【読書】ナシーム・ニコラス・タレブ「身銭を切れ」

「身銭を切れ」という本を読んだ。過激であった。先人たちの知恵に対する敬意があまり見えなかった。巨人の肩に乗ることと既得権益に甘んじないことは両立すると思う。好き嫌いがはっきり分かれる本であると思った。

興味深いのは2点。1つは多数決ならぬ少数決。その名の通り少数派の意見が採用されるという魔法のことをいう。10人の友人グループがあって、1人は絶対に海に行きたい、9人はどちらかと言えば山に行きたいが正直どちらでも良い、という状況において、多数決をとれば山に行くという意思決定がなされる。山に行く場合は、海に行く1人が参加を取り下げてしまう。それに対して、海に行くという意思決定がなされれば、山派の人もそれに従って海に行く。結局、みんなでどこかに行くのであれば、少数派の意見に沿って海に行くより他にないという。強硬な少数派が全体の意思決定に影響を与えるという主張は新鮮で面白かった。

もう1つは確率論について。人間には0.1%のような小さな確率を過大に認知してしまうというバイアスがある。著者はそれをバイアスではないという。1000人中の1人と考えるとかなり小さな確率に見えるが、1000回チャレンジすれば途中で必ず1回はそれに遭遇するのだから、何度もチャレンジする人にとってはそれに遭遇せずにいられる確率は0%に近く、逆に言うと、0.1%であってもかなり高い確率でそれに遭遇すると考えられる。

かなり挑発的な記述であったが、所々面白かった。

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