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ヒストリー㉞あしたへー・2021年2月

相談業務に踏み出す


ライフリンクが新たに始めた相談業務には、いくつもの難題が待ち受けていました。
まず、相談員の数が絶対的に足らないことでした。それは今、現在(2022年8月時点)も続いています。

もともと、国内の相談業務の最大の課題は「なかなかつながらない」ことでした。対応できる割合は、10%以下という事例がほとんどでした。
ライフリンクが2021年2月に立ち上げたオンラインで電話相談を受けられる全国ネットワーク「#いのちSOS」の場合、対応できた割合は、20%台前半から30%台半ばで推移しています。
しかし、有名俳優らの自殺報道の後は相談が急増し、対応率はさらに低くなってしまうのが現状です。
ライフリンクが以前加わっていた全国的な電話相談事業では、電話を1度かけてつながらず、それ以降は電話してこなかった人が毎日40人から50人いました。日本の1日平均の自殺者数は60人前後です。この中に電話をかけてつながらなかった人が含まれている可能性もあります。ライフリンクは、「つながる相談」の構築が急務だと考え、自ら自殺防止の電話相談「#いのちSOS」を立ち上げることにしたのです。

そして、こうした手薄な状況に追い打ちをかけたのが、コロナ禍でした。
いわゆる「三密」を避けるために、相談員が集まれず、窓口を大幅に縮小せざるを得ない事態が続発しました。
コロナ禍で、仕事を失う人が増え、学校に行けない若者たちが深い孤独にさいなまれ、自殺リスクが高まる中での縮小でした。関係者はみんな断腸の思いでした。

ただ、コロナ禍によって、新たな希望も見えてきました。それは、リモートによる運営の普及です。相談員が集まれないことで、相談員が全国に分散しながら対応する態勢づくりが急速に進みました。
ライフリンクがリモートでの相談員を募集したところ、幅広い世代から様々な能力を持った人たちが数多く手を挙げてくれました。自殺対策への関心が想像以上に社会に広がっていたことを示す、うれしい誤算でした。
ライフリンクは、相談員を担える人材のさらなる発掘に努め、力の及ぶ限り、態勢の強化を図ろうとしています。


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