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進化型組織日本事例サミットに参加したら面白かった!〜その3〜

はじめに

先日参加した進化型組織、日本事例サミット(NPO法人 場とつながりラボ homes'vi主催)の感想レポート的記事、その3です。その1ではGaiax社の木村さんの、その2ではねットプロテクションズ社の秋山さんの発表について書いています。

↑その1に書いている、このサミットが開催された意義・意味もすごく大事だと感じているのでまだの方はぜひご覧ください。

今回は、3社目のRELATIONSについて書きます。

 RELATIONS代表長谷川博章さんのお話

2009年に7名のメンバーでRELATIONS株式会社を創業された長谷川博章さんがお話しされました。プロフィールはこちらです。

関西学院大学を卒業後、株式会社ベンチャー・リンクに新卒入社。入社2年目でSalesman of the yearで全国2位、3年目では同1位に。その後、フランチャイズ事業の責任者として関わる事業が投資撤退となり、その営業の責任を全うするために、2009年に7名のメンバーでRELATIONS株式会社を創業。半年で加盟企業の黒字化を実現する。その後、企業の伴走支援サービス(コスト削減領域、組織開発領域)を立ち上げ、累計で850社の支援を実行。本音をつなぎ、人と組織が本来ありたい姿に立ち返る支援を探求する。 自社の組織づくりにも注力。会社に関わる人が躍動し、心から人生を楽しめる世界へと近づけていくために、2017年よりパーパスを「ええ会社をつくる」へ刷新する。自律的な組織へ変容していくために、権限の分散を進め、2019年からホラクラシーを導入。人と組織の本来ありたい姿が共存し、共に響き合う組織づくりを目指す。

0.現在のRELATIONSの取り組み(一部)

・個人のパーパスを聴き合う会
サークル内の全員の個人のパーパスを聴き合うなど。
・柔軟な組織構造の変化
半年に1回の組織改編や人事異動という考え方がない。ホラクラシーでは、会社の戦略に合わせて必要な役割が生まれ、組織の構造が変化していく。
・超進化制度
全社の予算の枠はあるという前提で。ロールに関係あるものは予算なし。ロールに関係ないものは20万まではslackでオープンにすれば予算がつく。

1.印象に残った長谷川さんの発言

一連を通じて、ご自身の旅路における心境を赤裸々に真摯に共有してくださっている姿がとても印象的でした。あたたかさを感じる方でした。

長谷川さんのお話は、組織の旅路とそれに伴うご自身の内面を丁寧に話していただけるという素晴らしいシェアの時間でした。発言から拾って勝手に流れを再現してみます。(私の解釈が含まれますので一部表現が違うところなどある可能性があります。ご了承ください。)

(1)創業期(2009〜2013)

新卒で入社したベンチャー企業で猛烈に働く。セールスマンオブザイヤーを入社2年目で2位、3年目で1位とり、事業部長になる。その後リーマンショックで悪化し事業を撤退することになったが、お客さんに言ったこととは裏腹に数字重視で撤退という不義理になることが許せず自分たちで起業してでも支援したいという想いからRERATIONSを創業。当時は、ビジョン・ミッションはなかった。

※長谷川さんのお人柄や創業についてはご自身のnoteで詳しく書かれているのでよければぜひご覧ください。

コスト改善サービス事業が半年ぐらいで収益化できたことで、自分たちは何者かという問題が出る。世界を回っていこうとブータンに1週間、途上国にいくなどする。


その結果、生まれたミッション

「人が地球とともに歩み豊かさを分かち合える未来を創造する」
(上記の自己紹介記事より引用)

新しい人も増えていく。

課題感
・壮大な環境問題・貧困問題と提供しているサービスにすごい距離がある、という声が社内にある
内面
・長谷川さん自身もエネルギーが落ちていく

(2)インキュベーションカンパニー時代(2013~2016)

コスト改善事業が確立していたため、新たに3つの事業を展開。この時に社員が50名くらいまで増える。

組織の課題感
・事業が増える、パーパスが遠いものを掲げていたのでメンバーが全体を見るより個別最適化が進行していく。

・大企業から人を採用。文化が違う人がルールをつくりたいといった声も。陰口が増えたような時期。
心境
・自分の声に耳を傾けるというより立派な経営者になりたいという巨像を追いかける。みんなも見透かしていた。

混沌期(2016年〜)

以下、四角で囲んだ文の引用元はすべてこちらの記事からです。

上記の状況のままではよくない。何のためにつくったのか?を探究する。ミッションを再定義することになるも、コピーライターを入れてつくるという失敗をした。「長谷川さんらしくない」という声が出る。

その結果、全社で対話し、できたのが「ええ会社をつくる」。また、この時期に自律分散型の組織への変革をスタート。

取り組み(一部)
・会社分割
・役員会廃止
・前払い賞与

発信していたメッセージ(一部)
・フラットな組織
・ルールが少ない
・自律分散
・聖域なく何でも変えられる
・情報オープン(2017以前から評価や給与などの一部の人事情報以外はオープンだったとのこと)


この変革及びメッセージの結果どうなったのか?

結論から言えば「フラットでルールが少ない」というのは、(ティール型など)自律分散型の組織に対するよくある誤解でした。そして、誤解にもとづいたメッセージを放ったことで、「秩序」が弱まり、組織風土がかなり悪化しました。
(上記記事より引用)

他にも、

・方向性の合わないあるメンバーが内々で1つの事業部を別会社化するように何人かに働きかける
・飲み会での陰口や不満が増える
・経費ルールの逸脱

といった出来事も起こっていた模様。この悪化の要因もしっかりと分析されている。

『自律分散型の組織は「組織内の1人ひとりが全体を俯瞰する能力を持たないにも関わらず、自律的に判断し動き、結果として秩序を持つ組織」です。

役職等で「秩序」を図るヒエラルキー型の組織とは違う方法で「秩序」を保たなければなりません。

つまり、自律分散型の組織に適したガバナンスの構築が非常に重要なのですが、当時はその視点が弱いまま物事を進めてしまいました。』


このような状況下で長谷川さんは創業メンバーと飲みに行った時に、トップダウンで仕組みを入れようという話になる。そこで、長谷川さんの得意は、組織文化を耕すことであり、事業の意思決定は得意ではないというフィードバック。その役割を変えていくのはどうかという話になった。

上記の組織状態は2019年から徐々に良くなっていったとのこと。なおこの一連のプロセスや具体的にどのようにホラクラシーを実践していったのかを詳細に書いているnote記事があり、これは必見です!様々な教訓も書かれており、貴重な事例です。

衝突期(2020年〜)

描きたいものの反対の価値観が強い人が衝突。また、コロナによってフルリモートになることで関係が希薄化していく。このままだと危険だと感じる出来事もあり、まずはシステムコーチングを依頼することに。そこでこのようなことを感じたとのこと。

『創業からずっと様々な議論をしてきた間柄であったにも関わらず、深いレベルでの本心を言えない部分があったんだなという衝撃がありました。私自身の課題でもありますが、どこか踏み込んで相手を理解していくことへの怖さや恐れがあったように思います。』

引用元はこちら。

その後も、様々なプロセスがあり結果として2021年には全3事業のうち2,つ「SELECK」「Wistant」の事業譲渡に至ったとのこと。

このあたりのプロセスも会社のnoteで公開している。このようなプロセスをオープンにされているのはすごいです。ぜひご覧ください。

また、当日はこのプロセスにおける長谷川さんの心境としてこのようなことを言われていました。

「何者かになろうとして、自分の感情に蓋をしていて、経営者であらねばならない。自分の声をきけて、そこに向かって走っていこうというのが2020年に気づくことができた。」
「外面的なところ、事業構造とかスキルに焦点を当てて組織づくりをしてしまったので、対話とか本音で話していくというのができていなかったからこそ、色んな歪みが生まれた。」

その結果、2021年は徹底的に対話に振る、組織づくりへ。

最近は、

内面が変容すると外面も変わっていく流れができていくんだな。
最終的に自分も感情を出せるようになって、楽しく運営している。

とのことでした。

2.賢州さんコメントで印象に残ったこと

(組織の進化の)旅路は2種類あるのでは。1つ目は、オーガニック。モデルを入れるのではなく、実験していくスタイル。ゆっくりと辿りついていくプロセス。その欠点は、天道説から地動説なので、みんなで話し合ってても、話し合いがオレンジを突破しない。それで健全だったらいい。同時に車輪再発明なので、0からだと大変。2つ目は、旧来とは違うモデルを入れる。ホラクラシー、ソシオクラシー、モーニングスターなど。パッケージを入れるのはいいことだけではない。弊害、難しさもある。
ホラクラシー、自主経営はhowがたくさんある領域。経営者はこの辺り好きな人が多い。背後の哲学がないと全く違う様相になる。
ホラクラシーだったら、Zapposの例。トニーシェイは猛反対にあった。覚悟を決めた言葉。「うちの組織は素晴らしい。圧倒的な感動を与える仕事をしている。今のままじゃ組織として完璧じゃない。今はコミュニケーションが得意な人が活躍できる。声が小さいとか、多様性には応えられていない。その人たちも生き生きと働ける環境をつくりたい。」彼は都市モデル。大都会は人口が増えるほどにチャンスが増える。人が増えるとユニークな人が増えてくる。企業って人が増えるほど面白くなくなっていく。そういうのを大都市のようなみんな同じ法律を守ることによって、同じルールで決めることによって大都市のような活性化ができるんじゃないかで導入した。
パッケージ導入する際の重要な視点。助言プロセスの捉え方が(オレンジだと)「意思決定早くなる。承認もらわずに決めていいんでしょ」ってなる。助言プロセスは最も謙虚であり、集合知を信じている人のアプローチですね。(となる)
システムコーチもティールで多い。組織の全体性、関係性すごく重要なんですが、一番難しくしてるのは社長やリーダー。構造上、責任をかかえている人が関係性を作ろうとしてもそれをひっくり返しちゃうのがリーダーとか社長。リーダーが持ち込む関係性のツールって機能しない。リーダーと現場が1on1しても関係性はよくならない。リーダーさえも生身の人で入れる場を別の人にファシリテーションしてもらうのが大事。早くリーダーや経営者にも同じ人間としてドロドロしたものを出せるように場を作っていくのが大事。
プロジェクトの2つの始め方

①この指止まれパターン
②メンバーから入るパターン
このメンバーで何をするか。

(②について。)個々人で内省していくとバラバラなことが多い。無理矢理1つにしても。メンバーから目的を浮かび上がらせるっていうのは難易度の高いアプローチ。

さいごに

イベントのプログラムとしては最後、パネルディスカッションもあったのですがそれが記事化できるかはやってみて判断したいと思います。もし今後何も記事がアップされていなければ「そういうことね」と思っていてください。笑。


追伸その1、

RELATIONSは"RELATIONS"のまんまという公式ブログをしています。より知りたい方はぜひご覧ください。

ぜひWEBサイトも!

追伸その2、

ティール組織について学びたい・深めたいという方は嘉村賢州さんが代表理事をつとめているホームズビー主催の"ティール組織ラボ"の情報をご覧ください。


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