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シーシュポスの岩

The Game of Sisyphusというゲームをご存知だろうか?

creamから今年4月11日にリリースされたゲームで、vtuber達が遊んでいることで話題のゲームだ
内容は単純で、シーシュポスという男が大きな岩を転がして山の頂上まで運ぶだけだ
しかし、頂上までは数々の邪魔が入り、油断すれば一番下まで戻されてしまう鬼畜難度のゲーム

岩を運ぶシーシュポス



このシーシュポスという男はゲームの中のオリジナル人物ではない
実はギリシャ神話に登場する男なのだ



シーシュポスはギリシャのテッサリア王アイオロスの息子として生まれる
そのアイオロスが亡くなると、シーシュポスの兄弟であるサルモーネウスが
テッサリアの王となった
シーシュポスは自分が王になるはずだと思っていたので、サルモーネウスが
王位に就いたことに恨みを覚えた



シーシュポスはデルポイの神託所にお伺いを立ててお告げをもらう
お告げは
「お前の姪と交わって子供をもうければ、その子供が恨みをはらしてくれるだろう」
お告げを受けたシーシュポスはサルモーネウスの娘テューロを誘惑した
テューロとシーシュポスは仲を深めていったが、いつしかテューロは気づいてしまう

シーシュポスが自分の事が好きなのではなく、復讐の為に近づいたのだと
テューロはその事を恨み生まれた2人の子供を殺してしまった
ちなみにサルモーネウスはゼウスの名をかたりゼウスの供物を自分に捧げるよう命令をだしたことにより、ゼウスの怒りをうけ雷に打たれて死んでしまう


神ゼウスは大の女好きで、気に入った女性をよく誘拐した
今度はアイギナという女性を誘拐した
娘を誘拐された河神アソポスは娘を探してコリントスまでやってきた
そこでシーシュポスと出会う

シーシュポスは水の枯れない泉を作ってくれたらゼウスとアイギナの居場所を教えると持ち掛ける
条件をのんだアソポス
シーシュポスはゼウスとアイギナの居場所をアソポスに告げた
慌てたゼウスは岩に変身し、アソポスをやりすごした



告げ口を恨みに思ったゼウスはシーシュポスをタルタロス(冥界の牢獄)へ連行するように命令をだした

命令を受けたタナトス(死の神)はシーシュポスを連れていこうとする
シーシュポスはタナトスに手錠の使い方を実演して欲しいと願う
タナトスは自分の手に手錠をはめてしまった

死の概念そのものであるタナトスが動けなくなってしまったことにより、誰も死ぬことがなくなった
戦いの神アレスがタナトスを救い出し、シーシュポスを連行する



冥界の神ペルセポネの前に連れてこられたシーシュポス
シーシュポスは自分の葬式がまだ済んでおらず、葬式する行っていない妻メロペーに復讐する為に3日だけ生き返らせてくれと頼んだ

これはシーシュポスが事前に妻に葬式をだすなと頼んでいたのだが、ペルセポネは真に受けてしまいシーシュポスを蘇らせる
もちろんシーシュポスは妻に復讐する気もなく3日で戻るつもりもない
ペルセポネとの約束を反故にしたシーシュポスはヘルメスによって力づくで
冥界に連れ戻されてしまう



シーシュポスは神を二度も欺いた罪で罰を受けることになった
タルタロスで巨大な岩を山頂まで運ぶように命じられたのだ
ここでゲームの巨大岩を運ぶ目的が登場する
あのゲームの舞台は冥界タルタロスでシーシュポスは罰の為に岩を転がしていたのだ

シーシュポスは岩を山頂まで上げると、岩が再び一番下まで転がり落ちてやり直しになる
この辺りもゲームと同じだ
シーシュポスの受けた罰とは岩を永遠に山の上まで転がし続けるという罰なのだ


シーシュポスの岩とは徒労を意味するという
何度山頂まで運んでも一番下まで転がり落ちる岩
それを再び山頂まで運び、また下まで落ちる岩
まさに徒労だ

この徒労であり罰でもある岩転がしをゲームという娯楽にしてしまうというのは何とも面白い皮肉だろう


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