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営業に必要な「映画化」の技術

2020年。変化の年でしたね。

オンラインでのビジネス推進が進み、営業の在り方は大きく変化。
準備する時間もなく、強引なまでの変革が起きたことで、日本の文化では考えられないほどのスピードでガラッと変わった印象です。個人個人の仕事環境/感性の変化がここまで起きたことは、むしろ大歓迎するべき事象だったように思います。

そんな中、様々な観点で難易度は上がっている環境ではありますが、20年間営業をしてきた私にとって、ある武器/スキルがあったことで、これまでも、この難儀な1年も、助けられたものがあります。

それが、「映画化の技術」です。(私の言葉なので、一般的なものではありません。)

様々な組織体制、ツール、アプローチのTipsが増え、有益な選択が取れる状況となりましたが、この技術(感覚と呼ぶ人もいる?)についてはあまり語られていないので、ご説明したいと思います。

特に、商談の難易度がグッと上がる大手企業向け営業の方には必須のスキルと考えてますので、ご参考にしてください。

■映画化とは何か…


私の考える映画化の技術とは、

営業活動に関与するステークホルダー(自社含む)に起きている様々なストーリーを映像化して想像し、抽象的状況理解から、具体的状況理解に昇華し、対象の人物、組織、事象の解像度を引き上げ、成果に直結する状況判断を行い、より価値ある実践をするための技術

言葉にするとこんなところでしょうか。

簡単に言うと、

頭の中で様々なストーリーを映像で想像し、より価値あるアクションをする技術

となります。

■映画化の効能


例えば、ある提案先のお客様が今後、社内で上申プロセスを進めるとしたときに、営業の状況説明資料に、今後のお客様のアクションが丁寧に書かれていたとします。

そんな時、こんなやり取りが始まるイメージです。

「その話、頭の中で映画化できている??」
「結構イメージ湧いてますよ!」
「いいね。映画のイメージで考えてみるとどう?必ず想像できないところがあるでしょ。昔の映画のフィルムが切れて真っ黒になるような…。」
「確かに、お客さん同士で打ち合わせがある際に、どんな会話がなされるのかとか、誰が口火を切るのかとか、まったくイメージ湧きません。」
「うん、それそれ。そういう小さい穴がリスクになるから、イメージがより具体的になるように対話をしていこう。」

上記のように、多くの人は決められたフォーマットに洗い出し、抜け漏れなくするところまでは実践できます。(昔の営業の人と比べると、本当まじめな方が増えました…w)

でも、ビジネスは箇条書きでは、説明できないことばかり。

箇条書きで洗い出して事が済むのであれば、苦労はありません。
会社ごとに、世界観は違います。文化も違います。

ただ、営業をしている我々側は、自社の文化に染まって物を見ている。

ここに大きなギャップの要因があります。

このギャップを抑制するために、映画監督となって、ステークホルダーの視座を様々なアングルから、物事を時系列で見て、どういうストーリーが流れるのかを想像していくことで、リスクを潰していくわけです。

その感性で想像をすると、まったく見えないシーンがたくさん出てくるんですよね。

なんてことのない想像のプロセス。
でも、映画監督の立場で、映画監督の視座で、冷静に想像をする。
それが差を生みます。

■映画化するための材料


皆さん、Netflix,Amazon,Huluなど、映画は山ほど見ている時代。
お客様の検討状況を映画のように想像して、考えることは、大量の映画鑑賞の経験があるので、映画化は実践しやすい技術だと思います。

映画化するための材料は、以下のようなイメージです。

①登場人物
②人物相関図
③登場人物の性格、背景、意向、役割etc
④背景/あらすじ(検討の背景、ゴール設定)
⑤文化/習慣/よく使われる言葉
⑥具体的テーマ/イベント(上申、プレゼン、契約etc)
⑦詳細な設定があればあるほど…

上記の材料を用意し、1シーン1シーンのイメージを行っていく。
必ず、なんらかの気づきがあります。

■映画化するためのHOW to


どうやったら、お客様の世界観をストーリー仕立てで想像できるのか。

正直、場数です。

ただ、一つだけ言えるのは、自分の目線だけで見ている人には、どうがんばっても、備えられない力です。

なので、実践するとすれば、日々自身の周りに起きている事象を多角的に見ることを日々やること

全ての事象は、平面でも立体でもなくて、球体だと思っていて、上から見たり、下から見たり、ときには中から見たり、様々な角度から見るとまるで違ったように見えてくる

この視座の作り方を鍛えることが、他にはない能力、成果を生み出すと思います。

営業で、いやビジネスマンですごいなと思う人と、この感性を共有すると、「わかるわかる」となるやつです。

■リモートワークだからこそ価値が出る


オフィスとリモートワークの併用であるのは、お客様も同様。非常に複雑な環境となっています。

だからこそ、お客様の検討自体が過去にないものとなっていて、我々が今まで見てきたものとは違うストーリーが作られているんです。

なので、映画化して想像することでリスクを削っていきたい。

・都合の良い想像で埋め合わせている部分を判定する。
・イメージが湧かない部分を丁寧に把握する。

上記二つの要素だけでも、抑えることで、大きな結果への近道となります。

■映画化の登場人物は、社内も


実は、映画化の技術は、社内プロセスを考える際にも使えます。実は商談の規模が大きくなると、提案における登場人物は、提案元の社内組織も入ってきます。

提案可能か否か、体制は?などなど。更には、社内の契約書チェックや、原価チェックなど、リスク要因もたっぷり。

このあたりも様々なストーリーが乗ってきますし、社内説得のプロセスも同様に映画化が必要だと思っています。

■応用編:映像化「させる」技術


映画化する技術は、映像化させる技術にも転用可能です。

お客様に動いてもらう際には、

・提供している価値、利用後の状態を鮮明に想像できている状態
・決裁まで持っていくプロセスをイメージしきれている状態

にお客様担当者を導いていくことができると、成果が出る可能性が高まります。そのために、私はお客様にも同様の質問をします。

「〇〇さん、今後の進め方、映像化できてますか?見えてない部分がある場合は、そこ抑えていきたいですね。」

このやりとりで、どれだけのリスクを潰せたか計り知れません。是非実践してみてください。

■終わりに


今回書いた内容は、当たり前のことかもしれません。
でも、それを丁寧に実践できている人は多くありません。
ただ、結果を出す人の多くは共通の感性を持っているように思います。

全てのポイントは

『相手の目線で、視座で状況を冷静に見る力をつける』

この力を付けることができれば、お客様との関係性をより強固なものにし、複雑な検討であったとしても、前に進める道を探すことができます。

営業で大事なのは、仕様や要件、スコープではなく、お客様をゴールに導くことであることを忘れないでいきたいですね。

営業の世界は、広く深いです。非常に人間的な要素が多く含まれる想像的、創造的仕事です。私は心の奥底から大好きです。

ツールでやるべきことと、人間がやるべきことをうまく切り分け、それぞれが持ちうる感性を活かして、より面白く、より価値ある仕事を実践できるようにしていけたらと思っています。

桐原 理有

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