見出し画像

「ママ、抱っこ」に辟易したら

娘が幼稚園年中さんの頃、抱っこをせがむことが多くなった。
私は2歳の息子の世話と家事とで余裕がなく、娘が何か不安定なんだろうと思いつつも、ゆったりとした気持ちで抱っこをしてあげることが出来なかった。

「もう〜、忙しいのにー。早く降りてー」と思いながら抱っこをし、下ろそうと焦るから、娘は意地でもしがみつく。イライラがつのる。

イライラするくせに、(イライラするから?)不安定なのは私のせいなのではないか、と自分を責める気持ちも出てきて、

どうしたらいいのー!とパンパンだった。

パンパンが破裂しそうになり、このままではマズイ、と娘の通う幼稚園の先生に電話で相談をした。

先生は開口一番、「まずはお母さんが大丈夫ですか?」と私を気遣ってくれた。
その言葉に詰まった気持ちが溢れてしまう。

先生は一通り話を聞いてくれたあと、とても具体的な提案をしてくれた。

周りが見えるようになってきた5歳くらいの子は、不安定になることも多いので、少しも不思議なことではない、ということ。

その上で、
抱っこの終わりの時間を一緒に決めること。
(時計の秒針がぐるっと1周したら終わりね、とか、10数えたら終わりにしようか、とか、提案して話し合い、本人の納得を得る)

そして、弟はいつもお母さんと一緒にいるんだから、私も一緒にいたい!という気持ちを娘が抱いていることが予想されるので、

〇〇ちゃんが幼稚園に行って何してるかなー、お友達とどんな遊びをしてるのかなー、って家にいない間もお母さんはあなたのことをずーっと考えてるよ、と伝えること。

そして先生は最後に、
「お母さん、毎回でなくて大丈夫ですよ。5回に1回とか、10回に1回とかゆるーく考えてくださいね」と言って電話を切った。

それから私は娘にずっとあなたのことを考えているよ、と伝えつづけ、
「抱っこ」とせがまれるたびに手を止めて、
「いーち、にー、…きゅー、じゅっ!おまけのおまけの汽車ポッポ、ポーっと鳴ったら降りましょう、はい、1、2、3!」
とほんの30秒もかからない時間を抱っこに割いた。

不思議なことに、娘は駄々を捏ねることなく、毎回さっと膝から降りて遊びに行き、しばらくすると戻って抱っこを繰り返すようになった。
そして、気がつくとその回数も減って行った。

私の方も30秒で良いと分かっているのでその間は優しい気持ちで抱っこ時間を楽しんだ。今思えば、結果としてそれが好循環をもたらしたんだろうなぁ。

20年近く経って思い出した出来事だけど、当時はそれを夫に相談しなかった。自分でワンオペを背負っていたと思う。確かに夫は仕事で大変だったけれど、育児は私がしなければ、と勝手に気負っていた。一昔前の価値観に縛られていたんだろうな。

そして幼児であっても、こちらの意見を一方的に押し付けるのでなく、「抱っこの終わりを一緒に決める」という、ずーっと抱っこをして欲しい人と、抱っこはそこそこにして夕飯を作りたいという人と、異なる意見を持つ2人が話をして双方納得の着地点を見出すことが、こんなにも物事を簡単に進めるキーになるのだとは思いもしなかった。
自分で決めるって、本当に大事だ。

ふと思い出した、この具体的な方法がどなたか必要な方に届きますように。
あの時、1人で泣き出したかったわたしへ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?