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デッキが違っても僕らはたしかにチームだった (蒼紅杯トップ8デッキ調整録)

こんにちは、ウーパールーパーです。2024/4/21に開かれた蒼紅杯という大会で参加者122名のなかでトップ8という成績を残すことができました。
こうして字面にするとなかなかすごいことだなと改めて実感します。

今回はオリジナルデッキということもあって、デッキ構築関連記事にしようと思ったのですが、これまで出してきた記事の焼き直しになってしまうと思ったので、一緒に調整した人たちとの練習内容や大会で感じたことと細かなカード採用理由を記事にしようと思います。

オリジナルデッキ構築のコツ的な記事は以下の記事などを参考にしてください。(ここぞとばかりに宣伝)

今回はデッキ構築とは違い、チーム調整の話になります。「チーム調整」という言葉から一般的に抱くイメージとは少し乖離しているのではないかと思いますが、こういう形もあるんだなと思っていただければ幸いです。

1. なんとなく始まった調整会

現在、私はMTGアリーナShelterというDiscordをメイン活動地としています。
もともとはMTGゆる鯖というところにいた人たちが集まっているサーバで、ガチガチに調整することは目的にしておらず、なんとなく競技に参加したり調整したりして楽しもうというスタンスのサーバです。
それは今も変わらず、特に決まりごともなく各々が好きな雑談を話すだけのエンジョイサーバです。

予選ウィークエンドやプレイインどうしようかなあと雑談しながら夜な夜な集まって遊んでいたのですが、私自身は24年3月のラダーで1200位に入れずにプレイインポイントがなかったので、4月のプレイインはあまり出る気がありませんでした。

ただサーバの他のメンバーは出るつもりの人もいたので、何の気なしに「なにか回してみて情報集めてほしいデッキあります?」と聞いたのが始まりでした。
もちろん調整会なんて大した思いはなく、暇つぶしがてら誰かのサポートでもしようという軽い気持ちでした。ただ、振り返ってみると、この瞬間に僕たちのチーム調整は始まったのだと思います。

そのときに回してほしいと言われたのはTier.1の一角である「ディミーアミッドレンジ」でした。とりあえずテンプレのディミーアをコピーしようと思ったのですが、ちょうど同じタイミングで晴れる屋のスタン神決定戦がありました。
そこで、スタン神が通常のディミーアと異なるリストを持ち込んで見事防衛を果たしていたので、まずはそのデッキを研究してみようという話になりました。

2. 神デッキ研究と魔改造

そんなこんなでゆるく始めた神デッキ研究ですが、そのときのまとめは以下のようなものでした。
・セイレーンなどを抜くことでデッキパワーが大幅に向上している
・2マナ以下のアクティブな動きが少なく、序盤が安定しない
・リリアナがかなり強いが、横並べに弱く安定感に欠ける
・ラザーヴが2マナ域として強い
・BO5用に最適化されている

神デッキ(サイドバグ)

特に2マナ域のアクティブな動きが少ないことから、テンポの要求値が低い=多色化が可能と判断し、このときからグリクシスミッドレンジを自分で作って遊んでいました。
もうひとつ2色にまとめることの大きな利点として、能力持ち土地が多く採用できるという点もあったのですが、廃墟の地を大量に積んだコントロールが俄かに流行り始めており、能力土地の優位性はあまりないと感じていました。(それは今も変わらないです)
そして出来上がったのが以下のリストです。

バグる前のスクショなのでサイドが見れる!!

サンダージャンクション前に組んだデッキではありますが、今回の蒼紅杯に持ち込んだデッキにかなり骨格が近いものが実はこの時点で出来上がっていました。

税血の収穫者で2マナアクションを充実させつつ、電圧のうねりでタップインを置きながらでも分派の説教者やラフィーンをさばきやすい構成にしています。
このあたりの知見は蒼紅杯のリストでもそのまま使われています。
また、単除去で処理しにくく、墓地対策にもなる墓地の侵入者を採用しています。リリアナの横並べの弱さがどうしても気になって代わりを探して選んだカードで、今回の蒼紅杯でも最も活躍したカードのひとつなのでぜひ皆さんも試してみてください。

それはそれとして、このデッキも以下の欠点を抱えていました。
・エンチャントに触る手段がほとんど無い
・追放除去に弱い
・横並べをロードされると対応手段がない

つまり、ドメインランプと婚礼の発表が死ぬほどきついという欠点でした。

思ったより良いデッキになった手ごたえがありプレイインに臨みましたが、無限にドメインに轢き殺されてしまい、突破することなくお蔵入りのリストになりました。

また、このときから、シナジーしていないコウモリは大して強くないということも感じていました。コウモリはギックスやラフィーンがいてこそ輝くカードであり、正直なところあまり積極的に入れたいカードではありませんでした。

3. サンダージャンクション実装

待ちに待った新環境はとにかくいろんなデッキを作りました。
いくつか没デッキを供養しておきます。

ラクドストークン(アクルから切り裂き魔踏み倒しデッキ)
4C出来事
ラクドスミッド

個人的なお気に入りは4C出来事です。
ただ、ミッドレンジ以外のすべてのデッキに負けるので没になりました。もうちょい頑張れば形になりそうな気もします。

そんなこんなで個人でデッキを模索しながら数日を過ごしていたところ、同サーバの強豪プレイヤーからボロスアグロがやばいという話が出ました。(金曜夜)

慌ててみんなで回してみたところ、相当デッキパワーが高いことがわかりました。とにかく爆発力が高い。アグロ耐性の高そうなエスパーミッドすら一瞬もたつくと轢き殺してしまいますし、ゴルガリもgoldfishから取ってきたようなリストでは太刀打ちできそうもありませんでした。

その日はリストを共有して、翌土曜日に全員で回して知見を共有しました。
さらに紙のエリア予選のメタゲームの情報も出してもらいました。
アリーナで回している面子で、瞬く間に各デッキに対するサイドプランや変更候補のカードが出るとともに、期待していたほど圧倒的ではないことが明らかになってきました。特にエリア予選では想定よりミッドレンジがかなり多く、ドメインがほとんどいないという情報や、ゴルガリのリリアナ採用型にかなり相性が悪いという現状が見えてきました。

ここで一緒に調整していた私含めた調整メンバー3人は全員異なる方針を取りました。
私はアグロにしっかりガードを上げられる自作グリクシスミッドレンジ、
はじめまどかさんは全員で調整したボロスアグロ、
もう一人は青白コンを選択しました。

結果は、トップ8になった私のグリクシスがよかった、わけではなく、
なんと3人とも5-2という結果を残しました。
アグロ、ミッドレンジ、コントロールという全員がまったく異なるデッキを持ち込んで同じ成績をたたき出すなんてことがあるとは。
もはやまったく「ゆるく」ない結果に笑ってしまいました。ゆる鯖とはなんだったのか。
ちなみにもうひとり一緒に調整していたtAchiさんは寝坊で0回戦敗退しました。何をしているんだ!!!

他の2人のデッキ選定の細かい話はわからないので、私のデッキ構築の細かい話に移ります。

4. グリクシスミッドレンジ構築

ここまででお察しと思いますが、この時点で前日の夕方です。(まじか)
さて、ここからは伏線回収のお時間です。

ここまで出てきた話でポイントになるのは以下です。
①グリクシスはドメインと婚礼に弱い
②コウモリはシナジーしないと弱い
③果敢アグロにはリリアナが有効

まずドメインランプが少ないと聞いた時からグリクシスの可能性を模索し始めました。

そこで目を付けたのがこの2枚でした。

悪事最強コンビ

悪事というメカニズムはコウモリとシナジーしており、コウモリを強く使えるようになります。ミッドレンジには多くの単除去を採用する関係上、悪事達成には事欠きません。マグダで宝物が出ることでマルチェッサの効果起動によるテンポ損もある程度軽減できることも高評価です。

さらに前回発見した墓地の侵入者はただでさえ強かったのにさらに悪事要員という新たな役割を手に入れ、このデッキにおける最強カードとなりました。

除去耐性+墓地対策+悪事要員+優秀クロック+ライフゲイン 全部盛りカード

ここでほかの悪事候補にはチビボネの加入などもありました。

何度か回しましたが、序盤に引かないと限りなく弱いという欠点がありました。そのために4枚入れるのか?と考えたときに答えはNOでした。神デッキの研究で得た「弱い1マナを入れるとデッキパワーが下がってしまう」という知見を踏まえて採用しませんでした。
実際グリクシスカラーの都合上1ターン目はタップインのことも多く、かなり使いづらいうえに、そもそもいなくても悪事に困ることは少なく、リスクのほうが大きいと判断しました。

また、コントロールに対しても有利に立ち回る方法として機体に目をつけていました。青黒、青白ともに全除去を多く積んでおり、クリーチャーの横並べは危険です。ミシュラランドが本来強いのですが、土地破壊が横行しており、前述のとおり能力土地は信用度が低く不十分だと考えました。そこで軸をずらすために4マナ帯にはシェオルではなく喧嘩腰号を採用しました。搭乗3は他デッキではかなりハードルが高いのですが、グリクシスは税血の収穫者がいますし、殴りにくいマルチェッサのスタッツも活かせます。

自分、グリクシス限定の銀行破りやねん

さらに宝物が出ることでマグダとシナジーしつつ、一回殴れば殆どの確率で2~3ドロー分の活躍をしてくれます。リリアナや1:1交換でリソースを絞ったタイミングで定着させれば一方的にリソース差をつけられるうえに全除去に当たらないということでミッドレンジ~コントロールの相手用に採用しました。
振れ幅はあるものの、シェオル採用よりは安定していたのではないかと思います。
あとはこれを採用することでオシャレさを出して相手を威圧する効果もあります。(どやあ)

他にも追加でサイドに負け犬と溶鉱炉を取ってコントロールに有利に立ち回れるようにしました。

最後に、リリアナを入れるかはかなり悩んだのですが、エリア予選がミッドレンジが多かったという情報を踏まえて、召集に当たったときにリリアナを引いたら潔く腹を切ろうと決めて採用しました。

実際はこれが大当たりして、スイスのほぼすべてのマッチで活躍しました。特に赤単とボロスにはしっかりと仕事を果たしてくれました。
そうして出来上がったのがこのデッキです。

5. なぜこのデッキを作れたのか

ここまで長々と前環境の話からデッキ構築までの説明をしましたが、デッキ構築の際に考えた指標はすべて前環境の神ディミーア研究による知見から派生したものでした。

元々は他の人のためにと思って始めたデッキ研究がすべて自分のデッキ構築の糧となったのです。

最終的に誰も同じデッキは握っていませんし、僕のグリクシスミッドレンジと青白コンはお互いに共有すらしていません。
当日に、え?そんなデッキ使うの?という話をしていたほどです。

傍から見れば、各々が勝手に調整してそれぞれデッキを持ってきたように見えるでしょう。というか、事実そうです。
それでも、僕らはたしかにチームとして機能し、互いが互いに価値を提供していました。

環境にあるデッキを研究し、有効なカードを模索し、知見を共有する。
その結果、結論がそれぞれ異なってもいいのだと感じました。
プロの人たちのようにチームで研究して一つのデッキを持ち込むことだけがチームではないのです。

我々は特にチームとして活動しようと決めてすらいません。ただなんとなく毎夜集まっては雑談をし、MtGの話をしていただけです。
これからもそれはきっと変わらないでしょう。今回は4人が主流でしたが、他にも来てくれる人がいます。4人を含め、来てくれる誰もがチームであり、誰もチームではありません。そもそもチームなんて形はどこにもありません。

他のサーバでの通常の意見交換や交流とも異なるなんとも名前のつかない仲間意識を共有しながら、全員が好成績を出せた不思議な体験は非常に得難いものでした。

6. さいごに

ここまででひとつ回収されていない伏線があります。そう、婚礼の発表の存在です。

ぶっちゃけ完全に忘れてましたが、奇跡的に婚礼の発表を採用しているデッキには一度も当たりませんでした。(ラッキー!!!)

ちなみにラダーでは普通に婚礼採用型のエスパーが多くいるのでまったく勝ちません。
ラダーの勝率がめちゃくちゃ低いので、まさかこんな良い結果が得られるとは思わず、マジックは本当に奥深いゲームだなと感じました。

ラダーとはメタが違うから・・と震えながら自分に言い訳して持ち込んだらこんな結果が転がり込んできて、正直一番驚いたのは自分です。

ちなみにラダーではじめまどかさんのボロスアグロ改めて回したら強すぎてビビりました。

自分のデッキはかなり強めに鳥対策を入れているので、マッチすればこちらが有利ですが今後ラダーで握るなら断然ボロスのほうがおすすめです。

ではでは、初めての入賞振り返り記事でした。
とはいえ、トップ8のなかで一人だけ5-2ですし、実力不足を痛感する大会でもありました。次回は堂々とトップ8に入ってもっといい成績を残せるように頑張ります!

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