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現在の将棋界を見て思う、運要素の介在が少ないゲームの残酷さ

0.はじめに

2月29日、「将棋界の1番長い日」と呼ばれる日が始まる。
A級順位戦最終局の一斉対局が行われる日である。
筆者は2年程前から時折タイトル戦の評価値放送やYoutube中継などを観ている、一応所謂「観る将」をやっているのだが、その中で俗に言う、「4強時代」から「藤井一強時代」への移り変わりを見て行く中で、ふと思ったことがある。
それは、「試合中に運要素が介入することが乏しいゲームは、時として残酷な現実をプレイヤーに突きつける」ということである。
ここからは、TCG絡みの具体的な例を出してTCGにおける運要素について考え、TCGプレイヤーから嫌われることも多い「運ゲー」についても考えたいと思う。

1.そもそもTCGにおける運要素とは

筆者が考える、TCGの試合に介入する運要素は以下の通りである。

・引き運
・捲り運
・対面運
・盾運
(シールド要素があり、さらにシールドから手札にカードを加えた時にそのカードを場合によってはコストを踏み倒して使える要素があるカードゲームに限る)
・先手・後手の運(負け先要素が導入されているBO3の2戦目以降の試合の際は除く)
それぞれ見ていく。

・引き運

土地事故、ブースト欠損などの手札事故が起きている状況やトップ解決などに関係する運要素。
ゲームによってはサーチカードやマリガンシステムがあるため、動き次第である程度緩和することは可能。
所謂「再現性」に関連する項目であり、TCGにおいてはデッキ構築において評価される要素の一つに
「再現性が高い」=毎回安定して強い動きができ、それが引き運に左右され辛い
がある。
ドローソースやサーチカードを用いてこの運要素の介入を減らすこともできるか。

・捲り運

ここでは筆者がプレイしているゲームである、デュエプレのカードやデッキタイプを具体例に出して示す。
俗に言う、「ガチャデッキ」や「連ドラ」というデッキタイプに関連する運である。

ガチャカードの代表格


連ドラの主

要は、
山札上から狙ったカードを捲れなかった/状況を変えるカードを捲られた 
と言った状況に絡む運である。
おそらく、TCGプレイヤーが「運ゲー」と嫌っていることの多くはこの運要素であると予想される。
一部のカードはそのまま山上を捲るため、デッキトップに何かしら捲りたいカードを仕込めるカードを事前に使えばそれは運ではなくなる(例:デュエマにおけるハムカツドラグナー)が、ホーガンブラスターのように事前にシャッフルしてから捲る場合は純粋に運要素が強いと見ていいだろう。

・対面運

これは試合よりかは大会などでよく介入する運要素であると考えられる。
TCGである以上、どうしてもデッキ相性は存在し、ほとんどのデッキには何かしらの不利対面が存在する(稀に不利対面が存在しないデッキも無くはないが、そういったデッキは強すぎて早々に規制を受けてすぐに姿を消すか有利対面も存在しないため環境での影が薄くなるのがほとんどである)。
そのため、大会で不利対面に当たると「対面運が悪い」と言える。
それでも乗り越えれる時は乗り越えれるが...

・盾運

ここでも、わかりやすくするためにデュエプレのカードを例に用いる。
特にビートデッキを使っている時に割とありがちなことで、
「ラス盾クロックで負けた」
が代表例だろうか。

踏ませれれば大体ターンが返ってくる最強クラスの受け

他にも、
「4トリされて負けた」だとか「ワンパン天門で負けた」だとか、要は初期状態の盾から踏んではいけないトリガーを踏んだ時に「盾運」を痛感することは多いだろう。
また、「ノートリ貫通されて負けた」という現象も盾運に関するものとして考えていいだろう。
「キーパーツが盾落ちして負けた」のも盾運と呼べるのかもしれない。
一応この運要素については、ある程度防ぐことが可能である。
どう言うことかと言うと、要はシールド焼却系のカードを使うか、そもそもロックをかけてトリガー効果を使えなくすればいいためである。

ボルメテウスのシールド焼却の系譜
クリーチャーロックと言えばこれ

盾落ち事故に関しても、盾回収札を使えばいい。

・先手・後手の運(じゃんけん運)

唯一将棋にも多少通じるところがある運。
基本的に今のTCGやプロ同士での将棋は先手優位であり(一部のデッキタイプやTCGは異なるが)、先攻を取った方が有利になることが多い。
先攻勝率が高いデッキが環境トップになると「金のかかるじゃんけん」と揶揄されるようなものである。
また、複数の試合を連続でこなすランクマッチがあるDCGだと、先手後手の偏りが印象に残ることは多い。

以上が、筆者が考えるTCGにおける基本的な運要素である。

2.将棋における「運要素の少なさ」と、見続けて思ったある種の「残酷さ」

ここからは将棋の話になる。
筆者は確か記憶が定かであれば、2021年度の「4強時代」から今に至るまでタイトル棋戦や一般棋戦の中継や評価値放送などを定期的に見ている。
その中で思ったのは、「運要素が介在しないゲームは、それはそれで残酷である」ということである。
この思考に至った理由について説明する。
まず、現状の将棋界の状況について簡潔に説明すると、「藤井聡太竜王名人一強」と言っても過言ではない状況である。
現に、今年タイトル戦八冠を達成して以来タイトル戦では無敗であり、一般棋戦でも4つあるうちの現在決勝戦が既に行われている3つの棋戦全てで決勝戦に進出しており、そのうちのJT杯では優勝している。
まだ決勝が行われていないNHK杯でもベスト4入りを決めている。
一般棋戦に関しては去年は4つの一般棋戦(JT杯、銀河戦、朝日杯、NHK杯)で優勝するグランドスラムを達成しており、タイトル戦でも一般棋戦でもその強さを発揮している。
ここではその強さの理由の詳細については割愛するが、簡潔に説明すると
・他の棋士に比べて終盤力や読みの精度と深さ、研究量が桁違い
・単に最善手を連打できるだけでなく、あえてAI評価値が下がるが人間的にその先がわかり辛い手を打って相手を間違えさせることもできる
である。
この話は本筋に関係ないのでこれ以上の言及は省くが、要は「他の棋士と比較しても明確に強い」と覚えてくれればいい。
そして、将棋においては基本的に先手・後手とプレイヤーの実力や研究量以外は全て平等である。
このような運要素の介入が少ないゲームで、明確に突出したプレイヤーが現れるとどうなるか。
そう、「そのプレイヤーが常に最上位にいて、他のプレイヤーが中々そのプレイヤーに勝てず、結果としてそのプレイヤーの一強状態になる」のである。
藤井聡太竜王名人による八冠独占後、竜王戦と王将戦で(藤井聡太竜王名人にとって2日制タイトル戦が相性がいいことを加味しても)、棋士レーティング最上位クラスの棋士を相手にしながら両方4-0しており、一般棋戦でも3回中優勝1回準優勝2回をしていることからも、その圧倒的な強さは窺える。
記載している通り、早指し戦である一般棋戦であれば1回勝つこと自体はなんとかできはするが、タイトル戦番勝負においては藤井聡太竜王名人相手に先に3/4勝するのは、現状無理難題になりつつあるのが藤井聡太竜王名人のタイトル戦戦績を見て窺える(フルセットに持ち込まれたのがたった1回のみのタイトル戦番勝負20連勝)。
以上のことから、現状の将棋界は藤井聡太竜王名人による一強状態と言っても過言ではないと思われる。
これらからわかるように、運要素の介入が少ないかつ試合に関わるほとんどの要素が平等なゲームは強力なプレイヤーがより勝ちやすくなるのである。
すると、何が起こるか。
そう、良くも悪くも、プレイヤーの実力がより明確に出るゲームになる。
これをどう捉えるかは読者の方々に任せるが、少なくとも自分は、「否定はしないし、それはそれで良いゲームだが、少し残酷だな」と少し思ってしまった。

3.終わりに

今回のnoteは以上となります。
筆者がふと思ったことを書き並べただけなので、既にこの辺を考えて語っている先駆者の方々がいらっしゃったら申し訳ありません。
今回は色々と意見が分かれそうな話題でしたが、如何だったでしょうか。
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それでは、また次のnoteでお会いしましょう!



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