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子どもの日なた #シロクマ文芸部


 子どもの日なた、にはいつも数人の子どもたちが集まっている。月子つきこもその一人だ。

 誰もが「ただいま」と入り口のドアを開ける。月子もその一人だ。すると、子どもの日なたのお母さんであるそよ子さんが「おかえりなさい」と笑顔で出迎えてくれる。そうすると、はにかんだ笑顔を見せたり、にっこり顔になったり、そっぽむいたり、みんながそれぞれの嬉しさを見せる。月子はぬくぬくとあったかい気持ちが胸いっぱいになって、ちょっとだけ笑うことができる。

 子どもの日なたに来るようになったのは、月子が4年生になった頃だ。集まっているのは、2年生だったり、5年生だったり、色々だけど、みんなどこか似ている。みんな同じくらい寂しくて、同じくらいここが、そよ子さんが好きだ。みんないつまでもここにいたいけれど、みんな家に帰らなくてはならない。

 子どもの日なたにも「子どもの日」がやってきた。そよ子さんがふっくらとした白いほっぺたを、いつも以上にツヤツヤさせて「今日は柏餅を作るわよ」とみんなに告げた。

 その日集まっていた八人が、あんこを丸める係と上新粉と白玉粉を練る係に分かれた。月子は粉を練る係になった。サラサラの上新粉につぶつぶの白玉粉、そしてお砂糖を入れたら、お水を入れて、交代で混ぜた。「耳たぶくらいの固さにしてね」というそよ子さんの指示に従って、電子レンジにかけたり、こねたり、みんなで耳たぶを触りながらお餅の皮を作っていった。一人づつ、お餅にあんこを挟んだら柏の葉っぱで包んで出来上がりだ。

 少し不恰好な柏餅は、もっちりとして、あんはとろりと、何よりしみじみと優しかった。まるでそよ子さんのように。

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月子さんが大きくなってお菓子屋さんになるのはまた別のお話です。

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小牧部長、いつもありがとうございます♪
今週こそは提出できないかもしれないと腹を括っておりましたが、なんとか出すことができました。よかったです。

シロクマ文芸部のおかげで、私の想像の中の小部屋が増えました。その一つが和菓子屋「月兎耳」です。今日はその月子さんの原点のお話を書く気になりました。というより、「子どもの日」という言葉から自然と生まれてきました。そういうのがとっても嬉しくて楽しいです。

いただいたサポートは毎年娘の誕生日前後に行っている、こどもたちのための非営利機関へのドネーションの一部とさせていただく予定です。私の気持ちとあなたのやさしさをミックスしていっしょにドネーションいたします。