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無施錠の引き出し

財布を机の上に出しっぱなしにしていたら、監査役から注意を受けました。

「財布を置いていて誰かに盗まれたら、その人の責任だ。」と教えてもらいました。その時は席を外していませんが、印刷機に移動するくらいなら、財布を置きっぱなしにしていたでしょう。

個人情報保護法が全面施行された時、机の施錠を強化する事になりました。最初は呼びかけ程度でしたが、毎週水曜日は施錠チェックの日になり、そのうち抜き打ちチェックも始まりました。

全社員持ち回りで、出社前にチェックをします。1番上の引き出しが開かないかどうかの確認です。もちろん、無施錠の人もいます。その時は、引き出しが開きます。そこには小銭を入れている人もいました。

ある日、上司が施錠し忘れていた引き出しを勢いよく開けてしまい、便箋が数枚飛び出しました。それは社内不倫の手紙でした。わたしは、そっと引き出しに戻しました。しかし別の人がまた同じことをして、便箋がばら撒かれました。あっという間に噂は広まりました。

そのうち、小銭やリップクリームがなくなったり、セキュリティチェックのはずが罪の連鎖となり、そのセキュリティとしてさらに情報や犯人探しに発展していきました。

毎日、施錠の声掛けが始まります。無施錠だった引き出しに鍵がかかっていきました。

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