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奥深き"アドバンテージ"の世界に踏み込む ~基本を深堀してみるリミテッド入門 Part.4~

※この記事は全文無料で読めます
さて、ついにマナカーブ編を終了し、アドバンテージ編になります。まずは基礎の基礎、アドバンテージの種類から入っていきましょう。

1.アドバンテージの種類

アドバンテージの種類について、細かく分ければいくつもありますが、よく議論になるものとしては、以下の3つがあげられます。
①カードアドバンテージ
②ボードアドバンテージ
③ライフアドバンテージ

MtGの試合は基本的にこのアドバンテージの奪い合いになります。
これらのアドバンテージを取ることは勝利に直結しますが、一方で一つのアドバンテージを奪っていても、他のアドバンテージを奪われて負けてしまうこともあります。
わかりやすい例としては、アグロ対コントロールですね。手札は大量にある(カードアドバンテージはある)にも関わらずライフがもたずに負けてしまう経験があるかと思います。

これらのアドバンテージという概念は多くの人が知っていると思いますが、一方で、それを踏まえてどうすべきかまで一般化して語られることはほとんどありません。そのためプレイ指標も各々のプレイヤーの中にしか無く、言語化されていないことが多いですし、そもそもどういった状況がアドバンテージを奪ったといえるのかも定かではありません。

本記事は、これらのアドバンテージを可能な限り明確に定義し、正しく有利不利を評価して一貫性のあるプレイングを作り上げることを目指します。
(私も一貫的なプレイができていないので目的を達成できるかはわからないですが、一緒に勉強していきましょう!)

2.カードアドバンテージ

2-1.カードアドバンテージについて

ではまずはカードアドバンテージから考えていきます。

そもそもカードアドバンテージはなぜ重要なのでしょうか?
それは、相手より多くのカードをプレイできるからですね。多くプレイした分、ライフアドバンテージやボードアドバンテージを奪うことができます。
逆に、カードアドバンテージは他のアドバンテージに変換しなければ勝利することはできません。デッキすべてがドローカードで40枚引いても盤面を覆せないのでは意味がないですからね。
つまり、カードアドバンテージは他のアドバンテージと交換することで勝利をもたらすものであり、未来のアドバンテージ総量と言い換えることができます。

未来のアドバンテージ総量で勝っているのであれば、それをすべてプレイしきったとき、確実に他のアドバンテージを奪っているはずです。逆に怖れるべきは、先ほど例にあげたようにそれらを使う間もなく負けてしまう場合です。そのため、カードアドバンテージを持っている場合は試合を長引かせる、あるいは少しでも早く使い切ったほうが勝利に近づくはずです。

2-2.カードアドバンテージを評価する

カードアドバンテージを定量的に見る指標を考えてみましょう。
それはお互いの手札の枚数ですね。
しかし、本当にそれだけでしょうか?
たとえば相手の手札がすべて土地であればどうでしょうか?
戦場にカードを引くパーマネントがある場合は?
手札の枚数だけでは有利不利を本当に推し量ることは難しいです。

こちらが本当に知りたい情報は、相手が唱えられるスペルの枚数です。
それらを知るためには、相手のどんな行動がヒントになるかを考えてみます。
例えば以下の動きがあげられます。
①土地をプレイしなかった
②奪われたアドバンテージを取り返しに来ない(カードを唱えない)
③カードを捨てた
④インスタントタイミングで停止した(Arena限定)
⑤ドローをした
⑥ドロー可能なパーマネントを置いている
⑦占術した
それぞれ見ていきましょう。

①土地をプレイしなかった

これはわかりやすいですね。まず考えられることは、相手の手札に土地がない場合です。もちろんデッキによって違いますが、6枚以下で土地をプレイしなかった場合は相手の手札はすべて何らかの呪文であると考えられます。
一度この現象が起これば、相手が2枚以上のドローをしなければ相手の手札に土地が残っていることはありません。
もう一つの可能性としては、相手に十分な土地があってブラフとして手札に持っている場合ですので、相手に土地が十分ある場合のみブラフの可能性を検討しましょう。
次の②と組み合わせることでブラフを看破することも可能になります。

②奪われたアドバンテージを取り返しに来ない

続いて、奪われたアドバンテージを取り返しに来ない場合も相手の手札を推測することが可能です。例えば強力なクリーチャーを場に出して盤面をひっくり返したときや、コンバットトリックなどで1対2交換しようとしたときです。そのときに相手が打ち消しや除去を撃たない場合、相手の手札にはそういったカードがないということが分かります。限定的な打ち消しや除去、クリーチャーなどのカードしか持っていないということですね。
一方で、多少奪われても温存するケースもあります。プレイヤーによって判断基準は変わると思いますが、アドバンテージの有利不利が変わらない状況では温存されてしまうでしょう。今撃たれたらアドバンテージを奪われるという状況で撃ってこないということは手札に唱えられる種類のカードがないということになります。

③カードを捨てた

続いて、カードを捨てる動作をした場合です。自分で選べるのであれば、多くの場合土地やすぐに唱えることができないカードを捨てるはずでしょう。しかし、もしも相手が唱えられるカードを捨てている場合は以下の場合が考えられます。
a.相手の手札にはスペルしかない
b.土地を置いて、強力なカードを唱えようとしている
bの場合でも、おそらく土地を2枚以上残すケースは少ないでしょう。相手の手札には土地が1枚あるかどうかで残りはスペル、という判断はできそうです。

④相手の優先権で停止した(Arena限定)

相手が停止した場合について考えます。
arenaであれば、相手に優先権が渡った場合になんらかのアクションが実行できる場合、一時停止が発生します。このとき、以下の観点に着目する必要があります。
a.相手が出せるマナ総数
b.停止したタイミング
c.起動型能力の有無

相手のマナ総数がわかれば唱えられるカードのマナコストを推測することができます。例えば4マナ残っている場合に停止して、2マナで停止せずに流れていった場合、3マナのスペルを持っていることが推測できます。
続いて停止したタイミングですが、停止したタイミングには二つのパターンがあります。
a.フェイズ移行時の優先権
b.スペルや能力起動を行った場合の優先権

a、bともにブラフを行うことが可能です。
一度は停止したのに次の優先権では停止しない、などが発生すればブラフの可能性が高いので目を光らせましょう。
一方でブラフをこまめに行うことは思っている以上に難しい上に面倒です。ミシック上位でも行っている人はあまり多くないためブラフについては考えすぎないほうがいいかもしれません。

⑤ドローをした

新しくドローをした、ということも重要な情報です。
ライブラリは現在場に出ている土地枚数からおおよそ土地とスペルの割合が想像できます。つまり、新しく引いたカードはX%の確率でスペルである、ということが想定できます。これを踏まえて考えると、例えば3枚まとめて引いた場合は土地が1枚以上含まれている可能性は高いといった判断が可能になります。いつドローしたカードが手札にあるのか、ということも相手のリソースを判断する要因となりそうです。

⑥ドロー可能なパーマネントを置いている

そのままですね。パーマネントの能力で何枚カードを引くことができるかの期待値も含めて検討してみましょう。例えば大量のマナが必要になる能力であれば、こちらが盤面を支配していれば盤面を対処する必要があるため能力を起動することは困難ですし、盤面が膠着していれば何度も起動されてしまうでしょう。

⑦占術をした

占術はカード自体を引いているわけではありませんが、次に引くカードを操作しているため、⑤の項目で記載したスペルを引く確率を高めることができます。相手のスペルの枚数をカウントするためには上に置いたか下に置いたかも含めて重要な情報となります。

他にも細かなサインはあるかもしれませんが、これらの情報から相手と自分のカードアドバンテージを枚数差で定量化できそうです。しかし、まだこれだけでは有利不利を定量化できただけで、それがどこまで勝敗に影響するかはまだ不明瞭ですし、だからどうすべきか、というアクションに落とし込むことは難しそうです。定量化したアドバンテージをどのように判断できるかについて考えてみましょう。

では続いて、どの程度アドバンテージを奪えば勝利をつかむことができそうでしょうか。もちろんほかのアドバンテージをどれくらい奪われているかにもよるのですが、他のアドバンテージがすべて同じだったと仮定してみましょう。例えば1枚だけであれば、次のドロー次第で優位性は失われてしまいます。とても十分とは言えなさそうですね。2枚であればどうでしょうか。2枚でも、例えばコンバットトリックなどで不利な2:1交換を受けてしまうと簡単に並ばれてしまいますね。3枚であれば、これをひっくり返すには絶望招来などの強力カードを引き込まねば並ぶことができないと考えると、3枚以上あれば優位に立っているということが言えそうです。そして4枚を超えるとこれらを1枚でひっくり返すことは困難になります。

つまり、ざっくり以下のように状況を整理できそうです。
ここまで考えると、戦い方も見えてきそうです。カードアドバンテージで勝利することを目指すコントロールであれば、3枚以上のアドバンテージを奪うことが重要になりますし、逆にアグロであればそこまで奪われる前に他のアドバンテージを奪いきることを目指すことになります。

では、これらの状況を踏まえてまずは十分に有利な状況を作るために、カードアドバンテージを奪う動きについて考えてみましょう。

2-3.カードアドバンテージを奪う方法

①追加ドローを行う

最もシンプルな方法ですね。相手より多くのカードを引けばより多くのカードアドバンテージを得ることができます。一方で、ドローをするだけでは勝てないため、ドローをするカードとそれ以外のカードをバランスよく入れることが重要になります。最低限一対一交換をできるカードにたどり着かねばドローしても意味がありません。

②相手のリソース源を奪う

こちらは、自分が増やすのではなく相手のリソースを減らすことが目的になります。例えば複数枚のハンデスを強制したり、銀行破りなどドロー可能なパーマネントを破壊することで可能になります。これらの行動は結果的に一対一交換になることが多く、多くのアドバンテージを奪うのではなく、相手にアドバンテージを取らせないための負けない選択になることが多いです。
つまり、他のアドバンテージで勝つことを目的としたデッキがカードアドバンテージで差をつけられないために使われるということですね。
特に相手が選ぶタイプのハンデスの場合は使うタイミングが重要になります。相手の有効札2枚を捨てさせることが最も価値があるため、相手に土地などの不要札がないタイミングを見極めることで効果的にアドバンテージを奪うことができます。2-2の項目で説明した情報を使って見極めましょう。

③ルーティングや占術を行う

ルーティングや占術も同様にアドバンテージを奪うことができます。それは不要札の存在によるものです。試合が進めば進むほど序盤に活躍するカードの価値は下がり、1枚分の価値にはなりません。逆に後半にしか活躍しないカードを前半に持っていても意味がありません。これらを他のカードと入れ替えることで1ドローに近い価値を持たせることができます。
不要札を正しく評価するためには「キルターン」を考慮しましょう。現状からどちらかが勝利にたどり着くのは何ターン目になるのかを考えることでカードが有効札かどうかを見極めることができます。
・想定キルターンをもとに要/不要を判定する
・土地が不要になる後半は価値が上がる傾向にある
この2点を意識して行うとよさそうです。

④他のアドバンテージを奪う

カードアドバンテージは他のアドバンテージに変換して効果を発揮するという特性上、他のアドバンテージを奪われるとカードアドバンテージを代替していきます。例えばボードで優位を取っていれば除去カードを手札から唱えるしかなくなります。1枚分にも満たないカードに除去を使わせればアドバンテージをうばっていくことになるでしょう。

これらのアクションでカードアドバンテージを獲得することができそうです。

2-4. カードアドバンテージを奪ったときの立ち回り

ここまでで、どのようにカードアドバンテージを評価し、どのように奪うことができるかを考えました。
最後に、奪った後のことについて考えます。
前述と繰り返しにはなってしまいますが、カードアドバンテージは未来のアドバンテージ量になるので、以下2つのどちらかが基本戦略となります。
①試合を長期化する
②ダブルアクションでボードの優位を築く(他のアドバンテージに早く効率的に変換する)

つまり、ここからいえることは、ボードやライフで大きく不利に陥っていないのであれば、リスクが低くアドバンテージを奪えるタイミングを確実に狙いましょう。
仮に中々訪れなくても、それは相手も攻められていない状況なので、結果的に試合を長期化させることにつながっています。圧倒的にボードやライフで負けている場合は今すぐ取り返すためにリスクを背負う必要がありますが、そうでなければ”待ち”が重要な戦術になります。リスクやボードの奪い方については後述します。

3.ボードアドバンテージ

3-1.ボードアドバンテージについて

続いてボードアドバンテージについて考えてみましょう。
ボードアドバンテージは獲得することで、安定して相手のライフを減らすことができ、勝利に直結する部分になります。同時に最も奪いやすいアドバンテージでもあるため、アドバンテージ争奪戦の主戦場となるものです。

3-2. ボードアドバンテージを評価する

さて、まずはボードアドバンテージの指標です。まずぱっと思いつくものとしては、"パーマネントの数"ですね。しかし、それだけではありません。例えば以下の状態のとき、有利なのはクリーチャーの少ないプレイヤーになります。

なぜ有利なのかと考えると、ダブルブロックしたとしても5/5を倒すことは叶わず、2/2が2体一方的に撃ちとられるためですね。つまり、お互いのクリーチャーのパワー・タフネス総量がアドバンテージに関与していると言えます。

では、以下の状態ではどうでしょうか。

パワー・タフネスの総量ではこちらが上回っていますが、こちらが5/5でアタックするとダブルブロックされて4/4と交換になってしまい、有利な状況とはいえません。さらにこういった状況も考えてみましょう。

5/5クリーチャーに接死がついていれば明確に有利になりますね。5/5でアタックすれば相手は2体犠牲にするか、ダメージを受けるしかありません。
一方相手は2体でアタックした場合、ダブルブロックで片方失って残るのは4/4が1体だけです。そうしてしまえば、こちらが5/5接死に対して相手は4/4になり明確に有利です。つまり、単純なパワータフネスの総量だけではなく、戦闘後にどのような状況になるのかも重要になります。

これらを踏まえたうえで、ボードアドバンテージを奪った状態とは、
”今回の戦闘以降も継続して攻撃を行うことができる状態”と定義できそうです。それはつまり、アドバンテージをどちらも奪い切れていない場合は、どちらも攻撃できない"膠着"状態となることも意味します。
また、上記で説明したパワータフネスの総量やクリーチャーの数は膠着状態の中での有利不利の指標になりそうです。

では戦闘後の状況を判断するために、以下の事を考えてみましょう。
①相手のターンの攻撃に耐えられるか?
②次のターンも攻撃することができるか?

①相手のターンの攻撃に耐えられるか?

まずは相手のターンの攻撃に耐えられるかを検討します。
そのためには、こちらのアタックを相手がブロックするかどうかの場合分けが発生します。例えば、シンプルに以下の場合を考えてみます。

2/2接死で攻撃した場合、相手がブロックしてくれればこちらの2/2のみが残るため、"今回の戦闘以降も継続して攻撃を行うことができる状態"を作ることができます。しかし、相手がブロックしてくれなかった場合、4/4で攻撃されてしまい、2/2が一体しかいないこちらの盤面では対応できません。ダメージレースで負けてしまうため、攻撃すればするほど不利になります。
つまり、相手にブロックされてもスルーされても、どちらであっても攻撃し続けられる状態でなければボードアドバンテージを取ったとは言えません。
それぞれの状況について、相手のターンの動きまで検討してから判断しましょう。
そして、その組み合わせはクリーチャーが増えれば増えるほど爆発的に増加していき、プレイミスの可能性が上がります。対して防御側プレイヤーは、相手の攻撃選択後に選択するため、検討する選択肢が攻撃側と比べて半減します。原則として横並べは守備的な動きだと理解しましょう。(そうでない場合については、ライフアドバンテージの項目で記載します)

②次のターンも攻撃することができるか?

続いての検討事項は次のターンに自分が攻撃することができるか、です。以下の場合を考えてみましょう。

この場合、このターン、2/2で攻撃しても、次のターン4/4は接死持ちがいるせいで攻撃することができません。しかし、次のターンからは前述の状況になってしまい攻撃することができません。この状況はつまり、”ボードアドバンテージは奪えていないがライフを詰めることができる状況”と言えるでしょう。

以上のことから、①を検討することでこのターン攻撃するべきかを判断でき、②を検討することでボードを奪っているかを判断できそうです。

ここまでの整理です。
・ボードアドバンテージとは、”継続的に攻撃を続けられる状況”を指し、
 ”有利” ”膠着” ”不利”の3つの状態がある。
・膠着状態の細かい状況判断にクリーチャーの数とパワータフネスの総量が参考になる
・以下を検討することでボードアドバンテージの状況を把握できる。
 ①相手のターンの攻撃に耐えられるか?
 ②次のターンも攻撃することができるか?

3-3.ボードアドバンテージを奪う方法

では、ここまででボードの現状を把握することができました。ボードアドバンテージを奪う方法をさらに考えていきます。
大まかには3つにわかれる認識です。

①除去を撃つ
②コンバットトリックを使う
③クリーチャーを出す

それぞれについて考えていきましょう。

①除去を撃つ

除去によってボードアドバンテージを考えるうえで重要なのが、”効いているクリーチャー”を見極めることです。以下の例で考えてみましょう。

盤面のクリーチャーには少なからず役割が存在しています。
それぞれの役割を把握するために、破壊されたときの盤面を考えてみます。
仮に4/4を失ってしまった場合、"膠着"と"有利"の両方を失ってしまいます。

2/2の場合は"有利"を失ってしまいます。
(お互いに攻撃できない状態)一方で相手の盤面で役割を持っているのは5/5のみであり、1/1は何の役にも立っていません。つまり5/5を除去することによってのみ、アドバンテージを奪うことができます。このように役割を持ったカードを見極めることがボードを奪う上で重要になります。

飛行が残ったとしても、ダメージレースが6点同士になるので同じことですが、相手の1/1を破壊することでも有利を勝ち取ることができます。

こちらとしてはクリーチャーが3体いますが、上の図のとおり4/4がすべてを支えるカードになっています。また、同時に代替のクリーチャーをどの程度出しやすいか、ということも検討が必要です。例えば、2/2と2/2飛行ではどう考えても2/2飛行のほうが代替クリーチャーを出すことが困難です。4/4と2/2飛行では環境に依りそうですね。今の盤面であれば、4/4のクリーチャーを破壊されても3/3以上のクリーチャーを出せればボードを奪い返せます。相手が青など飛行の多い色であれば4/4を、緑などファッティが多いクリーチャーであれば2/2飛行を破壊されると、より継続的にアドバンテージを奪われてしまいます。
以下のことに気を付けて除去を行いましょう。
・役割を持っているクリーチャーを見極める
・代替クリーチャーが出てくる確率が低いクリーチャーを優先する

②コンバットトリックを使う

コンバットトリックも基本的には除去と変わらず、相手の”役割をもっているクリーチャー”を破壊することが目的になります。
大きな違いは、戦闘を絡めることが条件となり、得られる利益が不安定になる(相手の選択にゆだねられる)ということです。一方で得られる利益も大きく、ハイリスクハイリターンなプレイになります。

上記のような盤面であれば、単純に除去を撃つと2/2を1体破壊するだけでダメージレースで1点分の有利しか築くことができませんが、コンバットトリックとして使用すれば3/3で残りの2/2も一方的に撃ちとることができます。
これによりこちらの3/3で一方的に攻撃することができ、より有利なボードを作ることができます。また、注目ポイントとして、インスタントの除去はコンバットトリックとしても使える点がポイントになります。

自分のクリーチャーを強化するような呪文はコンバットトリックとしてしか使えないうえに、ブロックされなければ相手のターンに4点のダメージを受けてダメージレースで負けてしまいます。
(つまりボードの状態は"膠着"といえる)

インスタント除去であれば、仮にブロックされなくても2/2を1体破壊することでダメージレースでどちらにしても有利になります。
つまり、ブロックされなくても良し、ブロックされればなお良し、という形になります。
一方除去であれば、破壊して3/3対2/2になるためボードアドバンテージを奪うこと自体は可能です。
つまり、カードの有効性という意味では、
インスタント除去 >ソーサリー除去 >パンプカード
ということになりますね。ただし、パンプもコンバットトリックを成功させれば最大値を取ることができるため、非常に振れ幅の大きいカードといえます。 

ここまでで、コンバットトリックはハイリスクハイリターンであることがわかります。そこでコンバットトリックを試みるうえでのリスク管理について考えてみます。
リスクの低いタイミングとは、例えば以下が挙げられます。
a. 相手の土地がフルタップになっている
b. 相手がインスタントなどの呪文を持っていない
c.  防がれたとしてもアドバンテージを奪われない

aやbはわかりやすく、コンバットトリックなどでアドバンテージを奪う行為を防がれないタイミングですね。cについてもう少し考えてみましょう。

単純な戦闘で考えられるパターンとしては、図のようにいくつかあります。とりわけ注目すべきは、相手が除去を持っていた場合です。(もしくは自分のカードより強力なパンプ呪文(+3/+3など))
その場合、いわゆる2:1交換と呼ばれる状況で、相手は手札1枚しか使っていないにもかかわらずこちらは3/3と手札1枚を両方失ってしまいます。
これを防ぐためにできることとしてわかりやすいのは、例えば環境に存在するカードを把握しておくことです。インスタントの除去は黒にしかない、パンプ呪文は最大で+2/+2までしかない、といった情報があれば最悪の事態が起こる可能性がそもそもあるのかを判断できます。
もし、それでも可能性が消せない場合、どうすべきでしょうか?相手が持っていない可能性にかけるのも悪くないですが、「何もしない」ということが有効な選択になります。

相手が動くまで待つ場合、上図のようになり2:1交換という最悪の状況はどのパターンでも発生しません。そして、こちらは1:2交換ができる可能性が残っています。相手の動きを確定できない状況では、”相手が動くまで待つ”という選択肢がよりベターになります。”切り札は追い詰められたほうから先に出ていく”と理解しましょう。
また、ブロックしないという選択肢もこちらの3/3がパンプ呪文で破壊される可能性がなくなり、よりアドバンテージを奪われにくい選択になります。ライフアドバンテージで勝っているのであれば、ブロックしないということも有効な選択になります。

つまりこういうことですね。
・相手が取りうるアクションのなかでアドバンテージを奪われる可能性(リスク)を考えよう
・リスクがある場合、相手が動くまで動かないようにしよう

さらに少し別のケースも考えてみます。

このようにクリーチャーのサイズで負けている場合、ブロックして何もしないという選択を取ることができません。そのためこちらが先に動かざるを得ず、リスクが高い行動になってしまいます。このようにボードを奪っているということは、ダメージを与えられるということ以上に相手にリスクのある行動を強制する効果があります。有利になればなるほど、さらにアドバンテージを奪える可能性があるということですね。

③クリーチャーを出す

非常にシンプルですね。しかし、クリーチャーを出せばなんでもいいわけではありません。先述のとおり、クリーチャーには役割があるため何かしらの役割を持つカードでなければ意味がありません。例えば、以下の盤面で1/1が増えてもあまり意味はないでしょう。

つまり、言い換えるとクリーチャーには賞味期限があります。
後半になればなるほど、低マナのクリーチャーは役割を持つことが難しくなります。
出したまま、ライフも削れず役割も持たないのであればもはや1枚カードを捨ててしまっているようなものです。可能なかぎりカードに役割を持たせ、賞味期限が切れる前に相手の手札やクリーチャーと相打ち交換してしまいましょう。同様に、役割を持ったカードをいたずらにブロックで破壊されないことにも注意が必要です。
ただ、逆に1枚ですべてをひっくり返してしまうようなカードも存在します。いわゆる"ボム"と呼ばれるカードたちですね。自分のデッキにどんなクリーチャーが入っており、どういう役割を持たせられるのかを把握しておくことが必要になりそうです。

3-4. ボードアドバンテージを奪ったときの立ち回り

最後に、ボードアドバンテージを奪った場合の立ち回りですが、先述のとおり、カードアドバンテージと同じく"待ち"の選択になります。ただし、ここでの"待ち"とは攻撃しないという意味ではなく、アドバンテージを失うリスクのある行動をしない、ということになります。
ただし、”待ち”がリスクになる局面もあります。こちらが積極的に動かなかった結果、試合が長引いて相手にボムをひかれてしまう、ということもよくある話です。アドバンテージが逆転しない程度のリスクを負うことで試合を短く終わらせることも検討が必要です。成功した場合と失敗した場合のキルターンの差がリスクに見合うかを検討しましょう。

4.ライフアドバンテージ

4-1. ライフアドバンテージについて

最後に、ライフアドバンテージについて考えます。ライフアドバンテージの特徴は無視できないという点です。ライフを失うということは敗北と同義のため、他のアドバンテージを捨ててでもライフを守らなければいけないという事態が発生します。

4-2.ライフアドバンテージを評価する

ライフアドバンテージの指標はなんでしょうか。いうまでもなくライフポイントですね。非常にわかりやすい指標です。しかし、それだけではありません。相手のデッキに火力がたくさん入っているのであればライフ5はとても危険な状態ですが、単純なクリーチャーデッキに対してこちらがボードを支配していればライフが1であっても巻き返すこともできます。

つまり、ただライフの量だけではアドバンテージの状態を正しく把握することができません。
いくつか例を考えてみましょう。

こういった状況のとき、ボードはこちらが有利な状態です。ダメージレースでも勝っているため攻撃すべき局面ですが、攻撃すると次のアタックでこちらは相手の攻撃を防ぎきれないため攻撃することができません。
すなわち、こちらの最適な行動が制限されており、ライフアドバンテージを奪われているといえます。
もう少しライフを増やして考えてみましょう。

4つのパターンを考えてみます。まず、ライフ4の状態ではどうでしょうか。こちらはアタックしても盤面だけでは死ぬことはありませんが、相手のターンにクリーチャーを除去されると負けてしまいます。攻撃することはかなりリスクがあると言えるため、やはり行動が厳しく制限されています。
続いてライフ8の場合はどうでしょうか。
相手に除去がなければ相手の攻撃を防げますが、除去があった場合ライフを4まで詰められてしまい、この後の行動が厳しく制限されます。おそらく2/2だけで攻撃するようなリスクを抑えた選択肢を取るか、やはり攻撃をせずに守りを固める選択肢となるでしょう。特に相手に直接火力がある場合は危険に感じるはずです。

続いてライフ12ではどうでしょうか。
このあたりから選択に変化が出てくるのではないでしょうか。リスクを抑えた行動をとるか、自分のデッキタイプによっては相手のライフを減らすことを優先して両方攻撃するようなこともあるかもしれません。いずれにしても全く攻撃しない、ということはなさそうです。
ライフ16まで行くと、ライフを気にすることはほとんどないのではないでしょうか。自らが最適と考えるアクションを取るはずです。

ここまで考えると、なんとなくライフアドバンテージの指標が見えてきます。上記を踏まえてライフアドバンテージの状態を以下のように定義できそうです。
非常に不利・・直近2ターン以内に敗北する可能性がある。
少し不利・・直近で敗北することはないもののダメージレースで負けている
少し有利・・直近で勝利することはないもののダメージレースで勝っている
非常に有利・・直近2ターン以内にライフを削り切れる可能性がある。

つまり、ざっくりと相手のクリーチャーのパワー総量の2倍以下のライフしかない場合、自身の行動が制限され始めます。
ライフ2と4は"非情に不利"、ライフ8は"非情に不利"と"少し不利"の間くらい、ライフ12は"少し不利"と"少し有利"の間くらい、ライフ16は”少し有利”という区分になります。
いかがでしょうか、皆さんの感覚とはあっていますか?
ここでポイントになるのは、ライフ16の"少し有利な状態"であっても相手のライフより自分のほうが低いということですね。このことからもライフの単純な数値ではアドバンテージを図れないということがわかります。

さらにこの基準に照らし合わせると、面白いことにライフゲインは"不利"になることは防いでも"有利"にすることは難しいです。ライフゲインの採用は、ボードを奪うことと組み合わせないと効果を発揮しないということですね。
以上から、ライフアドバンテージを奪った状態とは"相手にライフを意識させて、相手にとって最適な行動を阻害できている状態"と定義できそうです。

4-3.ライフアドバンテージを奪う方法

ではライフアドバンテージを奪う方法について考えていきましょう。といっても基本的にはボードアドバンテージを奪うことがライフアドバンテージを奪うことにつながるため、ボードアドバンテージの奪い方と同じになってしまいます。そこで、この章ではボードアドバンテージの定義から外れた方法でライフを削る方法を考えていきます。平たく言うと、"一時的に優位を作りライフを削る方法"を考えていきます。

①一時的な強化呪文
②バウンス、タップ呪文、インスタント除去
③チャンプアタック
④回避能力
の4つについてみていきましょう。

①一時的な強化呪文

たとえばクリーチャー全体を+2/+1修正するなど、次のターンに持ち越さない強化呪文です。"継続的に攻撃できる"わけではないのでボードを奪う動きではありませんが、一時的に優位な状態を作って攻撃することができます。これにより相手のライフを減らし、ライフアドバンテージを奪うことができます。
主に実行するポイントとしては2点あります。1点目は、能力起動後、このターンはボード優位を取ることができ、相手のクリーチャーと最低限1:1交換ができるタイミングです。これであればボードアドバンテージを渡すことなく相手のライフを詰めることができます。2点目は、攻撃後にライフアドバンテージで"非常に有利"な局面を作ることができる(もしくは勝利する)場合です。この場合は多少チャンプアタックになってしまっても次のターン以降相手の行動が大きく制限されるため、効果的です。
※もちろんボードアドバンテージを極端に大きく奪われる場合は避けましょう

②バウンス、タップ呪文、インスタント除去

こちらもシンプルですね。次のターンには復活してしまうものの、一時的にボードから取り除くことができます。特に、タップの場合は相手の戦闘開始時、バウンスとインスタント除去は攻撃クリーチャー指定後やコンバットトリックとして利用することで、より大きくライフの差を広げることができます。
さらに、ライフアドバンテージを奪うことで相手の行動を制限させることができれば、"バウンスしたクリーチャーを出すことができない"という状態も作りだすことも可能です。バウンスは1枚使って相手の手札に1枚戻すという機能上、カードアドバンテージを奪われるアクションになりカードアドバンテージで相手が優位に立ってしまいます。前述のとおり、カードアドバンテージは長期化かダブルアクションが有効な手立てになるため、ライフアドバンテージを奪って長期化を防げば、ダブルアクションされないかぎり詰め切って勝つことができます。バウンスするカードはダブルアクションを行いにくいカードにすることもポイントになりそうです。

③チャンプアタック

チャンプアタックも有効な選択肢になり得ます。チャンプアタックとは相手に3/3がいる状態で2/2を攻撃するような、いわば1:0交換になってしまうようなアタックです。
当然ながら、ボードアドバンテージを奪われる行為なので普通はしません。
しかし、以下のような状態であればどうでしょうか。

この状態であれば、全員で攻撃すれば1体死んでしまっても4点のダメージが通って相手のライフは残り1となります。そうすれば次のターンのオールアタックですべての攻撃を防ぐことはできないため勝利することができます。
とはいってもボードの優位を自ら捨てる行為には違いないため、それに見合うだけの成果、つまりライフアドバンテージを"非常に有利"な状態まで持って行けるとき以外はあまり推奨されないでしょう。
これが、ボードアドバンテージのときに言及した、守備的な戦略ではなく攻撃的な戦略としての横並べですね。

④回避能力

こちらもわかりやすく、飛行や威迫、トランプルなどの回避能力を持っているクリーチャーになります。これらを使うことでボード状態をある程度無視してダメージを与えることができます。もちろんボードをとれていないということは次のターンに反撃を受ける可能性があるため使いどころは考えなければいけません。基本的にはボードを"膠着"から"有利"に持っていくための能力ですが、スポットでダメージを与えることも可能です。ボードが"膠着"のままでも強制的にダメージレースに持っていくことが可能なので、これもライフが"少し有利"から"非常に有利"へ持っていくことを促進してくれます。

4-4. ライフアドバンテージを奪ったときの立ち回り

それでは、ライフアドバンテージを奪った場合の立ち回りを考えていきましょう。これまでのカードアドバンテージやボードアドバンテージとは違い、積極的に攻撃することが重要になります。それはなぜかというと、ライフアドバンテージを奪った場合、相手にリスクある行動をとらせるためにはほとんどの場合でこちらが攻撃することが必要だからです。言い換えると、攻撃することが目的ではなく、相手にリスクのある行動や最適でない行動(例えばチャンプブロックなど)を強制させることで、よりアドバンテージを奪っていくことが求められます。
相手は他のすべてのアドバンテージを捨ててライフを守る必要があるため、相手の行動をより制限させる動きを積極的に行っていきましょう。

5.まとめ

5-1. アドバンテージの関連性

ここまで見てきた中で、アドバンテージは相互に変換が可能であるという話が出てきました。それらを統合するとアドバンテージには以下の関連性があると思われます。

カードとライフの変換は難しく、逆にボードはどちらのアドバンテージとも変換可能です。この関連からもボードアドバンテージがアドバンテージ争奪戦の主戦場になる理由が見えてきますね。
今自分が奪っているアドバンテージをそれぞれ評価すると、アドバンテージをどのように変換するか、といった判断もできるようになりそうですね。
各状態の組み合わせから自身の行動を決めることが、一貫性を持ったプレイにつながると思うので、Part.6以降は各アドバンテージの組み合わせごとの行動指針について深堀してみたいと思います。

5-2. アドバンテージとは

では最後に、この記事で散々語ってきたアドバンテージの本質について考えてみます。これまで各アドバンテージを奪ったあとの立ち回りについて言及してきましたが、いずれのアドバンテージでも一つの共通点がみられます。
それは、"相手に動きを強制させる"ということです。
相手に最適な行動をとらせず、リスクを取らせたり不利になる行動を強制させたりする力がアドバンテージには存在します。
つまり、アドバンテージが勝利に直結する要因は"相手に思い通りのプレイをさせないことで優位に立つことができるから"ということです。
アドバンテージを取ることそのものではなく、取った後に相手の行動を強制する力こそがアドバンテージの本質であるといえるでしょう。

5-3.さいごに

いかがだったでしょうか。
正直自分でもここまでアドバンテージについて深く考えたことはありませんでした。ひとつひとつは知っていることであったり、聞いたことがある内容だったりなんとなくプレイ時に考えていることだったりしたかとは思いますが、体系的にまとめることでより俯瞰的に見れるようになったのではないかと思います。特に、なんとなく得だと思っている行動がどのアドバンテージに紐づいているかを整理できたのはとても貴重な経験でした。
皆さんが普段何気なく行っている"多分こっちのほうがいい"という判断に対してこの記事の内容がひとつの基準になれば幸いです。

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