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家庭裁判所のリソースは不足しているか

この記事は、平成6年(2023年)11月16日 第212回国会(臨時会)参議院法務委員会における、伊藤孝江議員(公明党)・質問答弁を文字起こししたものです。

佐々木委員長:伊藤孝江さん。
伊藤議員:公明党の伊藤孝江です。今日も宜しくお願いします。裁判官の人員について、まずお聞きしたいと思います。あの、裁判官の人員につきましては、判事、判事補をあわせて令和3年度は増減なく、令和4年度、令和5年度と減らしてきている。で、また令和6年度に向けても増員をしないという方針をお聞きしております。で、ここ数年の推移をみても裁判官を増加しないという方向で、その方針で進んでいることが見て取れます。で、そもそもこの増員が必要か否かを検討するにあたり、いかなるデータに基づいて、どのように判断をされているのか。来年度裁判官を増員する必要性はないという風に判断した根拠について、ご説明をお願いできますでしょうか。
佐々木委員長:小野寺総務局長。
小野寺総務局長:お答え致します。え~裁判官の増員につきましては、事件動向、事務処理状況、経済、あっ社会経済情勢の変化や、これに伴う事件の質的な変化、法改正の状況など、その時々諸事情を踏まえて検討しているところで御座います。裁判所と致しましては、これまでも事件動向等を踏まえて着実に裁判官を増員し、人的体制の整備に努めてきたと考えているところで御座います。近年の事件動向について見てみますと、民事訴訟事件及び刑事訴訟事件につきましては、いずれも減少傾向に御座います。また、家事事件につきましては、全体としては増加で御座いますが、これは高齢者人口の増加に伴い、成年後見関係事件が累積的に積み上がっていることによる増加であるという風に考えられます。少年保護事件につきましては、ここ10年の間に大幅な減少傾向が続いているというところで御座います。このような事件動向を踏まえますと、令和6年度につきましては、これまでの増員分を活用しつつ、審理運営の改善、工夫等を引き続き行うことで、適正かつ迅速な事件処理を行うことができるものと考えており、昨年に引き続き判事の増員を求めないこととしたものでございます。
佐々木委員長:伊藤孝江さん。
伊藤議員:あの~、民事部の裁判官は、まぁよく事件数が多いと言われますけれども、1人当たりの裁判官が持っておられる、担当しておられる事件数、まぁ多い裁判所では何件ぐらいなんでしょうか。
佐々木委員長:小野寺総務局長。
小野寺総務局長:お答え致します。まず、あの前提と致しまして、全国各地の裁判所におきましては、1人の裁判官が複数の種類の事件を担当しているということが御座いますので、なかなか、その手持ちの件数を割り出すということは容易ではないということについてはご理解頂きたいと思います。その上で申し上げたいと思いますが、あの~1人の裁判官が民事訴訟事件のみを担当しているという、まぁ東京地方裁判所の民事通常部について数をお示し致しますと、令和4年におきまして180件程度という風になっております。
佐々木委員長:伊藤孝江さん。
伊藤議員:その180件のまぁ事件数、事件数、それぞれの事件について、まぁ適切に事件の争点を整理をして、また和解を試みたり、またそれを断念して判決という手続きに向けて進めていったりという、そういう進行についての判断であるとか、当事者や代理人とのやりとりなど、まぁ裁判官によって異なると思いますし、それもまた勿論人がやることなので当然のことだと思います。で、その中で、まぁ終了した事件の数であったり、また終了までに要した期日の回数を見るだけでは裁判官による訴訟指揮、訴訟の進行がまぁ妥当だったのかという点は、あの判明しないという風にあの思っています。で、私自身も経験として、弁論準備期日で裁判官が提出した書面、読んでいなかったりであるとか、争点を理解していなかったりっていうのも、よく経験もしましたし、それを経験した弁護士も本当に多いと思います。で、その中で的確に争点整理を行い、可能な限り丁寧に当事者または代理人の理解や納得を得られるような進行の中で、そして可能な限り迅速に処理をしていくことができているのかということが大事だと思っています。最善な事件処理を行うことができるようにという観点で、裁判官がどのくらいの数の事件を実際に担当することができるのかということを検討しなければならないという風に考えます。で、その観点では、裁判官の事件処理で実践している、そのスキルであったり力量であったり、また担当している事件数がちゃんと処理できる数に収まっているのかどうかという点は、どのように判断をされているのでしょうか。
佐々木委員長:小野寺総務局長。
小野寺総務局長:お答え致します。え~、先程あの申し上げましたように、最高裁におきましては、あ~事件処理状況、数など客観的な数字を使いながら状況把握しているというところで御座います。え~、あの手持ち事件数について、まぁどれだけ妥当性があるのかという点についてもご指摘を頂いたところで御座いますけれども、え~手持ち事件数自体を割り出すのが難しいというのは、先程え~申し上げた通りで御座いまして、事務当局として、なかなかそこを数字で把握するというのはなかなか難しいということはご理解頂きたいと思います。また、その個々の裁判官が、まぁどういう風に適切に審理を行っているのかどうかということを、まあこれをその個々の裁判官の状況というのを事務当局が把握するというのも、なかなかこれはどこまで事務当局が把握して良いのかというところも御座います。え~、そういう意味では、やはり客観的な数字状況を見ながら検討していくということでこれまでもやって来ているところで御座います。え~、申し上げたような各庁の事件動向や事件処理状況等の客観的な統計数値、これを考慮しつつ、更に高裁を通じるなどして把握した各庁の実情なども踏まえて、全国的な見地から必要な体制を整備して参ったところであります。引き続き、まぁ裁判官の増減が必要なのかどうかということを含めまして、体制の整備に努めて参りたいと考えております。
佐々木委員長:伊藤孝江さん。
伊藤議員:あの増員でも人員配置でも構わないんですけれども、まぁ一人ひとりの裁判官がきちんと事件に、担当している事件に向き合って処理に適切に対応することができているのかというのは、それは分りませんと言われてしまうと、じゃぁ人員配置も適切なんですかと、ということにもなると思います。勿論事件数だけで判断できるものではないということもよくよく承知をしております。その中で、どう考えていくのかというところ、どう実態を掴んでいくのかというのを、各裁判所なのか、まぁ法務省なのか、最高裁なのか、しっかりと考えて頂かないことには、事件にはそれぞれ当事者の方がいるわけですから、客観的なデータでしかわからないのでここで勘弁してくださいという訳には、やっぱりいかないということを含めてご理解頂きたいと思います。で、以前にも法務委員会でも取り上げさせて頂いたこともあるんですが、あの、特に家事調停について、まぁ裁判官がまぁ不足しているというのか、きちんと事件数処理できるだけのものに収まっていないんじゃないかという点について、少し質問させて頂きたいと思います。で、この家事調停、私も代理人であったり。また、あの調停委員も経験もさせて頂きました。その中で、例えば、あの離婚事件であれば、離婚した後の子どもの親権であったり、養育費であったり、面会交流だったり、まぁこれからの子どもの生活をどう守っていくのか、という観点でも、話合いをしっかり進めて行って、出来る限りの納得と理解の中で合意を形成することが出来るかどうかというのが大変大事な点だと思っております。で、この調停というのは、あ~調停委員会というのが担当して、裁判官1人と通常は調停委員が2人、この3人で調停を担当することになります。実際に、この調停委員会のこの裁判官が当事者と会ってですね、調停に入って当事者と話をする機会っていうのは、どの程度あるのかということを一般論としてご説明頂けるでしょうか。
佐々木委員長:最高裁判所事務総局、馬渡家庭局長。
馬渡家庭局長:裁判官がどのような場面で調停の期日に立ち会うかにつきましては、事件の内容や調停の進行段階などに応じまして、調停委員会により個別判断、個別具体的に判断されるものでございますが、一般的には法的観点からの説明が必要な場面、また審判や訴訟の見通しを伝えるなどして合意形成の働き掛けをする場面、こういった場面で立ち会うことが多いものと承知しております。
佐々木委員長:伊藤孝江さん。
伊藤議員:そうですね。あの~調停期日、まぁ重ねても、例えば最初とか最後の節目のところとか、真ん中で争点に関する大事な合意をした時の確認をするとか、まぁ10回期日が、例えばやったとしても10回入るわけでもなく、入るのが1回の場合もあればっていうような形で、まぁ当事者の方からすると、裁判官というのはなかなか、こう見えない存在になっているかと思います。で、ただ私自身のその経験からしても、当事者の方はやっぱり裁判官に色んな話を聞いてもらいたいんですね。で、裁判官からすると、また傍から見ると、こういう風にこの問題解決した方が得なんじゃないかということがあったとしても、決して損得の話ではなくて、これまでの長い期間の間に色んな思いを抱えて、色んな苦労をしながらがあるので、その感情をまぁどう消化していくのかというところを含めて、調停でやらなければなならいことっていうのは、まぁ沢山あります。で、それをこう裁判官にちゃんと伝わっているのだろうか、というような、まぁ不信感を持たれることも沢山ありますし、まぁ先程ありましたけれども、裁判官が入って説明をして頂くと、同じ説明をしても調停員が説明するよりも裁判官が説明する方がやっぱり納得をして頂く機会も、まぁあるのかなというのも感じるところであります。で、しっかりこの裁判官が各調停の期日に入っていくことが出来るようにすべきではないかという風に考えますけれども、現状はそれが物率的にできない状況にあるという風に思っております。で、裁判官が自分が担当する事件、同じ曜日の同じ時間に、例えば、その今日の木曜日の午前10時に離婚事件であったりとか担当する事件が同時に何件事件を設定しているかということをご説明頂きますでしょか。
佐々木委員長:馬渡家庭局長。
馬渡家庭局長:お答え致します。え~、特定の裁判所において同一時間帯に1人の裁判官が担当する事件として何件の調停期日を指定しているかにつきましては、え~事務総局として正確な数値を把握しておりませんので、具体的な数値をお答えすることは困難で御座いますが、え~東京家庭裁判所において、え~各裁判官の担当事件などに応じて同一時間帯に概ね数件程度から十数件程度の期日指定がされているものと聞いているところで御座います。
佐々木委員長:伊藤孝江さん。
伊藤議員:あの今、かなり私の感覚では少なめに言っておられるんじゃないかな、という気は、あのしますけれども、同じ時間にまぁ遺産分割の事件なのか離婚事件なのかによっても、まぁ違うと思います。特に離婚事件の方が多いかなと思うんですけども、以前にお聞きした時は10件ないし20件という風にお聞きしましたけれども、十数件でも同じ時間に十数件平行して調停委員が入って調停を進めていると。で、裁判官は1人でこう待ってて、何か途中で相談があれば私たちはその部屋を出て裁判官のところに相談に行って、また戻って来るっていうようなことを、まぁしている。で、裁判官とその調停委員、まぁ調停委員会というのは、その3人で構成してますけれども、その連携をどう取るのかというのは、その調停の期日の始まる前か、あるいは後に評議という形で裁判官に調停委員が報告に行きます。事後評議という形で私たちも事件、まぁ当日の期日が終わって裁判官のところに行って、まぁ順番待ちをして30分、1時間待って裁判官に今日の報告をします。こんな話がありました、こんな合意ができました、ここがなかなか上手く行かないです、次にこういうことを宿題でお願いをしました。で、裁判官から指示を受けて、次じゃぁそれをやりましょうっていうような形です。まぁ、裁判官と直接会って評議ができるというのは、まぁ有り難かったと思います。それがなかなか出来なくて書面での遣り取りで著面での報告をして、メモで返されて裁判官としっかり話し合うこともなく調停期日に臨む調停委員がいるというのも現実だと思います。で、この評議を勿論充実させていかないといけないっていうのもありますけれども、やっぱり一度にそれだけの10件以上の事件を同時にやらねばならないというのは、担当する受件数として、私は多いんじゃないかと思うんですけれども如何ですか。
佐々木委員長:馬渡家庭局長。
馬渡家庭局長:まぁ、あの同一時間帯に、まぁ、あの複数の事件が指定されているという状況で御座いますけれども、まぁ、その同一時間帯の事件というのは、事件の複雑さ、まぁ困難さも千差万別で御座いますし、また同一時間帯に期日が開かれている調停の進行もまちまちであるという風に思われるところで御座います。そういったことから致しますと、先程述べた程度の件数の期日が指定されていても、まぁ各事件の内容等に応じて裁判官がメリハリをつけて関与するということで、必要な事件につき十分な関与が可能であるという風に認識しているところで御座います。
佐々木委員長:伊藤孝江さん。
伊藤議員:あの、まぁ具体的な個々の事件の進行とは別に本当にこう裁判官がきちんと全部に向き合うことが出来る、そういう環境をつくっているのかっていうのは、やっぱり、あの最高裁としても、しっかり考えて頂かなければいけないと、あの思っています。この、あの問題、ちょっとすみません、今日質問、あの、未だありますけれども、ちょっと次のテーマに行かせて頂いて、また、あの後日機会があれば、あの質問させて頂きたいと思います。
(以下省略)

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