの旅立ち青いバラ二十六本目 イワンの話 十  「ブルーローゼズ」の初舞台は、俺たちの学校のイベントだったんだ。  「パンクス派・モッズ派連合」と「オールドロック軍団」による不毛な争いも、俺とアダムが和解したことで、だんだんと収束していった。俺たちは好きな音楽に思いっきり浸って、そこから得たインスピレーションを共有し合う有意義な時間を得たんだ。    最終試験を終えて暇を持て余していた俺のところへ、ギターを背負ったジョシュがやってきた。あいつは、俺にとびきりのサプラ

          ブルーローズの花言葉 第三章

          ブルーローズの花言葉 第二章

          「パンクス派・モッズ派連合」と「オールドロック軍団」青いバラ十三本目 イワンの話 五  憧れのヒーロー、ブルース・リーの影響で放課後は毎日のように自転車で空手の道場に通い、「砂場の出会い」から仲良くなったジョシュとカンフーアクションものとアニメーションを中心とした映画について語り合う。砂場を取り合って一戦を交えた近所の悪ガキ連中とも仲良くなって、俺たちの子供時代はそんな感じでごく普通に過ぎて行った。  順調にわんぱくな少年として成長して、中学に上がると、俺は再び人生を変え

          ブルーローズの花言葉 第二章

          モーニンググローリー(仮) 第3部

          日本・東京 1年後第26話  新たにひとつ歳を取った俺たちが冬の東京にいた。  東京の冬は思っていたよりも底冷えする。長く外に立っていれば心の芯から凍てついて、いつかは身体ごと倒れそうな気がした。  相変わらず俺は英会話教室とパソコン教室の講師の二足の草鞋を履き続けていた。ヨリコとの関係も続いている。彼女のつてを頼りに、生き別れになった俺の母親と再会を果たしてからまもなく、俺は心を病んだ。週一で通院し、処方された薬でなんとか心の均衡を保っている。容貌のせいなのか、東京で暮

          モーニンググローリー(仮) 第3部

          モーニンググローリー(仮) 第2部

          日本・東京第9話  渋谷はうんざりするくらい人ごみに溢れている。  話には聞いていたが、俺の予想をはるかに超越したレベルだと思った。犬の銅像がある有名な待ち合わせスポットあたりなんか、通行人にぶつからないで歩くのすら難しい。  仕事や学校帰りの夕方五時。プラットフォーム内には帰路につく人々でごった返している。今日も何とか事なきを得て一日が無事に終わった。乗客が発する雑踏と熱気を肌で感じながら乗り換えるため改札口を目指す。  俺は三十五年間過ごしたロンドンを離れ、東京に行く

          モーニンググローリー(仮) 第2部

          モーニンググローリー(仮) 第1部

          イギリス・ロンドン第1話  ロンドンの朝に雨はよく似合うと思う。  目覚まし時計の音がけたたましく月曜日の到来を告げる。右腕だけを伸ばし、いつものように止めた。あくびをしてから、朝の支度にとりかかる。日本にいるはずの俺の母親という女性が、窓際のフォトスタンドの中から微笑みかけている。  今日も明日も明後日も、昨日と何も変わらない日が始まる。この先の俺の人生はずっと同じことの繰り返しだと思うと、みぞうちがずくんと重くなる。リモコンひと押しで、売れないコメディアンが料理に挑戦

          モーニンググローリー(仮) 第1部

          猫になりたい 6 雪が降る街

           クリスマスイブ。  僕の家で彼女と、かなり久しぶりのパーティーをした。  彼女が来る前に宅配のピザが届いて、四種類の味が一枚になっているピザだからそれぞれ一切れつまみ食いした。彼女がやってきて蓋をぱかっと開けたら驚かそうと思ったのだ。案の定口を大きく開けて、フライングしたでしょ、と苦笑していた。最初からこのデザインだったんだよ、と言って二人で笑い合った。奮発して買ったボジョレーヌーヴォーを開けて、グラスで乾杯した。 「去年のこと思い出した?」  彼女が失踪したわけを改めて

          猫になりたい 6 雪が降る街

          猫になりたい 5 ロードムービー

           僕の恋人が失踪して、今日で一年目。  季節はあの時と同じ春にまた戻った。僕は花粉で鼻の奥がむずむずする。そして失踪と同時に謎の三毛猫と、大家さんに秘密の共同生活を始めて一年が経過したことにもなる。  この一年間僕は雨のなかを爆走したり、深夜の街を爆走したりと走ってばかりいたような気がする。ミケはミケで男のケツに噛り付いたり、食あたりを起こして倒れたりと、やはり僕といることでろくでもない経験ばかりが募ったように思える。  大学のゼミ連中も、はじめは何の相談も無く恋人に去られ

          猫になりたい 5 ロードムービー

          猫になりたい 4 夜を駆ける

           恋人が失踪して、もうすぐ一年。  僕は寒い東京の冬を迎えた。同時に、ぎらぎらした中性脂肪まで一緒くたに迎え入れてしまったようだ。ことの起こりは先週。テレビで某健康番組を見ていたらメタボリック症候群についてコメンテイターが熱く語っていたのだ。彼女が失踪してすぐに現れた三毛猫のミケとそれを僕は食い入るようにして観ていた。  腹の周りが八十八センチ以上ある人はメタボリック症候群である可能性が高いとそのコメンテイターは神妙な顔つきで言った。僕とミケは同時に僕の腹部に目をやる。明ら

          猫になりたい 4 夜を駆ける

          猫になりたい 3 セブンスター

           恋人が失踪して、六ヶ月が経った。  大学では一応休学扱いとし、彼女の御両親が出した捜索届けは、今のところ役に立っていない。そんな状況下でとうの彼氏の僕はと言うと、入れ違いのように現れた謎の三毛猫と大家さんに内緒の共同生活を始めた。  同じゼミの男連中は僕のことを女に去られた悲しみから動物愛に逃げた哀れな男だと勘違いし、同情から合コンに無理矢理呼んだりした。しかしそれもミケのために抜け出したから無駄に終わった。自分ではよく分からないが、彼らが言うことはあながち間違ってはいな

          猫になりたい 3 セブンスター

          猫になりたい 2 かけだす男

           彼女が突然消えて、もう三ヶ月が過ぎた。  今のところ、何も連絡はこない。かわりに、と言ってはなんだが、突如現れた謎の三毛猫と暮らし始めて僕は夏を予感させるうっとうしい梅雨を迎えた。  動物厳禁のこのマンションに一日じゅう閉じこめておくのはミケが可哀相だから、大学の講義が早く終わる日などは外に出してやることにした。不思議とこの猫は僕が帰ってくる時刻にはきちんと駐車場の隅に隠れて待っている。まるで忠犬ハチ公のようなので名前をハチに変えようかとも思ったが、そう呼んでも反応しない

          猫になりたい 2 かけだす男

          猫になりたい 1 彼が泣く

          彼女が消えた。  本当になんの前触れもなく、消えてしまった。僕は成す術も無くただその事実の前で呆然と立ちすくんだ。恋人の僕にさえも何も言わずに失踪した彼女の意図は分からない。だけど僕は不思議と冷静だった。涙すら出なかった。  外はいつになく寒くて、冷たい雨が降っている。気まぐれな空の下で僕は息を吸って、吐き出すのを繰り返した。鼻の中をつんと冷たい空気が刺激する。なんということのないそれすらも今の僕には確かに自分が生きていることを思い知らせる。雨の音が傘の上で不思議なリズムを

          猫になりたい 1 彼が泣く