記事一覧
『テルマエと浮世風呂: 古代ローマと大江戸日本の比較史 (NHK出版新書 671)』本村 凌二
古代ローマ史の専門家がテンミニッツTV講義から加筆修正して出版。テルマエ展にて購入。
古代ローマと江戸を10のテーマで比較しているが、前近代の抜きん出た2つの大都市の存立要因に、永続した平和と道路、水道等の土木技術、海洋との近接性が含まれると感じる。
水道のおかげで発展したテルマエと湯屋は、文化、運動等のエンタメ機能も備えており、今のスパ銭も顔負け。
アッピア街道は2300年の使用に耐えてお
『文庫 生き物の死にざま (草思社文庫 い 5-2)』稲垣 栄洋
雑草生態学の専門家が描いた身近な生物の知られざる最期に係るベストセラー。
印象的なのは、多くの現代人のように自分自身の生き甲斐や幸せを求める姿ではなく、個体、つがい又は近縁集団が、子孫を残すことこそが生命の目的であるかのような行動を取り死にゆく姿だ。
子に身を捧ぐ母ハサミムシ、メスに食われながらも交尾をやめないオスカマキリ、メスに寄生し放精後はメスに吸収されるオスチョウチンアンコウ。
ニワト
『ウマは走る ヒトはコケる-歩く・飛ぶ・泳ぐ生物学 (中公新書 2790)』本川 達雄
ウニ等棘皮動物の研究者が、教科書編纂の経験を元に、移動に係る様々な生物のデザインを紹介した力作。
馬などの歩行・緩行・疾走時のモードの違いはエネルギー効率性の観点から説明。
熱気泡の上昇気流や高度別の速度勾配を活用して極めて効率的に滑翔するコンドルやアホウドリ。
息継ぎ頻度を気にするスイマーとしては羨ましい、口を開けて泳ぐことでエラに水を供給して呼吸できるマグロ。
ウニとヒトの移動は、倒立
【銭湯めぐり78 朝日湯@千駄木】元銭湯施設が近くにある年中無休の便利銭湯
【銭湯めぐり78 朝日湯@千駄木】
今回のコンセプトは銭湯&元銭湯。比較的銭湯が残っている東京でも、採算や後継者の課題で廃業を余儀なくされる銭湯は少なくない。中には、その特徴的な建物の外観、内装を活かしつつ、別の用途に転換した例もある。
千代田線千駄木駅近くの #朝日湯 は年中無休で午前10時から午前1時半まで営業という営業時間の長い銭湯。谷根千エリアを巡るのは2度目。朝から3キロスイムで腹を
『一汁一菜でよいという提案 (新潮文庫)』土井 善晴
料理研究家が、普段の和食はご飯と具沢山の味噌汁で良いとして、和食文化の過去から未来まで論じた書。
縄文時代が長く続いたのは多様な食材を採取し飢饉のリスクを減らしたからだが、採取した食物を汁や鍋のようにして食べたのだろうという。
ゴリラにはなく人間にはある子供・青年期に、親に料理を作ってもらった経験が揺るぎない安心感を生むとする。
一汁一菜の提案は、手を掛けることが料理との誤解を解き、素材を活
『語りえぬものを語る (講談社学術文庫)』野矢 茂樹
講談社PR誌への連載に詳しい註を付けて、反復重層的に議論が展開された哲学書。
ウィトゲンシュタインの「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」に反駁し、論理空間にはあるが行為空間の外にあるもの(猫又は掃除機の「クリーニャー」等)は語りにくいだけだし、論理空間の外にあるが勉強すれば使えるかもしれないものは「今の」自分には語りえないだけだとする。
概念主義への反論の中で、動物・赤ん坊と違って大
『壱人両名: 江戸日本の知られざる二重身分 (NHK BOOKS) (NHKブックス 1256)』尾脇 秀和
江戸期の壱人両名(1人が2つの名前と身分を使い分ける形態)と明治期における消滅について、古文書から多くの実例を見出し解説した力作。
①両人別(二重戸籍状態)、②秘密裏の二重名義使用、③身分(町人等)と職分(医者等)による別名使用のうち、①②は非合法とされたが、いずれも縦割りの支配の管轄を保ちつつ、支配を跨ぐ活動を表向き問題なく実現するための方策だったと評価。
建前と実態のずれの黙認も知恵だった
【銭湯めぐり76 北沢湯@上北沢】住宅街の地元客に大人気のコミュニティ銭湯
【銭湯めぐり76 北沢湯@上北沢】
GW最終日は、近場でゆっくり。銭湯は結局GWで5度目。近所のジムで泳ぐが、空いているタイミングを狙い損ね、4コースはアクア(水中ダンス)のレッスンで使用。ざっと50名ほどの参加者は、見たところリタイア世代が圧倒的で、うち9割ほどは女性。こうした高齢男女の社交性の差が健康差をもたらすのかもと想像。残り2コースも、客層はほぼ同様の状況で、振替休日でも月曜の午前であ
『ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)』ポール・ピアソン
合理的選択論による脱文脈化の最盛期に、政治分析における歴史の重要性について改めて真摯に論じた新しい古典。
英国留学以来、定性的分析に強いシンパシーを感じる者には違和感が少ないが、実務家の眼からも興味深い論点がいくつか。
自己強化過程が働く状況において、事象の起きるタイミングと配列の重要性が説かれ、前に起きた事象がより重要とする。
また、制度修正コストは、特定の環境や用途に限定される資源への投
【銭湯めぐり75 天神湯@中野】由緒正しく昭和風でリニューアルされたオアシス銭湯
【銭湯めぐり75 天神湯@中野】
GW後半戦は、東京でゆっくりスイム三昧のつもり。3日は近所のジムが2軒とも休みのため、久々に千駄ヶ谷の東京体育館へ。その前に、体育館そばにモーニングが食べられるお洒落カフェを発見したので、8時前に到着すると、開店前でも10名ほどの列が。
#goodmorningcafenowadays という長い名前の店だが、朝昼夜と分けて、メニューも異なる営業形態のよう。朝
『ヒストリカル・ブランディング 脱コモディティ化の地域ブランド論 (角川新書)』久保 健治
歴史研究者から観光系の経営学者兼コンサルタントに転身した筆者が、自ら関わった実例を中心に歴史を活用したブランディングの概念構築と実践のあり方を論じた本。
コモディティ化しないように、稀少性や模倣困難性を強調するとともに、史料調査の重要性も説く。
限界としては、挙げられた個別事例がどの程度定量的に他地域の事例より優れていて、その理由は何なのかといった点の分析が弱いのと、自らの事業紹介のようにも見
『ゴリラの森、言葉の海 (新潮文庫)』山極 寿一、小川 洋子
霊長類学者と小説家がゴリラと言葉の森を逍遥する対談集。
類人猿がいかに人に近くサルと違うかに目から鱗。
声を出して笑える、威嚇ではない形で顔を見つめ合える、勝者を作らない仲裁をする、対等性を大事にする。そんな違いは動物園では分からない。
類人猿も人も経験を積むことで親になるが、その経験が性的な関心を抑制し、そこから生じたインセスト・タブーが互酬性、更には複数の家族による地域共同体の形成の元と
【銭湯めぐり74 駒の湯@仙台市】地元の老壮年に愛されるサウナ付きビル銭湯
【銭湯めぐり74 駒の湯@仙台市】
GWは東京圏外の銭湯巡りが続く。今日は年休を取って、JR東日本がやっている「どこかにビューーン」という行き先はガチャで決まるポイント消化プログラムで遊んでみる( #どこビュン仙台駅 )。
行き先はJR東管内の新幹線4駅のうちの1駅。今回は仙台駅に決定!正直、JR東管内でどこでも往復で6000ポイントだけで良いのなら、「人生=博打」マンには僥倖以外の何ものでも
『言語が消滅する前に (幻冬舎新書)』國分 功一郎、千葉雅也
2017〜2021年にかけて5度に亘る2人の第一線哲学者の対話を収録。
シリーズものではないが、言語の力の衰退が通底認識。
重要な問いとして受け止めた議論としては、崩壊しつつある「権威主義なき権威」をどう再生させるかと、エビデンス主義や法務的発想は民主主義的側面もあるが責任回避が過剰であり、重層的時間の中での正義を目指すべきというもの。
「中動態の世界」と「勉強の哲学」という各々の著書の紹介