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カードゲーマーコミュニケーションの悲哀と憂鬱

私はカードゲーマーである。主にマジック・ザ・ギャザリングというゲームを行っており、MTG Arenaのゲームでのランクは大体毎月1200位以内に入るくらいにはしっかりカードゲームをしている。

しかし、私はカードゲーマーと上手くコミュニケーションが取れない場合が非常に多く、よく疎外感を感じている。
今回はそんな私が初めてカードゲームのDiscordに入ったり、カードゲームのショップ大会に出たりしたときのエピソードを紹介する。
最初に断っておくが、個人特定を避ける意味もあり、誇張や嘘を交えているため、あくまでフィクションとして楽しんでいただければ幸いだ。

ここに、陰キャ一般人のカードゲームコミュニケーション奮闘記の幕が上がる。

1. カードゲーマーにはオタクしかいない

いきなりだが、会話するうえで本当に困っていることのひとつがこれである。
私の体感だが、カードゲーマーの大半がオタクであり、オタク趣味の会話ができないと本当に会話が続かない。
カードゲームの話のほかに出てくるのはアニメやネットスラング、Vtuberといったオタク親和性の高いトークばかりである。

まだアニメなどであればそれなりに見るのでついていけることもあるが、ネットスラングが本当に厄介極まりない。皆当然のように2ちゃんねるやニコニコ動画の有名な動画を履修しており、その話が会話でたびたび出てくる。

私はといえば、高校当時は部活の練習でほぼ毎日が終わっていたし、趣味のロックバンドはアニメなどのオタク文化とは畑違いらしくあまり話は通じない。
さらに、MTGのDiscordに入ったときはSNSすらやっていなかった。
唯一アカウントを持っていたFaceBookも10年近く前に友人に勧められて作ったものの、海外で出会ったタイ人の日常が流れてくるだけの虚無になってしまっている。
そんななかでSNSなどのネットミームの流行りで盛り上がられても、無限に私の知らない身内ネタを話されるようなものである。
説明されても、「うん・・そうなんだ・・」以外の反応もしづらい。
そもそも身内ネタなんてその場でリアルタイムで見ていないと後から説明されても面白くないことも多い。

ほぼすべての固有名詞もわからず、当然笑いどころもわからないので、くそ陰キャよろしく愛想笑いしかできない日々が続いた。こんなにもコミュニケーションが苦手なのだと人生で初めて気づいた。
しかし、仕事で会った人とはすぐに会話が弾んで仲良くなることも多く、そのたびにオタク世界への恐怖が身体を支配し、気づけば手はぶるぶると震え、奥歯がカチカチと音を鳴らしていた。

マンガやアニメ、小説、ゲームなどはそれなりに好きでよくやっていたので、周りからオタクっぽいと言われることも多々あったが、自分はオタクではなかったのだとこれ以上ないほど思い知らされた。

まさに井の中の蛙大海を知らず、そもそも井の中にいたつもりも無いのだが、気づけば井の中に飛び込んでしまい、さらには大海をみせつけられる拷問を受けている。
私にはその大海は、ひどく淀んで見えた。

2. なんならカードゲームの話もわからない

カードゲーム好きで入ったコミュニティなんだからカードゲームの話をすればいいだろ、と思った方も多いと思うが困ったことにカードゲームの話も分からないのである。

特にMTGはなぜかカード名を英語や略称などで言われることが多く、もう本当に何を言っているのかわからない。「強迫」というカードを口にすれば、なぜか英語名の「duress」と訂正され、別のカードも当然のように英語名で言われるし説明もしてもらえないので一切話が通じない。
そもそもカード名をきちんと言われることのほうが珍しく、本当に同じゲームをやっているのか疑わしくなるほどである。

さらには「言語化」とみせかけた謎のお気持ち表明を突然受けることも非常に多く、感情的な話をさも理屈っぽく話されて、「俺は正しいだろう?」みたいな顔をされることも少なくない。生物系出身の自分からすると、教科書の内容ですらある日突然変わってしまうことを身に染みているので、正しいと言えることなんてほとんどないと思うのだが、もうこの世の真理のように持論を話されてしまうので困ってしまう。

そんな人ばかりなので、たまに「僕はこっちのほうがいいかなって思ったんだよね~」みたいな話し方の人に出会うとすぐに好きになってしまう。もうその話し方をしてくれるだけで仲良くなりたい。消しゴムを拾われて恋に落ちてしまうピュアボーイの心持ちである。

3. 詳しくないカードゲームの話はもっとわからない

ここまではある程度しっかりやっているマジック・ザ・ギャザリングでのエピソードだったが、Discordサーバで仲良くなった友人に誘われてシャドウバースエボルヴを始めた。
大昔にアプリの方のシャドバはやっていたことがあるので、ルール自体はそこまで苦戦せずに覚えることができ、いざショップ大会に出た時のことである。

まったく雑談してくれない人や、一人でブツブツ反省会を続ける人と当たりもしたが、Discordでそういう人もいるということは理解していたので、そのままRoundを進めている(既に楽しめていない感)と、非常に人当りの良い方と当たり、楽しく会話をしながら進めることができた。

しかし、よかったのはここまでで、感想戦などで環境デッキなどについて懇切丁寧に説明してくれるのだが、そもそも環境内の主要カードも覚えていないのでやっぱり何を言っているのかわからないのである。

説明を受けるにもこちらに受け皿を用意できていないので、説明内容の大半は手から零れ落ち、私の足元はずぶ濡れてぬかるんでいる。それでもなんとかくみ取ろうと足元の泥をかき集める私の醜態はさぞや滑稽だったであろう。

もう本当にカードショップの大会に出ておきながら言うことではなくて申し訳ないのだが、「カードゲームの話やめませんか?」という言葉が喉元まで出かかりながら、親切な方の説明やアドバイスを無言で聞いていた。

4. 謎の「先生」と「親友」がたびたび現れる

Discordで配信しながら、友人と遊んでいると謎の「先生」と「親友」が現れることがある。
まずは「先生」のほうだが、逐一こちらのプレイや構築に対して口を出してくるのだ。そっちのほうがいい、こっちのほうがいい、とアドバイスめいたことを言ってくるのだが、そもそも私は一緒に遊んでくれる人を探しに来たのであって、教えを乞いに来たわけではないのでシンプルに煩わしいことこの上ない。さらには蓋を開けてみれば、自分よりも遥かに下のランクだったりするのでもはや意味がわからない。画面を見れば自分より上のランクにいるとわかるのに、なぜそんな上から来れるのだろうか?
もっと上手くなりたいので教えてほしい、と私がその人に頼んでいたのならともかく、突然現れて謎の指導が始まるのである。
お前は無能な亀仙人か?と突っ込みたい衝動に駆られる。
「こっちにしたほうが得だったかも」とか「それすると損するかも」みたいなやわらかい言い方にしてくれればよいのだが、謎の「先生」ぶりを発揮して指導の体裁を取ってくるので本当に勘弁していただきたい。
教師や自分より格上の人に言われたとしてもイラっとするのに、顔も名前も知らないろくにしゃべったこともない人に言われても平静でいられるような菩薩の心は残念ながら持ち合わせていない。

さらには「親友」も現れる。まるで10年来の友人かのように、何やってんだよ、みたいなことを言ってくるのである。さらには、会話の中でも常にマウントを取りたいらしく、「当たり前でしょw 何言ってんの?w」みたいなことを延々と繰り返されるのだ。私は学生時代は運動部に所属していたこともあり、それなりに礼儀を口うるさく言われていたので仲良くない人にタメ口を使われるだけでもかなり嫌な気持ちになってしまうのに、急に肩を組んで話しかけてくるのだから勘弁してほしい。この人は学生のときにヤンキーに急に肩組んで親し気に話しかけられて、うぜえな、と思ったことないのかな・・逆にネットでしかできないであろうヤンキームーブで自らを慰めているのかもしれないな、などと思いを馳せずにはいられない。

いや、私がそう感じていないだけで実はどこかのタイミングで友愛を育んでいたのかもしれない。世の中は広いのでそういうこともあるかもしれない。
だとすると大変申し訳ないのだが、初対面からやり直させてほしい。
今度は絶対に仲良くならないようにするのでどうかよろしくお願いします。

5. じゃあお前は何の話がしたいの?

ここまでつらつらと文句ばかり言ってきて、じゃあお前は何の話がしたいの?と皆さん思っていることだろう。

もうね、海外旅行の話とかしたい。仕事とかプライベートであったトンデモエピソードとか、兄弟とか自分の身にあったヤバイ話とかがしたい。
事前知識なんもなくても笑える話がしたい。無駄に意見とか戦わせない話がしたい。

ショップ大会でもできれば、「今日夜勤明けで手震えてるんスわ・・」みたいな話をしてほしい。もしくは会場間違って30分走って汗だくになったうえに0回戦敗退したとか、出張にデッキ持っていったら無くしたとか、そういう話をしていたい。
競技とか環境的な話は、自分が認めている人と出来ればそれでいい。

自分の持論や知識で特に勝ち負けも決まらない謎のポケモンバトルを挑まれ続けるだけの会話はこんなにも疲れるのだと、この界隈に来て私は初めて知った。

酒を飲みに行っただけなのに一生ワインの品種について話してマウントをとってくるような会話はもううんざりである。酒は飲みたいが酒の話がしたいわけではないのだ。
マウンティングマウンテンに登るのに私を巻き込まないでくれ。

6. さいごに

適当に話をつなげていくと、なんか最後ちょっと切ない感じになってしまったが、要は新しく来た人に無駄に情報を投げつけるような会話はしないように気を付けたいと、最近の自分自身に対する戒めの文章を残しておきたくて今回この記事を書いた。
最近は随分カードゲーム界隈の雰囲気にも慣れ、自分が昔つらかったようなムーブをしてしまっているかもしれないと思ったので、そうならないように気を付けていきたい。

苦労はあったものの、何人かの友人に運よく出会いそれなりに楽しくカードゲームをできているので、もし興味がある人は恐れず飛び込んでみてほしい。その中で上記のような人や状況に出会ったら、進研ゼミで見たやつだ!と笑い飛ばしてくれれば何よりである。

いや、やっぱり少し恐れたほうがいいかもしれない。

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