見出し画像

通い猫アルフィーの奇跡

今日オススメしたい本は、こちら。

『通い猫アルフィーの奇跡』
レイチェル・ウェルズ作
ハーパーコリンズ・ジャパン


飼い主を亡くし、住む家もなくなった猫のアルフィー。孤独と空腹の中、さまよい続けるうちに、エドガー・ロードと呼ばれる住宅地にたどり着きます。
そこで、通い猫として生きることを決意し、新たな自分の家族たちを探し始めるのですが…。


こちらの本はシリーズ化しており、すでに第7弾まで出ています。
シリーズ全体に通して言えるのは、作者の猫に対する愛情が満ち溢れていること。
猫あるあるの態度や行動 の数々に、そうそう…と、共感する猫好きさんも多いのでは。


猫どうしで交わされる会話も楽しく、人間同様に感情豊かに生きる彼らを見ていると、実際の猫さんに出会った時も、
君もそう思ってるの?
みんなで、どんなお喋りしてたの?
なんて、想像が膨らみます。
今までとは、猫を見る目も変わるかもしれませんね。


そして、どの本でも次々とトラブルが起こりまくります(笑)
例えば、第1弾の『通い猫アルフィーの奇跡』。
アルフィーが出会う人々は、みな何かしらの問題を抱えています。

無職で帰国した、ひねくれ者の独身男。
離婚した傷心女性は、またも乱暴なダメ男に引っ掛かかる。
慣れない異国で苦労する移民家族。
そして、育児ノイローゼで我が子を愛せない母親。
共通するのは、みな寂しさを感じていること。

ハラハラしながら読み進めるうちに、困っている人を放っておけないアルフィーの機転と活躍によって、最後には、見事にすべての問題を解決!
ハッピーエンドで終わるので、スーッと気持ちのよい読後感です。


シリーズ化の楽しいところは、登場猫や人物たちの成長を、ずっと見守っていけること。
アルフィーも、恋や友情、悲しい別れ、新しい出会いなどを経験しながら、りっぱな猫生を歩んでいきます。

もちろん、エドガー・ロードの住人たちにも、時は流れます。
第1弾で、6歳だった男の子は、第7弾ではすっかりティーンエイジャーとなり彼女もいるし、2歳だった小さな弟は、今では反抗期真っ只中(笑)
読者たちも、住人の一人のような気分で成長を見守ることとなります。


問題を抱え、時には人を傷つけていたような人々も、アルフィーと関わることで人生が変わり、生き生きと暮らしていくようになります。
そして、次に別のトラブルが起きたとき、今度は自分が他を思いやり、手助けしていく側へと変わるのです。

そんな、優しさの連鎖のようなものが、アルフィーの回りに広がっていき、読者までも暖かい気持ちにさせてくれます。
そこにあるのは、作者の優しい眼差し。

どんな人も、ちよっとしたきっかけで悪人にも善人にもなる。
たとえ迷惑な、不快に感じる厄介者でも、ただ排除したり無視したりするのではなく、まずはチャンスをあげて、愛で答えていこう。
なぜなら、その人も実は困っていて、助けを求めているのかもしれないから。

そんなメッセージが、込められているように思うのです。
もちろん、根っからの悪人には、断固たる態度で、戦いを挑んでいきますが(笑)


作者は来日したこともあり、日本が気に入ったようで、シリーズ中でも、日本からやって来た猫が登場します。
おっとりとして、外の苦手な女の子というキャラクターで、重要な脇役となってゆきます。

また、アルフィーにも、日本人は魚が好きだから日本食は歓迎する、的な台詞を言わせたりして、日本人としては、ちょっと嬉しい設定ですね。


また第6弾では、アルフィーの新たな仲間として、ついに犬が登場するのですが、これが、かなりのおバカキャラとして描かれています。
猫好きな方には、犬がこんな風に見えているのかなぁ?
あくまでも、猫たちとの対比として選ばれた、ひとりのキャラに過ぎないと、犬を愛する私は信じたい(笑)

まあ、そもそも人間たちも、猫がいないと何もできない、不器用な生き物として描かれていますからね。
とにかく、猫が1番!というスタンスの本です(笑)


ぜひ、シリーズを通して読んでいただくことをオススメしますが、まずは、全ての物語の始まりとなる『通い猫アルフィーの奇跡』、試しに手に取ってみて欲しいです。
猫好きの方はもちろん、そうでない方でも、グッと心を捕まれる人間ドラマに、そして秘密いっぱいの猫の世界に、読み出すと止まらなくなるはず。

心をぽっと照らしてくれる、秋の読書タイムにぴったりの一冊です。

チャプターごとに描かれる
シルエットの猫さんチェックも
小さなお楽しみ!


この記事が参加している募集

海外文学のススメ

猫のいるしあわせ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?