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月めくり

月めくりになる、と知ったのはカンナが15歳の誕生日を迎えた日のことでした。その日の真夜中、知りました。どうやって知ったのか、といえば、どうもしていないのです。ただ、知りました。16歳になるその日に自分が次の「月めくり」になることを。

いよいよ明日私は「月めくり」となるんだ

カンナは眠れぬ夜を過ごしていました。明日がカンナの16歳の誕生日です。それまで「月めくり」を務めていたという人から、明日「月めくり」の証であるペンダントを譲り受けることになっています。と言っても、あって渡されるわけではありません。きっと明日の朝目覚めてみたら、胸にぶら下がっていることでしょう。

ところで、みなさん、月が変わるのは、ごく普通に、今日が9月30日だから、明日は10月1日となると思っていませんか?実はそんなことはないのです。「月めくり」が月をめくっているのです。ではどうやって?とお思いになるでしょうね。それはもちろん、月めくりだけが知っているのですから、ここで公にするわけにはまいりません。想像にお任せいたします。

「月めくり」になったからといって、巫女のような格好をして過ごすわけでも、滝に打たれて心を統一するわけでも、山にこもって修行、あ、それは山伏だわ、するわけでもありません。ごくごく普通に、栗まんじゅうを食べたり、学校に行ったり、友達とカフェに行ったりもするし、失恋もします。何も変わらないんです。でもたった1つだけ、必ずしなくてはならないことがあります。それは、月の終わり、翌月にめくるその10分間だけは一人で「月めくり」をしなくてはなりません。それだけがまあ、違い、というんでしょうか。まあ大したことではありませんよね。

カンナはいつまで「月めくり」をするのかはまだ知りません。その時が来たら自然と知ることになるのでしょう。今はただ、月の明かりを眺めながら、うとうとと眠りが忍び寄ってきたようです。



小牧さん、今週もありがとうございました。
「月めくり」はとっても想像力を掻き立てるお題でした。

みなさんのお話も読ませていただくのが楽しみです!

いただいたサポートは毎年娘の誕生日前後に行っている、こどもたちのための非営利機関へのドネーションの一部とさせていただく予定です。私の気持ちとあなたのやさしさをミックスしていっしょにドネーションいたします。