小曽根真 60TH BIRTHDAY SOLO OZONE 60 CLASSIC×JAZZ 前書き

正直、いちおしの活動を追うだけでも精一杯だった私。
「小曽根真さん」その名をその彼から何度も聞く内にジャズピアノの名手であることは私の脳みそに刻み込まれたが、積極的にリスニングするまでには至らず…。

しかし事件は起こる。

ショパンコンクールも終わり、彼が帰国してさて次の活動はいかに。。と思っていた12月初旬。制作した動画配信が続く中、更にインスタLIVEの知らせが入る。

喜び勇んでインスタLIVEに参加したらば、何とも素敵な別荘の雰囲気に居たのは彼と小曽根さんだった。

この世のものとは思えないほどの音と雰囲気の多幸感が画面を通して溢れ出てくる。
少々色々あってお疲れ気味であったであろう彼も、この日ばかりは心から楽しそうだった。

温かい小曽根さんの懐で、思う存分はしゃぎ、楽しみ、そしてまた小曽根さんも彼の反応に呼応する。更には小曽根夫人の三鈴さんも加わって、これでもか!というくらいの幸せな即興セッションが続いた。
この時の小曽根さんの、何とも言えない魅力的なピアノの音に私は堕ちた。

それから程なくして、地元でコンサートがあることを知る。コロナ禍が落ち着かず、相変わらず越県すら叶わないご時世に、これは行くしかないと腰を上げた。


そして迎えたこの日。
コロナが落ち着くどころかどんどん拡大を見せ、半ば諦めモードではあった。
家族が居る以上無理は出来ないし、いつ私達がかかるかもわからない。
しかし、丁度その前の週から状況は収まりを見せ、無事に行けることになる。
行き慣れた方にすれば何をそんなに、と思うかもしれないが、(実際私も振り替えるとそう思う笑)、最悪の状況から考えればこれは奇跡だった。

誰と行くか、少々悩んだが、小学生の娘を連れていくことにしていた。
次の日から春休みというのもタイミングがよかった。
小曽根さんのインタビューで拝見した、「子供も子供向けの演奏するより、本気の演奏をした方が本気が伝わる」の言葉を信じ、また、音楽でも絵でも何でもいいから、本物に触れる機会を作ってあげたかった。

会場自体も初めてで、コンサート前の高揚感も本当に久し振りだ。陽が落ちて辺りが薄暗くなってくる。建物本体の周りは水に囲まれ、ライトアップされた水面がキラキラ輝く。
娘と手を繋いで館内に入る。
たくさんのお客さんがもう待機していた。

ボードの写真を撮ったり、ホールの中を覗いたりして時間を過ごす。
配布されたパンフレットには曲目がない。
うーん、即興でやるということ…?
頼りになるSNSのフォロワーさんにメッセーて見る。終わってから貼り出されるパターンかもと教えて貰えた。

娘も気持ちが上がっていたのか「早く席に行こう」と急き立てる。
まだ30分以上時間があったが、早くシャンデリアが煌めくホールの世界に入りたくなって、席に付くことにした。
携帯の画面で確認する限り、かなり右寄りかと思いきや、実際の場所は大ホールと言えど会場がかなりコンパクトで、縦に長いのでピアノがとてもよい角度に見える。
そこに小曽根さんが座れば丁度顔が見える位置だった。これだけでもテンションが上がる。こちらも知識の深いフォロワーさんから教えて貰えたことだ。

小曽根さんの登場までステージを見渡す。シンボルとなっているパイプオルガンの数十のパイプが突き出ていて、「あれは何?」と娘に聞かれた。

向かっ左手のドアが開いて、男性が出てくる。マイクを持つなり一言「(小曽根さんじゃなくて)すみません笑」主催者の方だった。
今日の注意事項などを告げ、ホールの写真は終了後に撮って下さいと許可&お願いがあってステージ袖に戻っていった。

そしていよいよ彼が登場した。