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北海道が好きになったわけ29

大学にはいくつかの部活があったが、毎日のように活動しているのは硬式テニス部しかなかった。多分、北海道の大学リーグに所属していたのもテニス部だけだったんじゃないかと思う。

一応、真面目に体育会していたせいか、学校から予算を出してもらって夏合宿があった。僕らが入った年の1年は師匠・谷中ちゃん、軟式国体野郎・小浜、そして何故かバンド小僧・音尾ちゃん、と僕の4人が参加した。

先輩は部長に副部長、あとはいつもの元族の先輩達の計6名、総勢10名の部員とマイルド組幹部の顧問・山里さん。

合宿所は薄毛の聖地、増毛(ましけ)。海に近く立派な宿で、こういう立地にしては珍しくキレイなハードコートが8面くらいあった。

合宿といっても長いものではなく、2泊3日の親睦会的要素の高いものだった。
が、普通の親睦会と少しだけ違っていたのが、最終日の午前中に1年vs2年の試合が何試合か組まれていたこと。ただ、まぁ普通の学校のテニス合宿でも最終日に試合っていうのはよくあることだし、さほど気にしていなかった。

気になると言えば先輩達が山里さんに
「山里さん、アレ持って来てもらえました?」って聞いた時、
「ワリ〜、ニホンしか用意してないわ」
「ニホンがニホンなら充分っす!w」
という謎の言葉が飛び交っていたことくらい。

1日目と2日目の晩飯くらいまでは穏やかに、そして真面目にテニス部らしく練習して、ゆっくりと温泉に入り増毛の新鮮な魚介に舌鼓をうった。

そして、明日は先輩達と何試合かするからそろそろ寝ようかとなった頃、元族のひとり棚橋先輩が

「山里さん、そろそろアレをお願いします」

と、山里さんが部屋から持って来たものは
よりによって日本酒の一升瓶2本。

「ワリ〜な。今年のヤツらは弱そうだから2本しか用意してね〜ぞ」
「いや、充分でっす!」
「ご馳走様ですっ!!」
「あざっす!!!」

と例の後ろ手のご挨拶があり、

「オイ、オメーら。せっかく山里さんがご用意してくれた日本酒だぁ。キッチリと飲み切れよな」

あー、つまりニホンがニホンてのは、
日本酒の一升瓶が2本てコトっすか。
でもって、明日の試合に負けるのが嫌だから
酒で潰そうってことっすかーーー!

「シャケ〜、とりあえず、それ洗っちゃおうか」
とニコヤカに村岡部長に言われ、もう飲むっきゃない!と腹を括った。どう足掻いたって逃げられるもんじゃないし。

「お〜、俺はもう寝るぞ〜。あんま無茶すんなよ?あと、お前ら玄関の鍵だけ確認しておけ。去年大変だったからな〜」
「了解です!山里さん!鍵確認して来ます!」

後で聞いた話では、先輩達が1年の時に、同じように日本酒を用意されて飲まされ、スリッパのまま海まで逃げた人がいたらしい。

「アイツ、海に逃げようとしたんだよなw」
「そうだったw  でスリッパ流れちゃってさw」
「びしょ濡れで羽交締めにされて泣いてたもんなぁw」

全然笑いながら話す内容じゃないっすよ。
その先輩はとても優しそうでまともそうで、コートでは見ない人だった。そりゃそんな目にあったらテニスしようなんて思わないわな。

クソが!跡見さんでもいれば頼もしかったけど、ここは俺が飲むしかねーな。と覚悟を決めて飲んでいたが、気がつくと僕以外の1年生がいない!
ヤバくない?海行っちゃってない?

「先輩!1年生、僕以外いません!」
「お?ホントだ。こりゃ、やべーかなw」

だーかーらー、笑いごっちゃねーすよ!

※まだかかりそうなので、明日に続きます


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