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ヒストリー㉜あしたへー・2016年9月

再びの全国キャラバン


ライフリンクが、長野県、日本財団と自殺対策を進める協定を結んだ2016年9月14日、その協定締結に合わせて、長野県からもうひとつの取り組みが始まりました。
「地域自殺対策トップセミナー」です。

地域自殺対策トップセミナーは、ライフリンクと厚生労働省が推進団体となり、開催地の都道府県と3者が共催して全国展開するものです。最大の特徴は「トップセミナー」の名称が示すように、市町村長たちが対象になったことです。改正自殺対策基本法の下、自殺対策計画の策定が都道府県だけでなく市町村にも義務付けられました。地方自治体のトップすべてが、より重要な役割を担うことになり、セミナーは、その意義を理解してもらうことを目的としました。

セミナーの開催には、さらに大きな意味を見いだすことができます。
まず、日本の自殺対策が、地域レベルの実践的な取り組みへと進化したことです。
そして、自殺対策基本法が議員立法で成立して10年。議員主導だった法律が、名実ともに政府の仕事として、しっかりと深化し根付いたことも表していました。

セミナーに登壇したライフリンクの清水康之代表は、市町村長たちにこう呼びかけました。
「自殺に対応できる地域のセーフティーネットを築ければ、それは地域の
様々な問題にも対応できるセーフティーネットにもなる。つまり、自殺対策は地域づくりの絶好の切り口となり得る。ただし、それを牽引できるのは首長の皆さんしかいない」

セミナーは、2016年度末 までの半年間だけで、長野県、徳島県、千葉県、香川県、大分県、埼玉県、広島県、山梨県、茨城県、 愛媛県、新潟県の11県で開催し、2017年度にはほぼ全国を一巡するという異例のスピードで行われました。最終的に47都道府県すべて行われ、開催後のアンケートでは、100%近い参加者が「とてもよかった」「よかった」と回答するなど極めて高い評価を得ました。

ライフリンクは、2007年度にも、自殺対策をテーマにした全国キャラバンを実施していました(ヒストリー⑰願いかなった日・2007年6月 参照)。
自殺対策基本法の理念を全国に伝え、「自死遺族のつどい(分かち合いの会)」の立ち上げ支援につなげようと、「自死遺族支援全国キャラバン」と銘打ちました。この時の全国キャラバンは、民間団体のライフリンクが発案し、展開しました。

一方、今回のキャラバンである「地域自殺対策トップセミナー」は、厚生労働省が推進団体に加わり、ライフリンクとともに全国を周ったのです。
自殺対策が本格化して10年、さまざまな人たちの努力の積み重ねから生まれた新しい光景でした。

=続く 次回は、㉝「『座間9人殺害事件』の衝撃」です。

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