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排除する側、される側

「あなたさえいなければ」と言う人は「わたしさえいなければ」と思う人を選ぶ。嗅覚の鋭さは天才的だ。

わたしは高校生の頃に、坂道での喧嘩を見た。坂の上下で、女子高生2人が「アンタさえいなければ!」「は?アンタさえいなければ!」を言い合い、最終的に取っ組み合いになっていた。

彼女たちは、とにかく1番でいる必要があった。それは親の影響かもしれないし、プライドの目覚めかもしれないけれど、負けず嫌いという言葉では表現できないほどの強度だった。

取っ組み合いの喧嘩といえば、ヤンキー、スケバン、レディースのような不良行為をする女子生徒の行為だと思っていた。しかし彼女たちは2人とも容姿端麗、清楚、頭脳明晰だった。

期末試験後に成績順位が張り出される。
そこで2人は学年1位を競っていた。

わたしは一度だけ1位になったことがある。
その時に「え、偶然でしょ?だって本当はバカだもんね。」と言われた。頑張れば叩かれる、認められる可能性は排除の対象だと勉強した。

「もちろん偶然!バカだもんね!」
とわたしは笑った。

その時、彼女たちは「わかれば宜しい」という目をしていた。

それは彼女たちの戦闘力。自分の価値の証明には、ランキング1位がわかりやすい。

タワーマンションのセレブ論争的TVドラマがあるけれど、あれは社会の縮図。タワマンに住んでいなくても、どんなに田舎に住んでいても同じことが起こる。

「わたしはダメなんだ」「わたしは誰かを不幸にしてしまう」という意識がある人間を見つけては「あなたさえいなければ!」と攻撃する。きっとどこに行っても、ずっと、何度でも。全国一律の玉突き事故。

「私の方が幸せでしょ?」「仰る通りです」の構図は気持ちがいい。スッキリする。ストレス解消。

しかし彼女たちは、家に帰れば家庭の一番底辺になる。

夫は家に帰ってこない、子どもは「うるせえ」と言う。夫は外食ばかり、子どもは「カップラーメンの方がおいしい」と言う。義母が来ると言う、デパ地下のお惣菜をリクエストされる。

子どもが優秀で、学年1位になれば認めてもらえるかもしれない。

ママ友に囲まれる集合写真、ステキ手料理をアップすれば。

子どもの成績順で夫が褒めてくれた。さすが俺の子どもだって。イイネがたくさんついた。ママ友から羨ましがられている。

私の幸せの証明はここにある。

もっともっと、フォロワー数を増やさなきゃ。家族旅行はなるべく映える場所に。ハワイはみんな毎年行ってるから、違うところがいいな。

先日ランチ会に参加したとき、「海外旅行は、どこに行きたい?」と聞かれて「行ったことないですけど、ニューヨーク。」とわたしは答えた。すると「ニューヨークに行ったときにうちの子が高熱を出して大変だったから気をつけてね。」とアドバイスをいただいた。

ランチ会は現金回収制度だった。「わたしがまとめてカードで支払っていいですか?財布に現金が2,500円でした笑」と言うと

彼女の子どもが
「え~?アタシでも20,000円現金持ってるのに~?」
と言った。

私のSNSフォローしてる?あの人のフォローはしてるのになんで私をフォローしないの?あの人とはつながってるのに?

ねぇ集合写真を撮ろう!
Facebookにアップしていいよね?

わたしは敗者で良い。
わたしは生きていくのが一生懸命で、それどころではない。

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