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読書に失敗【酒鬼薔薇事件】

~やんわり読書のマイルール~

ここ数年で、読書をするようになりました。
自分でもびっくりで、この間まで年間0冊を更新し続けていたのに、年間100冊ほど読むようになりました。

せっかく本を読むのであれば…! と読書術の本や速読の本なども読みました。読書の仕方を読書する、なんて言うと友達に「遠回りしてるね」と言われたり。

僕の読書のマイルールに、「その分野を知るなら3冊本を読もう」があります。一方向ではなく、それぞれの立場から物事を見ることも大切です。

神戸連続児童殺傷事件

今回読んだ単元は、神戸連続児童殺傷事件。
酒鬼薔薇事件です。
➊加害者家族の手記『「少年A」この子を産んで』
➋被害者家族の手記『淳』
➌犯人の手記『絶歌』

25年前の事件のため、僕は当時の報道や衝撃を知りません。
過去にどういう事件があったのか。知る必要があると思い手に取りました。

読んでいる途中に何度も泣き、読み進めるのが大変だったのは➋です。
涙が止まりませんでした。
加害者に対してだけでなく、社会の在り方について疑問を抱くまでにも至りました。

一方で、失敗したなと思ったこともあります。
➊~➌の順で読んでしまったことです。最初は、読む順番は特に意識しませんでした。いつも電車の中で読書をしていたので、小型で持ち運びやすい➊から順に読んだのです。

読み進める中で、どうしても一番最初に読んだ本に影響されてしまう自分がいました。被害者家族の主張に対して「いや、でもそこはこういう理屈で」と伝えたくなる部分がありました。

被害者家族にすべてを寄り添う必要もなければ、加害者家族を全否定する必要もないと頭ではわかっていながらも、もやもやした感覚で読み進めることになりました。

最後に犯人自身の手記を読んだのは正解だったなと感じました。
時系列としても、少年院を出た後の出来事も含まれていて、事件から現在への繋がりまでを俯瞰することができたためです。

僕にとっては、➋、➊、➌の順番で読む方が合っていたかもと思いました。
なかなか読む前に本の順番を考えるのは至難の業ですが。
読書の仕方を考えるきっかけになりました。

犯人の手記を読んで、もうひと家族、被害者家族の手記があることを知りました。
『彩花へ―「生きる力」をありがとう』
こちらの手記を書かれたお母様は数年前に亡くなられたそうです。一連の事件を考えるにあたって読んでみたいと思います。


➊【加害者家族】を読んで

 僕は加害者家族に個人的な恨みや感情はありません。責めたり擁護したりする意図はありません。

 その上でネットで調べると、当時、母親の教育に問題があったのではないか、と取り上げることが目立っていたように思います。
 母親と父親本人の手記を読む限り、僕の読解力ではそこまで問題のある教育をしていたようには感じませんでした。場合によっては自分も子育てをする過程で同じことをする可能性のある範囲内のような気がします。

 母親の手記に、「事件当日ですら、服の汚れなど気付かなかった」というような内容が入っていました。のちに犯人の手記を読んだときに、血や泥を洗い流すといった行為をしたことは書いてありましたので全く気付けないものなのかな、とは思いました。 

 ただ、本人の態度から犯行に気付けるか?と聞かれれば気付けなくても仕方ないのではないかと思います。
 どんな親であれ、子どもの外の顔は知らないことばかりです。また、発想として"人を殺している"という選択肢自体あるはずがありません。
 事件を起こす前から同級生を傷つけることなどを理由に、児童相談所へカウンセリングに訪問もしていたそうです。そこでも良い兆候が見られているという程度で犯人であるとまでは予想されていなそうでした。

 もしも我が子が人を殺したら。
最後まで無実を信じるはず。
せめて、裁判で有罪が確定するまでは被害者家族に謝罪するわけにはいかない。それでも我が子の口から直接伝えられるまでは、信じ続けたい。
 こんな人間になってほしいと願ってつけた名も、無邪気で可愛かった幼少期も。裏切られたようだけれど嘘ではなかったはず。
 もしも自分の家族が犯罪者になってしまったら。何をすることができるだろう。。

➋【被害者家族】を読んで

 僕は被害者や被害者家族に対して個人的な感情はありません。一緒になって犯人を恨んだり、反対に被害者家族を陥れたりする意図はありません。

 最初に驚いたのは、被害者の土師淳さんの写真は幼い頃のものが多かったので、その年齢で亡くなったのかと思っていました。亡くなった年齢は11歳なので、11歳頃の写真があまり出回っていないのはなぜなのだろう、と気になりました。

 今回読んでいて、社会の仕組みに納得できないところが多々ありました。

①発見後、すんなり家に帰れない
 行方不明になった我が子とようやく対面でき、現実を受け入れられぬまま帰宅すると既にマスコミが押し寄せていたそうです。エレベーターにも乗り込んでくる勢い。
 確かに、猟奇的な事件の発生とその犯人がまだ捕まっていないことを一刻も早く世間に知らせなければならないのは事実。ニュースというものの存在意義を発揮するべき状況とはいえ、さらに追い打ちをかけてしまうような構造はどうにかできないものかな、と思いました。

②被害者より加害者
 確かに、事件が起きたときに誰もが気になるのは犯人はどんな人なのか。
酒鬼薔薇事件も、犯人の名称からそう呼ばれている。犯行に至った過去や環境、本人のパーソナリティなどが掘り下げられていきます。
 一方で、ここで難しいのが①と矛盾しかねないということ。犯人は匿名で被害者は実名報道であることや、被害者宅へのしつこいマスコミが起こることなどを考えると、被害者を置き去りにして犯人をクローズアップしていく構造は必然なもののようにも思えます。

③被害者保護
 少年法にまつわる問題の中でも、被害者と犯人が知り合いであるというところが複雑にしたようにも思います。
 被害者家族でさえも、なぜ事件が起きたのかや立ち合いをすることができず報道で状況を知っていったようです。

 淳さんが行方不明の時点でも、公開捜査をするとかなりの個人情報を公開することになったそうです。事実とは全く異なるような情報が出回ることもあったようで、何のための公開捜査なのか疑問に思う部分もありました。

➌【犯人】を読んで

 犯人を擁護する意図も、改めて批判する意図もありません。

 読む中で、自分の中に「犯人」に対する偏見があるなと感じました。この人の主張をそのまま信じてよいのだろうか? と。考えられないような行動を繰り返す生き物である上に、手記を出すとなればある程度表向きの言い回しにならざるを得ないからです。
 しかしその上で、著者に寄り添った読み方をするのであれば。

〇思ったよりは人間だった
 加害者家族の手記で登場した出来事を、犯人視点で描かれる部分もありました。両親が面会した時、今までに見たこともないような形相で睨みつけられ、聞いたこともないような怒鳴り声を浴びせられた。
 犯人自身も自分の声や態度に驚いたということが書かれていました。同じ土俵で語れることではないですが、親に対して本位とは違う態度や言動をしてしまう経験は誰しもあると思います。全く未知の生物のような印象でしたが、人間の枠組みであったのかと感じました。

~やんわり読書のマイルール~

 もとを正せば読書の話でした。
本を読むと、連続して読み進めたいと思う本が出てくることもあります。
一つは、上述の通りもうひとりの被害者の母親の手記。
もう一つは、『完全自殺マニュアル』という本。犯人の手記と同じ出版社で出版されていると知りました。

 引き続き、幅広く読書を続けていきたいと思います。

~~~追記❹【被害者家族】を読んでⅡ~~~

❹『彩花へ ーー「生きる力」をありがとう』を読みました。
土師淳さんの前に被害に遭った山下彩花さんのお母様が書かれた手記です。

正直、感動しました。
愛する娘を殺された遺族の手記であれば、恨みや社会への問題提起などが主眼に置かれるものではないかと先入観がありました。

そうではありませんでした。
無くなったきっかけがあくまで酒鬼薔薇であっただけで、一人の人間が生まれてから死ぬまでのかけがえのない時間に焦点を当てられた手記でした。
 僕が将来、子育てをするにあたり、こういう親になれたら。そう思えるような文面でした。

 加害者家族と対面した時のエピソード。そこで加害者家族も大変なんだなという視点が添えてあったり。少年を殺したいではなく、生きて償ってほしいという思いであったり。

 反対に、「こう書くと母親として○○だと批判がきそうですが」などのような言い回しが何度か登場し、被害者家族であるにもかかわらず数々の批判を受けてきたのだろうと感じる部分もありました。

 山下彩花さんがなくなって25年。この手記を書かれたお母様はお亡くなりになっているそうです。
 心よりご冥福をお祈りいたします。


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