見出し画像

ただいま神様当番

今年最初のnoteです。
なので、おめでたい響きの本を選びました(笑)
今日のオススメの一冊は、こちら。

『ただいま神様当番』
青山美智子 作       宝島社

毎朝、同じバス停で並び、同じバスに乗る5人。
彼ら一人一人に訪れた面白不思議な出来事を描いた、5つの物語です。


1話目は、OLの水原咲良。
彼女の口癖は、
「……なんか、楽しいことないかなぁ」
合コンに行けば疎外感を感じ、大好きなアイドルのコンサートチケットは、ちっとも当たらない。会社は退屈で、上司は陰気でイヤミったらしいし、友達もあまりいない咲良。

そんな彼女に、ある朝、事件が起こります。
目が覚めると、腕に大きな黒々と書かれた「神様当番」という文字。
そして…

「お当番さん、みーつけた!」
はっと振り返ると、ニヤニヤした見知らぬお爺さんが床にちょこんと正座している。
「キャーッ!」

悲鳴を浴びながら、神様登場(笑)
この神様、なんと、えんじのジャージ上下に裸足というお姿。
皺のいっぱい刻まれた顔でへろへろ笑って」いて「お調子もののおじいちゃんって感じ」なのです。
もう、完全に見た目は不審者(笑)

その神様の願い事というのが、自分を楽しませて欲しいということ。
楽しませないとお当番は終わらないし、終わらないと腕に書かれた文字も消えない、と無茶を言ってきます。

その日から、咲良は神様に振り回されっぱなしの日々を送ることになります。
というのも、この神様、なんと左手に入り込み、勝手に手を動かすという荒業ができ、咲良は意志に反した行動を次々させられるはめに。

さらにはダダをこねたり、すねてしまったり、文句を言ったかと思うと、わあわあ泣き出したり。
でも、楽しい時にはご機嫌になる、まるで子どものような神様なのです。

そして、今どきのこんな行動も…。

あ、と止める間もなく、神様はベッドに寝転んでスマホをいじり始める。
(中略)
神様は案外、スマホの操作に慣れている様子だった。腹ばいになって頭を持ち上げ、ほんの二分ほどぴこぴことパズルゲームをしていた。

そして、フェイスブックまでチェックし始める神様(笑)

そんな自由奔放さに、思わずニヤついてしまいますが、読み進めていくうちに読者は気がつかされるのです。
神様の存在の意味について。

咲良も、次第に自分が本当に求めているものは何なのか、何が好きで、何がやりたいことなのか、今までマイナスに感じていたことも、見方を変えれば、真実は逆だったりすることに気づいていきます。
つまらなくしていたのは、自分。
自分が変われば回りも変わるし、毎日がきらきら輝いて道も開けてくると。

そして、ウソのない本当の自分を見いだし、自分の中の神様を大切に生きていく人生を歩みだした時、お当番は終わりとなって、神様は立ち去るのです。
また、新たな必要とされている人の元へ…。


これに続く、他の4つのお話に出てくるのは…
おバカな弟にうんざりしている小学生の女の子。
リア充に憧れながら、バーチャルな関係から踏み出せない高校生男子。
生徒と上手くコミュニケーションが取れず、若者言葉に戸惑うイギリス人教師。いつもイライラと怒鳴りちらし、人の上に立って見下すことが理想の社長。

どれも、困った神様とやり取りするうちに、本来の自分を見出だしていくストーリーで、読んでいて明るい気分にさせてくれます。

新年が明けて、何か新しいことを始めてみたいとか、今年こそ自分を変えてみたいなんて気持ちの時、一歩を踏み出す勇気をもらえるかもしれません。
今年最初の一冊にオススメです!


また、この本に限らず、青山美智子さんの作品で私が面白くて好きなのは、それぞれのお話が独立しているようであって、実は見えない糸で絡み合っているかのように、繋がっているところ。

例えば、ある話で脇役としてちらりと登場する人物が、他の話で友人として出てきたり、女子トークで話題に上がっていた人物が、別の話では主人公だったり。
お話が変わると視点も変わるので、その人物の別の一面を見られたりして、本筋プラスの楽しみ方もできちゃいます。

中でも『鎌倉うずまき案内所』は、その絡まり具合が特に複雑で、人物関係を横軸とすると、そこに年月の経過という縦軸が加わってきます。
巻末に年表が付いているぐらいです(笑)
ぜひ頭を柔らかくして、こちらも読んでみてください。


お時間ある方は、こちらもどうぞ。


この記事が参加している募集

わたしの本棚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?