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【作品紹介】『ベクトル』 能面×時間×テクノロジーの現代アート作品 

能面を用いた現代アート作品第一号です。
「能面×時間×テクノロジー」がテーマです。
作品内の映像は、東京国際工科専門職大学さんにコラボしていただきました。

タイトル: 『ベクトル ―Vector―』
2022年作 木材・水性顔料・合成ゴム・CG映像

使用能面:
(中央)「逆髪」 2019年作
(左)「逆髪」 2019年作
(上)「老女小町」 2022年作

映像共同制作:
東京国際工科専門職大学情報工学科
監修:鈴木雅実教授  
制作実行:栁谷諒太

撮影:中野達也


万物は変化し続ける。
このエントロピーの増大の法則に抵抗し不変を手に入れようと、人類はテクノロジーを進化させてきた。

エントロピーの増大の法則は日本の「諸行無常」を彷彿とさせるが、諸行無常はエントロピーの増大を受け入れ、さらに、そこに哀愁を感じながらも慈しむ精神性がある。このようなエントロピーの増大という自然法則の先にある諸行無常を内包するのが能面である。

中央に配置された若い女の能面から出る3つの矢印は、時間経過のベクトル、すなわちエントロピーの増大を表す。3つの矢印の先の能面は、時間経過による生物としての老化、物質としての劣化、テクノロジのーの進化を表す。


起点となる若い女の面。
人間として数十年の時間経過による「老化」を表す。
能面として数百年の時間経過による「劣化」を表す。


テクノロジーの「進化」により、「劣化」「老化」から解放された。
仮想空間にイメージとして構築された能面。


テクノロジーの進化によりイメージとしての能面を構築し保存することは、あたかも不変を手に入れることができたかのように錯覚させる。

しかし、能面は諸行無常を内包する存在であるため、不変を得ることはその精神性を再現しえず、能面としての本質が失われる。
つまり、いかなるテクノロジーを用いても再現しえないということこそ、諸行無常であり、エントロピーの増大なのだ。

いずれにせよ、人類が滅亡し、テクノロジーが消失してしまえば、イメージの能面も存在しえなくなる。
すべては、エントロピーの増大の法則の中の刹那の出来事に過ぎない。



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