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HayatoSUMINO CONCERT TOUR2023 Reimagine 岐阜公演2.5

最初に言いたい。

今回のソロツアー、本当に本当にとても素敵なプログラムと演出と感じましたので、何よりもまず角野さんと、そして聴きに来られる方がこの後も更にこの公演を楽しまれますように。


※角野隼斗さんの2023年全国ツアー「Reimagine」のレポートです。
ネタバレあります。
※(今後もしかしたら配信の可能性もないとは言えず………)
内容を知られたくない方は閉じていただけますようお願い致します。
また書いてる感想はあくまでも個人的な感想や印象ですのでご了承ください。


昨年9月にあったオルソップ氏とNOSPRのショパンコンチェルトツアー終了後に発表された角野さんの今回のソロツアー。

地元から近い金沢公演があることを知り、それだけで涙が出るくらい嬉しかったが、次はいつ行けるか分からない角野さんのコンサート。しかもソロ公演。

彼の魅力にすっかり嵌まってしまった私は同じツアーで複数回コンサートに行く事を体験してみたいと思った。
そうたらもう少し角野さんの音楽をわかって楽しめるのじゃないかと思ったから。

そして選んだ岐阜公演。
まだチケットが取りやすそうだと思ったのと、日程が金沢公演とは丁度1ヶ月空いていて仕事の繁忙期とも被っていなかったこの日。無事にチケットを入手し当日を迎えた。

今回ツアーのテーマは「Reimagine」
意味は「再構築」。
発表された時はジャズとクラシックの共通項を探るとの角野さんのお話だったが、私にはどういう事か全く想像つかない世界。。

そして彼は活動を追うファンすら息切れしそうな怒涛のスケジュールをこなし、年が明けるとそのプログラムの全てを明かしてくれた。

並んだ作曲家はバッハ、ラモー、カプースチン、グルダ、そして角野隼斗さんご自身。

角野さんはクラシック音楽についていつも「自分が演奏する意味」を問い続けておられた。
既にたくさんの素晴らしい演奏があるのに、自分が今更と。
だからこそ、誰も行かない、そして行っていない道を探して歩き始めたのだと…。

今回はバロック音楽と現代音楽、そしてジャズとクラシックの共通項を探す旅。

ツアーパンフレットに彼自身のとても素敵な言葉を見つけた。
クラシックでありながらジャズに影響を受けた作品を演奏すると全細胞がワクワクすると。

一見難しそうなテーマと難しそうな楽曲にちょっと恐れをなしていたけどなるほど、そういうことか!

角野さんが今1番ワクワクする音楽をたっぷり届けてくださるという事かなと。。

今回予習は頭に入ったのは少しだけ。。
 難しい事は覚えられないし分からないから、まず曲をざっくり区別だけ出来るようにした。
(しかしこれについては私的にはちょっと後悔。今回はやはり曲を知っている方が鑑賞の度合いが高まるかなと感じました。
ただ予習のいる要らないも個人的主観です。)

ここから公演のレポート。

記憶が飛んでいる所もあり書ける所だけ記載する。

観客席のライトが落とされ、ステージが明るくなる。
角野さんが黒の上下の衣装に白シャツで登場された。
大きな拍手に迎えられ、グランドピアノの前に座りバッハのインヴェンションNo.1が始まる。

驚いたのは…ピアノの音が混ざらずに、1音それぞれが鳴りながらも綺麗に重なっていて…ほんとにびっくりした…。それがまたとても心地よくて。
トリルも力強いのに重くなく。

そして予習したはずのメロディーはあっという間に何処かへ行ってしまい既に私に混乱が始まる。
しかしインヴェンションは元々そういう曲で作曲用のベースとしての楽曲の性質もあるとのこと…つまりは角野さんがこの楽曲を元に音符を付けた事になる。
(途中でアップライトピアノへ移動とファンの方から教わりました)
変化球を感じるオープニングが今の角野さんらしくてわくわくした。

ここでご挨拶。気になる第一声。
「こんにちは 角野隼斗と申します。」
配信でいつも聴いている声に安心感。
続いて話される。
「岐阜に来る事自体が初めてで(拍手が起こる)、名古屋から結構近くて…ここに来てるのはみなさん岐阜の人なんですか…?」
「…岐阜じゃない人(挙手を求める)」
岐阜じゃない人…角野節である。
その後今日が初めての公演の方がいらっしゃるかの挙手を投げ掛けて、改めて会場に穏やかな空気が流れた。

続いてラモーについてお話しされ、演奏されたのが「La Poule」 「Les Sauvages」。
角野さんのピアノは音が凛としていて、なのに飾らなくてメロディーがストレートに飛び込んでくる。
イメージとしては音が左右どちらにも片寄らなくて真ん中より少し上に居てそこから音を投げ掛けて下さる感じ。
はっきりした音符の重なりそして連なりをリズミカルに奏でられとてもストレートにこの曲を弾いて下さったのではと感じた。

そして後で気付いたのだけどそれがこのバロック曲のクラシカルさを感じさせなかった要因なのではと思った。

(次の演奏曲グルダのプレリュードとフーガではぐっと低音部の音が強まって、凄くのりたい感じだった。。しかし私の印象と記憶が薄れている所があり…これは次の公演でもう一回じっくり聴きたい。)

そしてアップライトピアノで「追憶」。
明かりが消されうっすら角野さんの影と、柔らかいアップライトの音が鳴り響く。
角野さんとショパンとの思い出がたくさん詰まったこの曲。
目を閉じて聴いて…この曲には温度があって冒頭温かくなった後に中間部から冷たくなる、実は私にはちょっと苦手な曲でもある。
勿論その経緯を知っているからだけど…

でも今日は初めてこの曲に包まれてそして共感出来たと思った。実は泣いてた。
そしてすっかり感傷的な気持ちになってしまった私の耳に間もなく始まったバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」。
暗闇の中に光が差し込むような柔らかい音に救われて、とても癒された感覚がまだ残っている。

そして書いていて気付くのだけどもうこの辺りで既にバッハ、バロックをバロックとしては聴いていない。
ただ肌身でその音を受け止め流れてくる音楽に身を任せていた気がする。

そしてバッハ「パルティータ2番」。
6つの構成からなる組曲。

正直予習ではこの曲のメロディーがとことん頭に入らなくてとても途方に暮れた。公演当日も記憶力が頼りなく角野さんの演奏の細かい所が残っていない。(こちらも金沢公演でリベンジ)
それでもまずこの日出会ったファンの方と確認して記憶が一致したことを書く。

1シンフォニアと2アルマンドをグランドピアノで。そして3クーラント(仕掛けあり)と4サラバンドをアップライトで。5ロンドーと6カプリッチョは再びグランドピアノで。

そしてそんな私にも残っていた印象があって。
それこそこのパルティータはバロック特有の抑揚の無さが覚えにくさ、各楽章の区別のつきにくさを初心者に生んでいるのだと感じるのだけど、思い起こせば角野さんのパルティータはリズムよりも「音楽」が感じられて、音の連なり、ビートよりも「曲」に私は包まれていた。
アップライトに移って演奏された時の、カタカタする音に映る物語性とか、2つのピアノ移動をする時の音の差の、時空が行き来する感じとか(アップライトが過去、グランドピアノがそれより未来)目の前がタイムスリップしようとしてるような不思議な感覚が起こった。

ここで休憩を挟む。

この日もとても素敵な方達と実際お会いすることが出来た。そのお陰で角野さんの音楽への思いを共有出来、公演そのものが何倍もとてもありがたく幸せな時間となった。

後半が始まる。

舞台上には4つの細いスタンドのライトが現れる。
そして黒の上下の衣装の中のシャツが黒に変わって角野さんが登場された。前半とは打って変わってワイルドな空気を纏っている。
(こちらの角野さんの方が今日は角野さんらしいとまで感じた。)

オリジナル曲「胎動」が力強く始まる。
音の先がいい意味で暴れてると感じるくらい。
それが後半の幕開けだった。
その演奏からはっきりと前半とは違う空気を作ろうという意思が伝わって、その変化の持たせ方に私の心のギアも2段階くらい気持ちが上がる。

「胎動」なのにとても雄々しいのがめちゃくちゃカッコいい。

こちらの曲はショパンエチュード1番にインスピレーションを受けて作ったものだけれど、オリジナルとなれば音楽はとにかく自由だ。
こんなに男性的マインド全開の「胎動」は何だか新鮮で益々角野さんの読めない、その時その時の演奏がとても楽しく、そして頼もしいと感じた。

何度目かのMCで角野さんは小さい時から宇宙がお好きだという話になった。
ラボでも紹介のあった、ファンの間では伝説となっていた角野さんのオリジナル曲「Human Universe」。
しかしこれが私には難しかった。
パンフレットの解説を見ると確かにストレートに宇宙は表現されていない。
曲の展開の不規則と旋律が、角野さんの思う世界にある、一筋縄ではいかない宇宙という感じがした。
次の公演ではこの曲に少しでも近づきたい。(そしてH Uのイニシャルのピアニストもまだ分からない。笑)※後程SNSで教えていただいた

ここでライトの説明をして下さった。
数学好きの角野さんのアイデアだ。
2進法で4つのライトが置かれ、ライトが付く箇所によって演奏する曲番が表される。
またその事により、曲の切り替わりが分かるという仕組み。。
説明を聞けば至ってシンプルな演出なのだけど、曲中それが何だか凄く洗練されてミニマムな世界観としてお洒落に感じたのはやはり角野さんのセンスの良さなのだろうか。

灯るランプに、ど文系の私に2進法の計算法まで理解することは無理だけど、素直にただただ足し算しながら楽しめた。

そしてカプースチン「8つの演奏会用エチュード 作品40」とJ.S.バッハ「インヴェンション」から3曲。
これらが交互に演奏されるのだ。

角野さんから「もうノリのいい曲なので体動かして楽しんでください」との言葉がかけられる。

プログラムを知ってからも全く想像がつかない、でも1番楽しみだった演奏が始まる。

予習の話
(カプースチンは相互フォロワーの方からカプースチン本人の音源を勧められ、CDを購入した。これがとてもよくて音の緻密さとか、即興ではなく楽譜で書き表されているものを演奏している凄味を私も味わうことが出来た。お陰で各曲番の旋律や雰囲気もすんなり入った。)

その頭に入った音とほぼ同じと感じる音が角野さんの手から生み出される。
これってスゴいことだよね…。
リズムも展開も素人からしてとても難しいのを感じる。更にご本人の様なグルーヴと音色の多彩さ。鳴り止まない左手のビートの強いリズム。
今回も良いお席だったから贅沢は決して言えないけれど、手元が見えるとまた聴こえる音も違った気はする。
それくらい角野さんの鍵盤捌きは見ていて素晴らしいのだ。
完コピと私には思える位のカプースチンが繰り広げられる。
本当にピアノ1台から鳴ってる音なのかと思う鮮やかな音色と展開。
そしてトッカティーナまで終わったらインヴェンション13番。
そしてパルティータの時も感じていたのだけど、演奏が違うピアノへ移り変わる時、曲が違う曲へ切り替わる時、その度に私は物凄く胸が高鳴った。
ただ切り替わったり移ったりしているだけではなく、角野さんの意図や演出がそこにあり、そのひとつひとつがとても効果的に感じられたのだ。

ほんとにほんとにそれは素敵だった。

そしてインヴェンションは角野さんのカデンツァと言っていいのかわからないけどアレンジが本当に笑ってしまうくらい角野さんそのもので、バッハが何処かへ行ってしまったように感じた。
というか正直何処かへ行ってしまっていた。
バッハの左右の音符の絡み合いが、ビートが角野さんの音として鳴ってくるのが私的この日の一番のハイライト。
そして初心者の私ですら戻ってくるのかハラハラする物凄く魅力的なインヴェンションだった。ギリギリ最高。
(特に4番の時のエッジのある長いトリルのカッコ良すぎには参りました…)

カプースチンは相変わらず軽快に鮮やかに演奏され大好きな「パストラール」もノリノリで。
(次のインヴェンション14番も事前に聴いてとても好きになったのだけど、公演では記憶がカプースチンに持っていかれてしまったのでこれも次回の楽しみにしたい。)
スゥイングする「間奏曲」ではアップライトの前で揺れる角野さんの背中が楽しくて。
そして特筆なのは確か「間奏曲」の曲中終盤でグランドピアノに移り変わった所。。
何でしょう…このそれです!!!の感じ。
そんな演出思い付いてないのに、私はその展開を待ってましたみたいな感覚。
ちょっとしたことなのに凄く気持ちが高揚するのだから、やっぱり角野さんの演出力もとても素晴らしいと私は思った。

戻ってきました!と言わんばかりに準備体勢が整い、いよいよ「フィナーレ」に入る。
もうこの「フィナーレ」が大好きだし、角野さんのピアノが尚一層賑やかに鳴らされる。
本家より凄く華やかさを感じた。

最後の音が鳴らされ、演奏が終わった。

たくさんの拍手が鳴り、深々とお辞儀をされ、ゆっくりと舞台袖に下がっていかれた。

お客様のたくさんの拍手に応え会釈をしながら再登場の角野さん。
全然疲れていないように見える。
マイクを持ってお話をして下さった。
ちゃんとステージ上で下手も上手も歩いてきて下さり、お客席に向けて会話を投げ掛ける。
まだまだツアーが続く事、体調に気を付けること、そして今日来て下さった事への心からの感謝の気持ちを述べられた。
(真正面角度にいらした時緊張して強ばる私。その時何を話されていたか思い出せない)
マイクを置いてアンコール。
ロマンチックな音の連符から始まる「ハウルの動く城」より「人生のメリーゴーランド」。3拍子の優雅さとジブリの世界のノスタルジアなメロディーが角野さんのピアノで奏でられた。角野さんが動画で演奏してるのを聴いて大好きになった曲のひとつだ。

再び登場され、アップライトで「羊は安らかに草を食み」。この曲は実は私は馴染みがなかったけれどアップライトの優しいかわいらしい音がとても素敵な曲と印象付けて下さった。

3度起こる拍手に早足で掛けてくる角野さんが愛らしくて。
最後はラプソディー・イン・ブルーshort version。
「カメラ動画撮影オッケーです」と言われたら、撮るしかないと思ったけど、そういう時に限って上手く行かない私の携帯の立ち上がり。。完全に冒頭部分に間に合わなくて、少しだけ撮って後は演奏を楽しむことにした。会場一杯に鳴り響く角野さんのゴージャスなラプソディー・イン・ブルー。

演奏が終わって深々とお辞儀をされた角野さんが去った後、暖かいスタンディングオベーションが起こった。(地元の方によると珍しい事らしい)
角野さんも更に出てきて下さり、和やかな表情に。去られる際にはバイバイ!と皆さんに向けて両手を降って下さった。

そう、これだけのボリュームが2時間にぎゅっと詰め込まれている。
終わればあっという間なのだけど、持ち帰る物はとてもたくさんだ。

それは素敵なツアーグッズだけじゃなくて、角野さんが色んな事を経験されてきて、試行錯誤されながら今生まれている音楽達。この日の素敵なファンの方との出会い。
初めて体感する感覚。

そして1番気になっている「Reimagine」については。
今回私は正直実感として「Reimagine」をまだ掴めていない。それは次に行ける公演で感じられるのか、もっと後なのか、分からないけれど…。

今から1ヶ月後の公演が、とても楽しみ。

長いレポートをお読み下さりありがとうございました!