見出し画像

勝利の女神:NIKKE 稗史: We love MAIDRAKE!!

めいど!!

『それでも町は廻っている』嵐山 歩鳥


「大変よ!? ドレイクさんがメイドカフェ吹っ飛ばしてメイドカフェに左遷だって!?」
「それは一大事! CEOのとこに行かなくちゃ!」
 ふたりはドレイク専属のデザイナーであり、彼女のためならば何でもするという漆黒の意思を持っていた。
「「支援要求の時間だオラァ!!」」
 ふたりは社長室のドアを勢いよく蹴破ってエントリーすると、流石のシュエンと秘書ニケのリアンも唖然としていた。
「な、なによ一体?」
「ドレイクがメイドカフェに行くって聞いて、是非とも専用ボディの開発をば」
「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ! それでなくとも修繕費請求されてんのに」
 ふたりのうちのひとりがシュエンの耳元で囁く。
「CEO、二月末で退陣してニケになるってバラしますよ? 株価が上がって嬉しいですよね?」
「ななな……」
 シュエンは項垂れて、ふたりの差し出した書類に判をついた。

「よーし、クローンの細胞増殖から始めましょうか!」
「これも次元連結システムのちょっとした応用だ」
「そんなもん作れたらラプチャーなんて余裕で皆殺しにしてるわね」
「言えてるわぁ。マクスウェルは早く開発しろよあくしろよ!」
 シュエンとリアンは、ふたりがこもっている開発ルームをモニタリングしていたが、あまりの会話に目眩を起こし続けていた。
「滅茶苦茶言ってますね」
「あいつらー」
 そんなことはさておき、ふたりはいい感じに作業を始めていた。
「シュエンのやつ、「フェアリーテールモデルが何よ! そんなことよりザルヴァートルモデル作りなさいよ」とか書き込んでたわよ?」

「本当ですか?」とリアンが問う。
「違うわよ。なりすましじゃない」

「ああ、んじゃあアレだ。僕等は目指した〜シャングリラ〜🎵」
「ココアソーダクエン酸🎵 おお繋がった予言だぞ予言」
 カチャカチャとキーボードの打鍵音が響く。薄暗い部屋には一分の一ドレイク人形が彼女達を見守っていた。
「よーしそろそろ細胞データ弄るぞ!」
「これが人の夢!  人の望み!  人の業! コーディネーターみあるぅ!」
「おっぱいはどうする?」
「メイドに盛らぬは無作法というもの。戦闘許容値ギリギリまで盛って!」

「大体出来ました。成長データ見積もり出す。衣装どーぞ」
「オッケー! ドチャクソ可愛くしちゃる!」
 衣装担当が、液晶タブレットに超高速でメイド服を描き始めた!
 彼女はあの際どいレオタードのデザインを考案し、ミシリスデザイン課のスーパーエースに上り詰めたのである。
「色は?」
「赤黒メインだけど、エプロンは白にしてアクセントにピンクっぽいの入れたい」
「ジャスティスじゃん! 無限の正義を衣装に込めてるね」
「ピンクはさしづめ……」
「「ズゴック!!」」

「何の話よコレ?」
「こないだリバイバル上映が始まったアニメ映画かと」

 数時間後、スペアボディの促成培養が終わった。衣装データも縫製局に送り、お着替えの準備も万端。最終工程にふたりは臨んでいた。
「この眠り姫のようなお姿! 真の初物は私たちしか見れないのよね」
「限界ギリギリのオッパイどう? うわーこりゃすごいわ!」
「揉み心地も私のより良いわ。クヤシイ!」
「尻も若干盛りました。パンツ拝めそう?」
「善処しました」
「陰毛どうする?」
「トゥ!ヘァー!」
「腋毛は?」
「モウヤメルンダ!!」
 その後、心臓部に機械式のコアユニットを移植した。手術痕など見えない完璧な仕上がりで、ふたりも大満足である。

 さて、この時がやってきた。そう……
 スペアボディの頭部切断である。
「いつ見ても慣れないよね」
「むしろ慣れたらヤバいよ」
 ニケ達は戦闘用・非戦闘用とボディを切り替える際には、頭部を挿げ替える。これには多大なストレスをかけるものの、ニケには必要な機能のひとつなのだ。そしてそれを行うためには、どうしてもスペア側の頭が余計になるのである。ニケは決してコピーロボットにも影分身の術にも出来ないのだ。
 身長から巧妙に計算された頸骨の隙間を、レーザー光がマーキングする。そして数秒後、まるで製本時の裁断の如く、厚い刃が頚部をアッサリ切断した。
 ゴロリと転がったドレイクのクローン頭部は一旦別のレーンに転がっていった。
 その後、頸部には接続ジョイント等が増設され、最後に貼付されたガッデシアム製の肌に覆われて切断面は目立たなくなった。
 その間にクローン頭部にも似たようなジョイントが付いて戻ってきた。これから最後の品質チェックである。
 クローン頭部の脳には、動作確認用のNIMPHを投入済みだ。これをふたたびボディと一体化させると、コアからエネルギーが湧き出してエラーがないか確認に移ることになる。
「どうなるかな?」
「どうせなら一発合格してほしいね」

 手指の動き、腰部や頚部の捻り具合、発声や聴覚・視覚など感覚器に障害がないか--と言ってもキリみたいに何故か品質チェックをすり抜けてしまう例がなくもないのだが--などの確認が、品質検査員によってくまなく行われ、遂に全ての項目で異常無しとの結果が出た!
 頭部はふたたび外され、今度こそ焼却場なり何なりに転がり落ちていった。
 ふたりは短い間だったけどありがとうと、祈りながらそれを見送った。

 漏れた液体触媒を洗浄液で洗い流し乾燥させた後は、いよいよ衣装合わせである。
 流れ作業で下着やメイド服、手袋などを丁寧に着せてゆく。
「ドンドン可愛くなっていくね」
「早く本人から感想聞きた〜い」
 こうして完成したメイド衣装バージョンは、翌日本人のボディ変更を以て完成する!
 なお、戦闘用ボディに関しても、骨格や筋肉の組成に時間がかかるものの大体は同じ感じだ。

 そして待ちに待った本人への引き渡しである。仮死状態のドレイクの頭部が、メイド衣装のスペアボディに接続されると、心臓部のコアが力強く光を放った様に感じられた。
 そして、その瞳をゆっくり開ける……
「ハーハッハァ!! コレが私の新しいコスチュームか! ヴィランみがあって中々良いぞ」
 衣装デザイナーはガッツポーズしつつも涙ぐんでいた。本人に褒められるまではやはり不安が付き纏っていたからだ。
「メイド衣装という事で、胸部装甲を増設してみました。お邪魔になりませんか?」
 ドレイクは愛銃サディスティックカーニバルを構えたり、立ったりしゃがんだりしながら動作確認を怠らなかった。
 ここで不満が出るようなら全ては水の泡だ。
 ふたりは目を瞑って祈りを捧げながら審判を待った。
「まぁこのくらいなら問題ないだろう。客商売なので胸も大きい方が目立つというものだ!」
「「そうですとも!」」
 ふたりはお墨付きを得られた事を抱き合って喜ぶのであった。

「それでは最後にこちらとこちらを」
「うむ」
 ドレイクは衣装デザイナーに、ピンクのメイドヘッドバンドをつけてもらい、名札を受け取った。
「DRAKE!! どうだ?」
 力強くも、ビックリマークのかわいらしさよ。
「「あっ」」
 そしてニヤリと笑う、ドレイクの得意満面な表情にふたりは思わず脳を焼かれて尊死してしまった!
「オイどうした? マズい、息をしていないぞ! シュエン! 早く救急車とAEDを持ってこい! リアンは片方に心肺蘇生だ急げ! こちらは私がやる!」
「なんで私が……」
「CEOをコマ遣いだなんて良い度胸ね、もしもしフロント係? とっとと工場にAED持ってきて! ミシリス医療センターに救急搬送二名分依頼もしといて!」
 メイドレイクの最初のお仕事は、お嬢様たちの介抱になったのであった。
                     (了)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?