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ドラマの照明ってどんな感じ?②撮影が始まるまで

前回の記事でドラマ撮影の照明スタッフ構成について書いた続きとなります。
読んでいない方はぜひこちらの記事からご覧ください。

前回記事でもお伝えしましたが、ドラマ撮影はチームによってやり方が違いますので、あくまで一例としてお楽しみいただければ幸いです。

照明技師について掘り下げる

ドラマや映画、CM、MVなどの照明スタッフの責任者を「照明技師」と呼びます。

テレビの場合はLD(ライティングディレクター)と呼ぶ場合が多いのですが、どちらも同じような意味で照明プランや機材の選定、照明スタッフの人員数の決定、スケジュールの調整など照明部を統括する立場となります。

どちらの場合もスタッフロールでは「照明 〇〇」と書かれている場合が多いですね。

色んな人がいると思いますが、基本的には助手から始めて経験を積んでいって照明技師となります。

こちらも色んなパターンがあると思うのですが、私はいわゆる技術プロダクション会社に所属しています。

一口に映像の照明マンといっても実は仕事のジャンルによって、照明の作り方が全然変わります。
ざっくり大きく分けると

  • テレビ番組系

  • ドラマ・映画系

  • CM・VP・MV系

では撮り方も全く違うので、照明の作り方も変わってきます。

この辺りの詳しい話は脱線してしまうのでここでは割愛しますが、

例えばドラマ・映画系の照明がやりたいと思っても、そちらのジャンルに強い会社でなければいけません。

大手の技術プロダクションになると、テレビのバラエティ班、音楽番組班、ドラマ班、CM・VP班など部署として分かれている場合もあります。

ドラマ・映画の照明専門の会社なども多く、そこからフリーランスになる方もたくさんいます。

CM系などは特にフリーランスの照明さんも多い印象ですね。

私の場合はプロダクション所属でメインはテレビ番組、たまーにドラマという感じです。
会社でメインで入っている局のドラマがあれば担当、あとは応援でたまに呼ばれたらという感じです。

クランクイン(撮影開始)までの照明技師の動き

ではその中でもドラマの場合はどんな事をしているのか。
いろんなパターンがあると思うのですが、うちのロケドラマの場合を一例として書いていきます。

・美打ち

まずドラマを担当することが決まり、台本の初稿をもらったら読み込んでどんな話なのかを把握します。

その後、美打ち(美術打ち合わせ)というものがあり、その時に各部署が集まって顔合わせと打ち合わせをします。

演出部と制作部が事前におこなってある程度決めてきたロケハン資料や、キャストの資料などをもとに、美術的な部分(衣装や小道具など)をメインに全体的なイメージなどの打ち合わせとなります。

照明的に特殊な演出が必要な場合なども、この打ち合わせでイメージを確認します。

例えばナイフで脅されて緊迫したシーンで、ナイフの反射がギラっと顔に欲しい、
空想の別世界として、ピンスポットのような明かりにしたいなどなど…

スタジオセットなどを使用する場合は、こちらでセット図面などの打ち合わせも行います。

この時上から照明を当てたりできるように天井を開けられるようにしてほしい、だったり蛍光灯の配置や数、制御できる系統など照明部の希望と美術部さんの都合や予算などで可能な部分を擦り合わせます。

・ロケハン

演出部、制作部で決めてきた場所へ監督、カメラマン、照明技師などが行って
実際に撮影できそうか、どんなアングルで撮影するかなど確認します。

照明部として見ておく点をざっくり挙げると

  • 地明かりの種類、場所、方向など

  • 撮影する時間の太陽の位置

  • 電源が使用できるか

  • コンセントの場所と使っていそうな電源容量

  • 芝居場の場所と向き

  • ルーズショットのアングル

  • ライトを仕込めそうな場所

  • 間接照明などが欲しければ美術部へ相談

  • 擬似デイ、擬似ナイトならトレペや暗幕などの手配、確認

  • 外でゼネレーター(発電機)など使う場合は使用許可

  • 搬入口、搬入ルート

など…
特に室内での擬似デイ(夜間に昼間のシーンを撮影すること)や、
ナイトオープン(夜に屋外で撮影すること)の場合はしっかりと見ておく必要があります。

ロケハンの時に写真やメモをたくさん残しておき、台本を読んで明かりのイメージを膨らませます。

イメージしていても、実際に当日お芝居を見て変えることももちろんありますが。

・人数やスケジュール、機材などの調整

ロケハンを踏まえて使用する機材の選定やスケジュール、照明部の人数などを決定し、プロデューサーに伝えます。

もちろんここで予算的に厳しいので機材や人数など減らせないかなど相談される事も(よく)ありますが…

まぁその辺りは致し方ない部分ですので、調整して擦り合わせていきます。

また長期ドラマになると撮影しながら、撮影のない合間の日にロケハンや打ち合わせをこなしつつ忙しい日々を送ることになります。

私はあまり経験はありませんが、1時間の連ドラ1クールになるとクランクイン前のロケハンなどの準備を含めるとだいたい4ヶ月、長くて5ヶ月くらいかかっています。

30分の深夜ドラマ1クールでも2ヶ月〜3ヶ月程度かかります。

とはいえ最近は働き方改革の影響もあり、全話通しで担当する訳ではなく話ごとに2、3人で交代しながら回す場合も増えています。

その場合もなんとなくベースとなる明かりの雰囲気は守りつつも、それぞれの技師によって好みや個性が出るので、同じドラマで自分が何話か担当みたいな時は他の話の明かりはかなり気になります。

自分だったらどうしてたかなーとか、うわー大変そーとか思いながら見てますね笑

機材準備、積み込み

機材量などにもよるのですが、うちの場合はだいたい撮影部と録音部が同じハイエース or 2tトラックで、それとは別に照明部のみのハイエース or 2tトラックとなります。

照明部の機材は他のセクションに比べ機材量がどうしても多くなってしまいますので…

とはいえ一昔前に比べるとLED機材の進化でかなり小型化されてきています。

◯Vマウントバッテリー駆動のライトでもかなり光量を稼げるようになっている
○カメラ自体の進化、フルサイズ機などの使用

などからも、現場でゼネ(発電機)やコンセントからケーブルをひっぱって…という頻度がかなり減り、バッテリー駆動のライトが主力なので現場でのスピードもかなり早くなりました。

10年前くらいは毎度毎度ケーブル引き回して、見切れがどうとかルートがどうとかやっていたので…笑

本当にこの10年くらいのLEDやカメラの進化で、現場を取り巻く環境はすごい変化が起きていると思います。

昔は夜なんかはとにかく背景もライトを当てないと真っ暗だったんですが、最近は多少暗くても映っちゃいます。
なんなら明るすぎるから落としたい事なんかもよくあります。

少し話が逸れましたが照明部のハイエースなどに機材を積み込むときも、これまた積み込み方も使用頻度が低いものを奥にして毎回降ろすものは手前にして、いかに積み込み、積み下ろしをスムーズに効率よくできるか考えながら、テトリスのように積み込んでいきます。

そしていざ撮影へ、という感じですね。
とりあえず今回はここまでで、撮影に入るまでの準備の流れをざっくりと書いてみました。

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