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と言っても、それでもやっぱり。

「好きじゃないとやってられない」
って言ったのは最初に勤めたデザイン会社の社長。
その言葉の意味を理解したのはそこで働きはじめて半年ほど経った頃。
その頃であっても大卒の初任給を遥かに下回る7万円。
年末に源泉徴収票をもらえなかったから、経理の女性に「どうして?」と聞いたら「だって、税金払うほど給料多くないからね」と言われた。
そんなに自分の給料が低いことを知らない自分の常識を恨んだ。
「朝まで会議」とか「過労で倒れた」とか
業界のことを書いた本に普通に載っている。

頑張らなきゃ出世できない、とか。
才能は努力で伸ばせる、とか。
同期が一人辞め、二人辞め、ついに自分一人になった時に
だったら社長、あなたはいくら給料もらってるの?と疑問を持つ。

「好きじゃないとやってられない」と言っても
それでもやっぱり、この会社って結局真っ黒にブラックだよね。

それを「この業界の常識」なんて言ってる経営幹部は、
無知をいいことに若者から搾取してるだけじゃないの?
そんな常識なんてずっと続くはずがない。

あの時代はデザイナーの中からようやくスター選手が生まれて、
努力すればそれなりの収入が得られるようになってきていた。
でも彼らも「ディレクター」という肩書きで、アシスタントをこき使う。
いやいや、だったらそれなりの給料をもらえる「アシスタント」っているの?
5名スタッフがいて、まともな給料をもらえるのは何名?
映像業界や広告業界で「下積み」を積むのは「給料もらって勉強できる」のだから恵まれている、って一部の管理者の方便?

業界が良くならないのはおそらく利益の配分の仕方がおかしいから。
それを認めると既得権益者は業界にいる理由がなくなる。
「好きじゃないなら辞めてしまえ」も「好きじゃないとやってられない」も既得権益者の言葉。
いつまで経っても地位が向上しないのは、上に立つものが足を引っ張るから。
この国ってソフト産業しか戦える分野がないのに、
もういい加減若手が暮らしやすくて「好きだしやって行ける」ようにしないと
この業界から誰も人が育たなくなるよ。

どこでだって戦えるのは
前を向いて夢を持てる若手が支えてくれるからだって自覚した方が良い。

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