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父の闘魂

父は子供の僕を、よくプロレスに連れて行ってくれた。

1984年8月2日。
蔵前国技館の二階席から父と新日本プロレスを観戦。

【A.猪木VS長州力】

僕はこの試合がどんな意味を持つのか知らなかったし、今も知らない。


とうとうA.猪木が負けるんじゃないのか?
長州のパワフルなサソリ固めにギブアップしてしまったら…
躍動感あふれるリキ・ラリアットを受けてしまったら…

父が言った。
「猪木が勝つから心配するな」

歓声と地鳴りが止まない試合。
二階席から見た猪木さんの延髄斬りは、宙に浮いていた。

帰りの赤羽線の中で、僕は父にひねくれた質問をしてしまった。
「A.猪木が勝つことになってたの?」

父は答えた。
「まったくコイツは…。長州は強いだろ?猪木はそういう時に勝つんだよ」


UWFの後、プロレス観戦から離れてしまった僕には、プロレスを論じることは出来ない。

しかし闘魂については、父の言葉ほど頼もしいものはなかった。


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