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大学の学生さんにいかに興味を持ってもらおうか。知る・見る・触る「能面おもしろ講座」

都内の大学のゼミで学生さん向けにゲスト講師として呼んでいただくことになった時に、まず真っ先に考えたのが、どうしたら能面に興味を持って面白く聞いてもらえるか、ということ。

能面って、若い人にしてみたらそんなに興味ないかもしれない・・・。

お話をくださった教授は、日本の伝統で、そこに歴史があり、文化があり、教養として触れておくのはとてもいい機会だ、そこにものづくりの感性も入っていて・・・、と色々期待してくださったに違いない。

せっかく皆さん時間を取って集まってくれるわけなので、何かしら発見があったり、感じることがあって、何か得るものがあってほしい。
それに、能面に興味をもってもらえることは、能面にたずさわる者としてそれだけで嬉しいなぁと思うのです。

そんなわけで、まずはタイトルを「能面おもしろ講座」にしてみました。
堅苦しくなく、面白い切り口でお話しますよ、という意思表明から。

安易なタイトルと思われる方もいるかもしれませんが、そこはご容赦を。
「おもしろい!」と思ってもらえたら、それが一番!
まずは、興味や探求への第一歩です。

それに、「おもしろい」も「面」にかかった言葉なんですよ。
我々は能面のことを「面」と書いて「おもて」と呼びます。
「おもて」とは「顔」のことですが、「おもしろい=面白い」は笑って顔がぱっと白く輝くように明るくなった様子を言っているんですって。


そして、やっぱり、知ってもらう。見てもらう。触ってもらう。

知らないものには興味を持ちようがないですよね。私自身も元々能面についてあまり知らなかったのですが、本当に知れば知るほど面白くなっていっているという実感も交えて、まずは知るということ。
クイズ形式にしたりして、想像力も刺激しながら、一方的に聞くだけじゃなく参加もしてもらいましょう。


そして、実際に見る、触る、という体験をしてもらう。
百聞は一見に如かず、です。
実物を前にしたら、若い子は興味ないかも、という私の心配をよそに、皆さん興味津々で見てくれました。

「触っても大丈夫ですよ」と言っても、皆さんなかなか手を出さない。
「ホントに触っていいの?」とおっかなびっくり、という感じで、恐る恐る持ち上げてみて「軽い!」とか、裏をひっくり返して見たりとか。

そして、面付け体験も。


「ほとんど何も見えない」
「鼻の穴もちゃんと開いてるんですね」と意外なところに注目したり、
「お歯黒だ!」とビックリしたり。

「能面の目の穴と自分の目の位置がずれていたりしてあまりよく見えないので、能楽師さんは鼻の穴から足元を見たりするそうですよ」
「当時の風習で成人の証として歯を黒く染めていたので、能面もそれに倣ってお歯黒にしてあるのかもしれないですね」

聞いただけでは忘れてしまうことも、見たり触ったりしたことで、自分自身の体験として記憶されたんじゃないかな、と思います。

そして、私自身にとっても、こういった機会がとてもいい積み重ねになっています。
普段、面打ちをやっている中で感じたことを改めて第三者に語ったり、わかってもらおうと話としてまとめることが、いいフィードバックになっています。
回を重ねるうちに、頭が整理され、自分の中にも一つ一つの事象がスッと沁みてきている気がします。

私もこのような機会から、見たり、知れたり、毎回得るものがたくさんあって、本当に得難く、有難いことです。
貴重な経験をありがとうございます。
このような機会はこれからも大切にしていきたいものです。


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