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小説「自分のかごの中で」

えっ? ここはどこ? 私は一体どこへ飛ばされてしまったのだろうか? ここはどこ? 遊園地? テーマパーク? 地球? もしかして宇宙?
私は辺りを見渡して呟いた。
88年間生きてきて、一度も目にしたことない景色が眼前に広がっている。そして、この世界は心細い形をしている。そんなことを思って「心細い形って?」思わず声に出てしまった。でも、「心細い形」という形容詞がしっくりくるのだ。足のついている大地は、固そうでびくともしないような頑丈そうに見えるけど、大地をつまんでみると新聞紙のように柔らかく、ふにゃふにゃしている。大地に手のひらを突っ込むと、バラバラと砂ッとなって指の間から流れ落ちていく。なのになのに、飛んだり跳ねたりしても凹むこともなく、逆に足の裏が痛いくらいの衝撃がくる。
空を見上げれば、今まで見たことも無い宝石が輝いているような美しい空。空に手を伸ばすと張りぼての画用紙のように空が破れる。その向こうに満天の星空が瞬いていた。「わぁー」と満天の星空に体当たりをすると、朝日が眩しい水色の空が広がっていた。
ふと気がつくと、その世界は「無」の世界になっていた。「無」の世界なのに私という「有」が存在するのはオカシイと思った。直感で「無」の世界だと思ったのだ。
この「無」の世界は孤独と不安が所狭しと漂い続ける世界だった。

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